ハノーファーのVIPルームでは“合コン”が!? スタジアムで稼ぐブンデスリーガの秘密

「日本のスタジアムにおけるVIPルームは、VIPクラスをもてなすには貧弱だ」

 きっかけは昨年末、ある上場企業の社長を補佐する人物から聞いた話だった。内容を要約すると、以下のようなものだ。

「日本のスタジアムにおけるVIPルームは、全部ではないが概して貧弱だ。少なくとも、上場企業の社長を連れて行くのにふさわしい場所は限られている。彼らはVVIPクラスの人物。六本木の会員制バーで高価な酒を日常的に空け、アッパークラス同士で交流している人々だ。貧弱なVIPルームに連れて行くと、あとで私が叱られるんだ。

 もちろん、今ある全てのスタジアムにおけるVIPルームを、すぐにVVIP、VIPをもてなすのに十分な形で整備することなど現実的ではないのは分かっている。ただ実際問題、彼らをそういう場に呼ぶことは難しい。決定権を持っているVVIP、VIPをしっかりとふさわしい待遇で迎えられないのは、大口スポンサーを獲得する上でネックになるのではないか」

 筆者は関係者席に入る場合、プレスパスで入ることが多く、VIPエリアに入った経験は少ない。その限りでいうと、「VIPエリアは快適だな、しっかりしているな」と思っていた。しかし彼らにしてみれば「後で叱られる」レベルなのだという。筆者の感覚はあくまで外側から見ているものであって、当たり前であるが、上場企業トップの観点ではなかったということなのだろう。

 先般承知の通り、Jリーグにおけるスタジアム運営には大きな制約がある。例えば、スタジアムを保有しているJクラブは少ない(例外はジュビロ磐田、柏レイソル)。鹿島アントラーズのように指定管理者として認められ、さまざまな形で収益化のめどを立てているクラブもある。また市立吹田サッカースタジアムを建設し同市に寄贈したガンバ大阪も、同スタジアムの指定管理者だ。が、全体からするとまだまだ例外である。

 一方で、スタジアム所有には維持管理費に年間数億円、固定資産税も含めるとその負担は膨大になる。ブンデスリーガが隆盛を極めるドイツでも、クラブが所有するケースと自治体が所有するケースとあり、自治体所有のクラブでも大きな収益を挙げている。つまるところ、この差はドイツと日本におけるサッカーの位置の差ということになるだろう。

 よって、この話は「Jクラブがスタジアムを持ったなら?」というある種の夢物語としてお読みいただきたい。

 とりわけ多くのクラブがスタジアムを所有し、隆盛を極めるドイツ・ブンデスリーガのVIPエリアの内部はどのように活用されているのだろうか? 『ラガルデールスポーツ』吉池淳氏の協力をいただき、ハノーファー96が所有する『HDIアレーナ』VIPルームに入らせていただいた。(取材日:2016年3月1日)

 

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