塩貝健人は「思考力は高い」 ピッチ内外で注目も…“ライバル”から見た現在地「冷静に判断している」

上田綺世のパスから代表初ゴールを決めた
劇的な日本代表初ゴールを決めてウルグアイ代表撃破の立役者となったFW塩貝健人(ヴォルフスブルク)が、チームの絶対的なエース・上田綺世(リール)へ「ライバルだと思っている」と挑戦状を叩きつけた。ワールドカップ北中米大会で対戦前のブラジル代表を激怒させた件など、ピッチ外で注目を集めてきた21歳のホープへ、代表およびヨーロッパの舞台を生き抜いてきた28歳の上田はどのような思いを抱いているのか。(取材・文=藤江直人)
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初めて日本代表に招集されてから半年あまりの21歳に、メディアを介して挑戦状を叩きつけられた。
後半アディショナルタイムの2発で南米の古豪ウルグアイ代表を突き放し、第3次森保ジャパンの初陣を3-1で飾った余韻が残るキューアンドエースタジアムみやぎ内の取材エリア。代表戦出場4試合目にして待望の初ゴールとなる勝ち越し弾を決めた塩貝健人が、直後にダメ押し弾を決めた上田綺世の名前を突然あげた。
「僕はこの1点で満足する場所を目指しているわけではないので。ライバル…僕はライバルだと思っている上田選手が、直後にゴールを決めても涼しい表情をしていた。その意味でも喜んでいる場合じゃない、と」
28歳の上田はウルグアイ戦が出場44試合目で、ゴール数も19に伸ばした。そのなかには先の北中米W杯グループステージ第2戦のチュニジア戦で決めた2つのゴールも含まれている。
北中米大会にサプライズ招集されていた塩貝も、オランダ代表との初戦の残り6分で上田に代わって途中出場。しかし、これが大会を通じて最初で最後のプレーとなった塩貝は大きなインパクトを残せなかった。
所属するヴォルフスブルクが今シーズンから戦うブンデスリーガ2部で塩貝も無得点が続く。対照的に今夏にフェイエノールトからフランス1部のリールへステップアップした上田はすでにゴールも決めている。
それでもギラギラする思いをぶつけられた上田は、心を燃えたぎらせる塩貝に理解を示している。
「日本人選手は僕も含めてそんなに表に出すタイプじゃないし、もしかしたらそれがいいとされている文化なのかもしれない。でも、海外に行ったらそれほど目立つほどでもないし、逆に海外の若手選手だったら当たり前のようにギラギラしている選手もいる。それが日本ではあのように、よくも悪くも目立ってしまいますけど」
悪い意味で目立ってしまったのが、ブラジル代表とのラウンド32前に起こった騒動だった。
日本メディアの取材に対して、塩貝は「彼はもう昔のネイマールではない」や「(ブラジルは)昔はすごく強かったけど、いまはどうなんですかね」などとコメント。これがポルトガル語に訳されてブラジルのメディアなどで瞬く間に、なおかつ大々的に報じられた結果として代表選手たちやブラジル国民を激怒させた。
たとえば、FWマテウス・クーニャ(マンチェスター・ユナイテッド)は、後半アディショナルタイムに決まった劇的なゴールで日本に勝利したラウンド32の直後に右手を広げて、塩貝に「小僧、敬意を払え!」と罵声を浴びせたと報じられた。右手の5本の指はワールドカップで歴代最多の5度の優勝を指していた。
日本のベスト32敗退を招いた余計なひと言だと受け止められたのか。ブラジルだけでなく、母国・日本のファンからもSNSでネガティブな言葉を受け取っていた塩貝は、自らに非はないと言い聞かせてきた。
ウルグアイ戦後には応援してくれるファンに感謝しながらも、こんな言葉を残している。
「僕のスタイル的に結果が出ないと批判が多くなるのはわかりますけど、それはトップトップに行く上で付き物だと思うし、僕自身はこのスタイルを変えるつもりはない。自分の思いを言い続けたいと思ってきた」
この一件に関しても、上田は「彼は彼なりに考えて振る舞っていると思う」とこう続けている。
