2年生で感じる名門の重み「負けていい試合はない」 U-17代表に初招集…芽生えた野心「自分の価値を高めたい」

市立船橋高2年・秋元大樹「どっちもできる選手にならないと相手から怖い選手になれない」
9月5日に夏の中断期間を経て再開したプレミアリーグとプリンスリーグ。1年を通じた戦いもいよいよ後期へ突入し、夏を経て成長した選手たちが凌ぎを削っている。ここではリーグ戦で躍動を見せる選手たちをピックアップしていきたい。今回はプリンスリーグ関東1部・第11節の市立船橋vsヴァンフォーレ甲府U-18の一戦から。0-1からの逆転勝利を飾り、首位に躍り出た市船において、攻撃の急先鋒となったのは鋭いドリブルと抜け出しを繰り返した注目の2年生アタッカーだった。
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ボールを持った瞬間、一気にギアが上がる。鋭い一歩目から相手との間合いを詰め、スピードに乗ったドリブルで縦へ、中へと自在に切り込んでいく。ボールを持っていない時も、最終ラインの背後を狙って何度もスプリントを繰り返す。
MF秋元大樹。市船の攻撃にアクセントを加える快足アタッカーが、今、大きなチャンスをつかもうとしている。9月17日から21日にかけて新潟県で行われる『第28回国際ユースサッカーin新潟』に臨むU-17日本代表に初選出された。
「これまで一度も代表に入ったことがないので、正直緊張はしますが、やっぱりU-17ワールドカップ(今年11月、カタール)もあるので、そこに入れるようにスピード、突破力をアピールしたいと思っています」
自分の人生を変える重要な舞台に挑む直前の甲府U-18戦で見せたプレーは、まさに秋元の“現在地”を示すものだった。前半はお互いが状況を牽制し合うローテンポな試合展開となったが、その中で秋元がボールを持つと、一気にテンポが変わった。瞬間的な加速に加え、相手の状況を見ながら縦、横、斜めへとボールを運び、スプリントを繰り返して攻撃を活性化させた。
後半に入るとさらにギアを上げた。何度も背後へ飛び出して相手の最終ラインを下げたり、逆に抜け出すフリをしてライン間に落ちてボールを呼び込み、鋭いターンからそのままドリブルで運び出したりと、相手DFを縦横に揺さぶった。
途中で退いたものの、チームのベクトルを前に向けたことで、最後まで勢いを持って攻め切る流れを醸成。後半45分に逆転弾が生まれて、2-1の勝利を手にした。
「前半は探り探りのゲームになっていた。だからこそ、後半はもっと積極的にスピードを生かして仕掛けようと思いました。チャンスを作る意識は常に持っていましたし、その積極性も自分の持ち味だと思っています」
秋元の最大の武器は、やはりスピードだ。栃木県那須塩原市出身。ヴェルフェ矢板U-12からJFAアカデミー福島U-15へ進み、中学時代は主に左サイドハーフとしてプレーした。高校進学時には川崎フロンターレU-18入りを目指すも、セレクションに不合格となり、その道は叶わなかった。だが、複数の強豪校からオファーが届き、その中で中学2年生の段階から声をかけてくれていた市船を選んだ。
「市船の良さは何事も全力でやるし、守備の強度も高い。ここでやれば成長できると思いました」
その言葉通り、秋元は市船で着々と成長を遂げている。入学後、筋力トレーニングや食事への意識を高め、身体を整えた。1年時に県リーグで実戦を重ねる中で、改めて自らのスピードが大きな武器になることにも気づいた。
「これまではスピードがある方だと思っていたのですが、どちらかというとテクニックを重視していて、技術で抜こうとしていました。でも、市船に来てフィジカルを鍛えて、シンプルな突破や裏抜けで先にボールを触る意識を持ってプレーするようになってから、『自分の最大の長所はスピードだ』とはっきりと認識できるようになりました」
おぼろげだった長所が明確になったことで、昨年はそれを徹底して磨き、今年はさらに応用してプレーの幅を広げるフェーズに入った。
前期は3年生FW佐々木瑛汰の負傷離脱もあり、4-4-2の2トップを務めた。後期からチームが3-4-2-1へシステムを変更すると、左インサイドハーフでプレーするようになった。ライン間でボールを受けて前を向き、FWと関係を作りながらゴール前へ飛び出す。これまでサイドで磨いてきた縦への突破とは異なる能力が求められるポジションだ。
「ずっとサイドだったら、ライン間で受けるプレーも磨けなかった。どっちもできる選手にならないと相手から怖い選手になれない。プレーの可能性を広げることで、自分の価値を高めたいと思っています」
そして、2年生になってもう1つ、市船のユニフォームの重みを感じるようになったことで、責任感も増した。
「市船として負けていい試合はない。市船は絶対に勝たないといけないし、何事にも全力でやらないといけないチームだと思っています」
そこに年代別日本代表としての誇りと、新たなターゲットが加わった。成長の足を止めている暇はない。名門に現れた快足の2年生は、コツコツと磨き続けてきた最大の武器を携え、大きな野心を持って初めての代表活動へと飛び込んでいく。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。





















