宿敵・韓国代表は「そんな甘くない」 欧州で痛感した現実…若き日本代表の覚悟「まずは結果」

アジア競技大会に挑むメンバーに選出された市原吏音【写真:徳原隆元】
アジア競技大会に挑むメンバーに選出された市原吏音【写真:徳原隆元】

アジア競技大会メンバーに選出されている市原吏音

 日本開催となるアジア競技大会は、勝って当然、優勝以外は失敗という空気を纏う。そんな重圧のかかる大会に、海外組として招集されたのが市原吏音だ。欧州で培った経験を還元すること、そして高い基準を持って試合に挑む姿勢を見せること。それが招集の理由であり、期待でもある。海外組として初めて代表に合流する市原にとって、これほど条件の揃った大会は他にない。(取材・文=林遼平/全4回の4回目)

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 オランダでの日々を経て、海外組として初めて臨むのが今回のアジア競技大会だ。これは市原にとって初めての経験になる。まず口にしたのは、自分が持ち帰るべき役割についてだった。

「海外でやっている基準、強度や考え方もそうですけど、守り方も含めて絶対に海外が正しいというわけでもないので、そこはすり合わせていかなければいけないなとは思っています。そこはしっかり、いま日本でプレーしている同世代の選手たちにも共有しなければいけないと思いますし、海外からこうやって日本での活動に呼んでもらっているので、やはり結果やプレーで証明するというのも自分の役割の一つかなと思います」

 大会は9月16日に開幕した、ほとんどの海外組の合流は第3戦のU-23タイ代表戦の直前になる予定だったが、市原は第2戦のキルギス戦前に合流し途中出場を果たした。難しいコンディション調整が待ち受けるのは間違いないなかで、所属チームでの公式戦とは異なるリズムで、限られた時間の中でチームに溶け込まなければならないからだ。

 それでも不安の色は薄い。これまで世代別代表でともにプレーしてきたチームメイトが多く、指揮を執る大岩剛監督とはU-23アジアカップ制覇をともにした間柄。「やったことがある選手がほとんどですし、監督も(大岩)剛さんで、共にアジアカップも取っているので、そこは自分次第かなと思います」と言い切っている。

 大岩監督は次期A代表監督に就任することもすでに決まっている。ただ、そこに関しては、市原自身の心境に変化は生じていないという。理由はシンプルだ。監督が誰であれ、結果を残した選手が使われるという原則をAZでの日々を通じて痛感しているからだ。

「やはりいい選手は使われる。それを今回肌で感じているので。やはりAZでもどこの国の選手であれ、関係性とか以上に結果を残したら使われる。そこはどんな監督に限らずプレーで証明すればいいと思います」

 今年の1月に開催されたAFC U23アジアカップ2026ではキャプテンとしてチームを牽引し、若き日本代表を優勝に導いた市原だが、これまで数多くのアジアのチームと対戦してきたからこそ、対アジアの難しさは人一倍理解している。見ている側に「優勝以外は失敗」という空気があることもよくわかっているが、これまでの歴史を振り返ってもアジアでの戦いはそう甘くはないと断言する。

「僕も以前、A代表に対してアジアで優勝しなければダメでしょみたいな思いを持ちながら見ていた。だから、その気持ちはすごくわかるんですけど、そんな甘くないよというのは伝えたいです。自分自身もそれを感じています。舐めてかかったらやられてしまうし、受けて立ったらいかれてしまうというのがサッカーなので」

 その甘くない現実を体現するのが、大会を連覇中の韓国だ。決勝トーナメントで対戦する可能性もある相手を前に、市原はあえて挑戦者の立場に自分を置く。

「いい意味でチャレンジャーのような気持ちで臨めるんじゃないかなと僕は思っています。優勝したいとみんなで口を揃えて言ってますし、個人的にも韓国にはあまり負けたくないです」

 大会連覇中の韓国は金メダルを獲得すれば兵役免除となるため、選手のモチベーションが極めて高い。これは自分たちにはないものであり、単純に比較できるものではないと前置きした上で、市原はそれでも臆する理由にはならないと言い切った。

「持っているものが違いすぎるというか、国も違うのでどれぐらいの気持ちで戦ってくるのかはわからない。ただ、自分らも背負っているものがあるし、相手の気持ちに負けていいような大会ではない。それ以上のパワーとエネルギーを注いでいかなければいけない大会になると思います」

 何より今大会は、海外に出て以来、市原自身が初めて経験する日本開催の国際大会でもある。試合の一つひとつを、日頃なかなか現地で見ることのできない友人や家族が見届けることになる。そこで不甲斐ないプレーを見せることはできない。

「(日本でプレーできるのは)嬉しいです。嬉し過ぎるし、なかなか自分自身の経験上、日本で国際大会をやるという経験がないので楽しみでしかないです。きっと友達や家族とかも見に来てくれると思うので、普段海外でやっているからこそ、こういう機会にプレーで恩返ししたいなと思います」

 すでに大会が進む中、途中合流でチームに加わる市原にとっては決して長くはない準備期間となる。それでも言葉に迷いはなかった。

「もう、まずは結果、優勝するというのはみんな思っていると思いますけど、改めてここで言わせてほしいと思います。僕個人としても、これからの人生、サッカー人生でA代表に入っていくだったり、よりステップアップする上で自分の価値を証明できるいい機会だと思うので、100%全力を出し切って優勝に貢献できればいいなと思ってます」

 海外組として初めて袖を通す代表ユニフォーム。その舞台が、生まれ育った日本であることに、市原はどこか運命めいたものを感じているのかもしれない。重圧を背負う大会に呼ばれた男は、この舞台でどんな景色を見せるのか。決勝トーナメントを見据える日本代表にとって、市原の一戦一戦が大きな意味を持つことになる。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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