「サッカーに対しては本当にピュアで、自分が成長するためにあらゆるものを吸収しようとしているのは何となく僕も感じている。本人は1トップをやりたいとか、いろいろな考えをもっていますけど、あのように結果を残したのは彼にとっても大きな自信になったはずだし、今後さらに伸びていくきっかけになるんじゃないかな、と」
塩貝が待ち焦がれてきた代表初ゴールを、絶妙のスルーパスでアシストしたのも上田だった。
ウルグアイのロングボールを最終ラインの鈴木淳之介(コペンハーゲン)が力強くはね返し、伊東純也(ゲンク)が右サイドから中央へシフトしながら巧みに胸でトラップ。中村敬斗(リヨン)に代わって後半38分から途中出場し、左シャドーに入っていた塩貝の足元へグラウンダーのパスがピタリと入った直後だった。
塩貝は右足をワンタッチさせて、近くにいた上田へボールを落とす。そして自らは前方のスペースへスプリントして上田からのリターンを呼び込み、ペナルティーエリア内で左足を軽くタッチ。ボールを落ち着かせてから間髪入れずに右足を振り抜き、相手キーパーの股間を射抜くシュートをゴール右隅へと流し込んだ。
「(塩貝)健人がパスを出して、すぐに動き直しているのが見えていた。コースも空いていたので自分がシュートを打とうかな、とも思ったけど、逆に自分の動作を相手も察知してシュートコースに滑り込んできた。健人との間でうまく2対1の状況を作れたと思うし、健人自身もすごく出しやすい動き方をしていた。直前には健人が自分からドリブル突破を仕掛けて、がむしゃらにプレーしていた。そこは考えながら冷
静に判断できていると思う」
相手ゴール前であまりにも強引に仕掛けすぎて、2度にわたってボールをロストした場面に関しては、試合後に名波浩、長谷部誠両コーチから意図を問われたという。塩貝本人も反省の言葉を残している。
「周囲を使わなかったというよりも、ボールウォッチャーになりすぎて周囲を使えなかった、という表現が正しいと僕自身は思っている。試合に出場し続けていくためには、ああいうところを改善していかなきゃいけない」
今後どころか試合中に即座に思考回路を修正。ボールを託された瞬間に上田がちょっと驚いたような仕草を見せたのだから、ウルグアイの選手たちが意表を突かれたのは言うまでもない。そしてゴールを決めた直後には笑顔を弾けさせる代わりに、まさに「黙れ」と言わんばかりに右手人差し指を伸ばして口元にあてた。
「僕が2部でプレーしているとか、今回の代表選出に関してとか、いろいろとあったワールドカップに対してとか僕自身にいろいろなメッセージがすごく届いた。僕自身も悔しい思いで日々を過ごしていたので、そのなかで僕のあの1点で黙らせる…黙らせるというわけじゃないですけど、そんな感じの意味がありました」
さまざまな意味で注目を集めたゴールパフォーマンスの意味を強気なコメントを介して説明した塩貝。ヨーロッパの地でステップアップしてきた上田は「彼がどのような心境でワールドカップを終えたのかはわからないけど」と前置きしたうえで、身長182cmの自身よりも小さな180cmで挑戦している後輩へエールを送っている。
「身体能力はあっても、そこまで身長が高くないのにヨーロッパでプレーできているのは思考力があってこそだと思う。がむしゃらな振る舞いからそうは見えないかもしれないけど、いろいろと考えながらサッカーをしているのが伝わってくるし、アスリートとしての思考力はものすごく高い選手だと僕は勝手に思っています」
上田が代表初ゴールを決めたのはデビューから4年あまりの時間がたった2023年6月。通算15試合目となるエルサルバドル戦だった。代表で、そしてヨーロッパの舞台で生き抜いていくために。ゴールの価値だけでなくメンタル面でも共鳴したストライカー同士の絆が、4年後のワールドカップを目指す日本の新たな武器となっていく。
(藤江直人 / Naoto Fujie)

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。


















