23歳日本代表「自分が勝たせたい」 CLで見せたコントロール能力…名門にもたらす“フットボール”

CLライプツィヒ戦にフル出場した佐野航大
「マウロ(・ジュニオール)が安定感を支える一方で、佐野はPSVに《フットボール》をもたらしている」
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UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のRBライプツィヒ戦後、オランダの大手サッカー専門メディア「VoetbalPrimeur」はPSVの日本代表MF佐野航大について、そんな興味深い表現を用いた。
ゴールを決めたわけではない。アシストを記録したわけでもない。佐野自身が試合後に振り返ったように、この日のシュート数はゼロだった。では、ここで言う「《フットボール》をもたらす」とは何を意味するのだろうか。
0-1で惜敗となったライプツィヒ戦での佐野のプレーを90分間追っていると、その言葉の意味が少しずつ見えてくる。
「今日は6番(ボランチ)というより8番(インサイドハーフ)っぽかった」と本人が語るように、ボランチよりは少し前目でプレーすることになった佐野は、序盤からボールに絡めたわけではない。立ち上がり、ホームのライプツィヒはハイプレスで一気に主導権を握ろうとする。PSVはビルドアップからかいくぐろうとするが、なかなかボールを運べない。
それでも徐々に相手のプレッシャーが弱まってくると、佐野は最終ラインからボールを引き出し、左右へ展開しながらPSVのリズムを整えていく場面が増えてくる。
佐野自身は、この日の役割をこう捉えていた。
「相手のプレッシャーもあまり来ず、自分たちが思ったよりもボールを持てていたので、ゲームをコントロールすることと、やっぱり起点となるようなパスをどんどん出していくというところはやらないといけないなと思います」
フットボールは相手との駆け引きのなかで行われるチームスポーツだ。相手の意図を持った取り組みに対処して、改善策を見出し、自分たちが優位になるように試合を進める。そんなゲームコントロール能力の高さを、この日の佐野のプレーはよく表していた。
いつ、どのような状況で、攻守にどんなプレーを選択するかの判断が優れている。
ボールを落ち着けるべき時、素早く前線にパスを入れるべき時、ダイナミックにサイドを変えるべき時、すぐにプレスに行くとき、素早く帰陣すべき時、スペースを埋めるべき時、相手に当たるべき時。
相手のパスを読んでインターセプトすると、ボールを止めることなくダイレクトで前線へパス。複数の相手に囲まれても慌てない。相手の逆を取るボールコントロールとスムーズな動作で、次の選手へとボールを届ける。相手がサイドに絞ってプレスをかけてきたら、素早く逆サイドに展開する。サイドへ流れ、味方とのコンビネーションからボールを前へ運んでチャンスを作るシーンも。
58分、敵陣で味方がパスを失った瞬間、すぐさま佐野が奪い返してPSVの攻撃を継続させたのは、とても価値のあるプレーだった。ライプツィヒの選手がギアを上げて縦へ出てきた時には、そのスピードに遅れずポジションを取り直す。戻りながら中央の危険なスペースをケアし、同時にサイドや最終ラインの背後へのパスにも牽制をかける。簡単に相手にシュートを許さず、何度も身体を投げ出してブロック。
佐野がいることで周囲の選手が動きやすくなり、チームとしての循環が途切れない。佐野がボールを持つとリズムが生まれる。そんな大事な存在だからこそ、この日もフル出場なのだろう。
佐野は手応えとともに次のように振り返った。
「チームとしていい攻撃ができているのであれば、それは次の攻撃につながると思う。そこで自分がボールをもらえればシュートを打ってもいいし、チームとして考えた時には、自分が打とうが、チームの誰かが打とうが、いい攻撃をして決めていれば関係ない」
そして「自分が決めて勝たせたいという気持ちもあります」と言って笑ったのは、もっとやれるという自信の表れでもあるのだろう。
試合後のミックスゾーンでは、「VoetbalPrimeur」のインタビューに流暢な英語で対応。地元メディアとの関係の良好さを表している。
「もっといい結果に値する試合をしていたと思います。いいプレーができていただけに、ここで勝ち点3を逃したのは本当に悔しいです。いつも通り、自分たちのサッカーをしました。本当にいつも通りです。高い位置からプレスをかけて、いいフットボールをする。ただ、どうしてもゴールを決めることができませんでした」
いいフットボールをするために佐野がいる。ゴールを取れなかったという課題はあるものの、次につながっているパフォーマンスを見せているのは間違いない。
そして、この挑戦の舞台は欧州最高峰のCLだ。
「チャンピオンズリーグはやっぱり普通のコンペティションとは違う。相手もそういった気持ちで来るので、メンタル的にも準備しないといけないです。でもチャンピオンズリーグはすごい舞台ではありますけど、気負いすぎず、いつも通りにプレーをすれば、どんどんリズムに乗れるというのは自分の中で確信があるので。この舞台で戦える誇りだったり、喜びというのは感じつつ、でもいつもやっていることをしっかりとこなす、ハードワークするというところを意識しました」
とはいえ、CLへの高揚感がないわけではない。試合後、CLアンセムを聴いた時の気持ちを尋ねると、佐野は笑顔を見せながら答えた。
「やっぱりこの気持ちは多分何回聴いても変わらないと思うし、高揚感だったり、雰囲気だったり、緊張感というのは、やっぱりほかのゲームでは味わえないので。もっと勝ちたいです」
思いはPSVにフットボールをもたらす存在から、勝利をもたらす存在へ。焦りはない。佐野航大は欧州最高峰の舞台でさまざまな貴重な経験を積み重ねながら、着実に成長と向き合っている。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。























