新設U-21リーグの意義は「練習試合とは違うプレッシャー」 ポストユース育成へ…求めるのは「本当の勝負強さ」

磐田は「トップを支える場所」としても活用
2026-27シーズンから、新たな育成の舞台となる「U-21 Jリーグ」が始まった。通常のJリーグが行われる週末と並行して開幕節が行われ、EAST6チーム、WEST5チームの計11チームが新たなリーグ戦をスタートさせた。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
最大の目的は、高校年代を終えてからトップチームで十分な出場機会を得るまでの「ポストユース」と呼ばれる世代に、練習試合ではない真剣勝負の場を継続的に提供することにある。
その開幕節、ヤマハスタジアムで行われたEASTのU-21ジュビロ磐田対U-21川崎フロンターレを取材した。
試合は磐田が開始3分、相手のハンドで得たPKを石塚蓮歩(18歳)が決めて先制。しかし41分に木下勝正(18歳)に追いつかれると、後半は廣瀬寧生(18歳)に2ゴールを許して1-3となった。磐田も85分、再び得たPKを佐藤大樹(27歳)が決めて1点差に迫ったものの、2-3でタイムアップを迎えた。
実際にピッチ上の選手たちを見て、両チームの指揮官に大会の位置づけを聞いてみると、この新しいリーグの興味深い特徴が見えてきた。
その一つが、両チームのメンバー構成の違いだ。磐田は先発11人のうちオーバーエイジ(OA)が7人。そのうち西久保駿介(23歳)がU-24OAに該当した。一方の川崎はOAが松長根悠仁(21歳)と山市秀翔(22歳)の2人で、いずれもU-24OAだった。
JリーグからはOA3人+U-24のOA4人までという推奨基準は設けられているが、同じU-21リーグを戦っていても、どの年代の選手を、どんな目的で起用するかはクラブによって異なる。そして、このメンバー構成はシーズンを通じて固定されるものでもない。
そこには各クラブの育成方針だけでなく、トップチームやU-18の状況、選手個々のコンディション、さらにルヴァンカップや天皇杯、U-18のプレミアリーグやプリンスリーグの日程まで絡んでくる。
磐田の安間貴義監督と川崎の長橋康弘監督の言葉を手掛かりに、始まったばかりのU-21リーグがどのような役割を担い、クラブ全体にどんな循環を生み出していくのかを考えてみたい。
トップ、U-21、U-18を連動させる流動的なチーム編成
今回の磐田は「U-21」という大会名からイメージされるよりも平均年齢の高いメンバー構成だった。
渡邉りょう(29歳)のようにトップカテゴリーで実績と経験を持ちながら、キャンプで出遅れて復調途上にある選手もいれば、加藤大育(27歳)のように現在のコンディションは良好だが、競争の中でここまでJリーグの出場機会を得られていない選手もいる。
もちろん、ポストユース世代も重要な位置を占める。左サイドバックの増田大空(18歳)などにとっては、トップチームにつながる公式戦の舞台で経験を積めること自体に大きな意味がある。
安間監督の話から伝わってきたのは、U-21を独立した一つのチームとして考えるのではなく、トップチーム、U-21、U-18をつなげながらクラブ全体を強化していこうという発想だった。
特に今季の磐田では、秋葉忠宏監督がトップチームで目指している攻撃や守備の考え方をU-21でも共有していくことが重要になる。
安間監督もトップチームの目指す攻撃を整理しながら選手たちに求めていることを説明し、このU-21がトップチームを支える役割も持つシーズンであることを語っていた。
単に90分間プレーさせればいいわけではない。トップで求められるものをU-21でも経験し、その中で自分の特徴を発揮する。そこで評価を高めた選手がトップへ入っていくことが理想になる。
同時に、U-18から参加する選手たちにとっては、一つ上のカテゴリーを経験する場所にもなる。実際に川崎戦でも、終盤には磐田U-18の選手たちがピッチに立った。トップで実績のある選手、ポストユース世代、そして高校年代の選手が同じ公式戦を戦う。この縦のつながりは、U-21リーグの大きな特徴になりそうだ。
一方の川崎は、磐田とは異なるメンバー構成だった。OAは松長根と山市の2人だけで、ともにU-24。由井航太(21歳)をはじめ、トップチームで活動しながらJリーグで十分な出場機会を得られていない若手や、さらに下の年代の選手を組み合わせた。
長橋監督が強調していたのも、このリーグで公式戦経験を積ませ、それをトップチームにつなげていくという考え方だった。
トップチームのトレーニングに参加しているだけでは得られないものがある。相手がいて、観客がいて、勝敗と順位がつく。ミスをすれば失点につながり、結果として勝点を失う可能性もある。
だからこそ練習試合とは違うプレッシャーの中で、現在の自分に何ができ、何が足りないのかを知ることができる。長橋監督も、選手たちが全力で戦ったからこそ課題が見えたという趣旨の話をしていた。
ただ、今回の若いメンバー構成が川崎のU-21における固定されたスタイルになるとは限らない。長橋監督自身、この先にどういうメンバーで戦うことになるかはチーム事情による部分もあると語っている。
今回だけを見て「磐田はOA主体」「川崎は若手主体」と分類してしまうのは早い。
トップチームの負傷者や出場状況が変われば、U-21へ送り出せる選手も変わる。U-18の日程次第では高校年代の選手を使いにくい週も出てくる。
その流動性を前提に運用していく大会でもある。だからこそ興味深いのは、同じルールの中でも11クラブそれぞれの考え方が表れそうなことだ。
EASTには磐田、川崎を含む6クラブ、WESTには5クラブが参加している。もちろん、どのクラブにも共通する大きな目的はある。ポストユースと呼ばれる選手たちを中心に、練習試合ではなく、緊張感のある公式戦でプレーする機会を与えることだ。
しかし、そこから先の使い方は同じである必要はない。ポストユース世代を中心に組むこともできれば、U-18の有望株を積極的に起用することもできる。トップで出場機会を得られていない選手の実戦の場として活用することも可能だ。
そして、その割合はシーズン中にも変化していくはずだ。ルヴァンカップや天皇杯が入ればトップチームのメンバー構成が変わる。U-18のプレミアリーグやプリンスリーグがあれば、アカデミー側の事情も考えなければならない。
U-21だけを見て選手を配置することはできない。トップ、U-21、U-18という3つのカテゴリーをどう連動させるか。むしろ、そこに各クラブの育成や強化に対する考え方が見えてくるのではないか。
一方で、育成だけを目的とした大会でもない。有観客で行われ、EAST、WESTそれぞれに順位表がある以上、れっきとしたリーグ戦である。
安間監督も選手の成長だけを見ていたわけではない。ゲームである以上は勝利を求め、その中で個々の特徴をどう出していくのかを選手たちに要求していた。
ここにもU-21リーグの意味がある。もちろんトップカテゴリーとは違う思い切ったチャレンジもできるが、育成年代だからいくらミスをしても構わない、結果は関係ないという環境では、トップカテゴリーで必要になる本当の意味での勝負強さは身につきにくい。
育成と勝利は必ずしも相反するものではない。むしろ勝点3を本気で争う中で自分の特徴を出し、チームを勝たせる。その経験を積ませることが、トップにつながる育成になる。
今回の試合もそうだった。磐田が先制し、川崎が逆転。磐田も終盤に1点差まで追い上げた。最後まで結果を求めて戦ったからこそ、選手個々にも具体的な成果と課題が残ったはずだ。
過去にも繰り返されてきた「ポストユース」の課題
日本サッカーにとって、ポストユース世代の実戦機会は新しい問題ではない。高校年代までは公式戦の環境が充実していても、プロ入りした途端にトップチームの競争へ放り込まれる。そこで出場機会を得られなければ、週末に公式戦を戦えない時期が長くなる。
その問題を解消するため、過去にもサテライトリーグやU-21選抜、U-23チームのJ3参戦など、さまざまな試みが行われてきた。しかし、ポストユース世代の実戦環境として継続的に定着させることは簡単ではなかった。
今回のU-21 Jリーグも、始まったばかりだ。
ここからトップチームのカップ戦、U-18の公式戦などが重なってくれば、各クラブがメンバー編成に頭を悩ませるケースも出てくるだろう。実際に運用して初めて見えてくる課題もあるはずだ。
だからこそ重要なのは、このリーグがトップとアカデミーの間にどんな循環を作れるかではないか。U-18からU-21へ。U-21からトップへ。あるいはトップで出場機会を得られていない選手がU-21で実戦を積み、再びトップの競争へ戻っていく。
今回取材した磐田と川崎だけでも、その使い方には違いが見られた。残る9クラブにも、それぞれの事情や育成哲学があるだろう。
そしてシーズンが進めば、その形も変わっていく。勝敗や順位を追いながら「ここでプレーした選手が次にどこへ進んでいくのか」を見ることも、このリーグの楽しみ方になりそうだ。
過去にも日本サッカーが模索を続けてきたポストユース世代の育成。その新たな試みがトップやU-18にも良い循環を生み、今度こそ継続的な舞台として定着していくのか。
成功を願いながら、その歩みを継続して見ていきたい。

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。



















