描き続けた「すべてが8割以上」 鹿島ユース10番がトップ昇格…貫き通す信念「何でもできる選手に」

鹿島ユース・平島大悟「守るというより、奪うことの重要性を言われました」
鹿島アントラーズユースからまた3人、トップチームへの扉を開いた。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
8月20日、すでにトップ昇格が決まっている吉田湊海、元砂晏翔仁ウデンバに続き、平島大悟、大貫琉偉、福岡勇和の3選手のトップ昇格が発表された。その中で注目したいのが、鹿島ユースの10番を背負う平島。スピードに乗ったドリブル、鋭いアジリティを駆使して相手を剥がし、左右両サイドからゴール前へと侵入する。トップ下でもプレーでき、攻撃のアイデアも豊富なアタッカーにスポットを当てていきたい。
「僕はそんなに身体能力がある身体でもないし、湊海みたいに驚異的な決定力がある訳でもない中で、僕は何でもできるような選手になりたいと思っています」
自分のことをこう分析する平島。フィジカル頼みでも、スピード頼みでも、足元の技術頼みでもなく、トータル的にできることが多い選手になる――。『何でもできる選手』は多くの選手が口にする理想像だ。
その理想像に向かってどのような具体的なアプローチをしているのかとなると、それぞれに大きな差がある。その中で平島はかなり具体的なイメージを持って取り組んでいる選手の1人と言っていいだろう。
「僕は攻撃面だったら五角形チャートのすべてが8割以上という選手を目指しています」
現在、頭の中に描いている五角形には『決定力』、『フィジカル』、『守備』、『アイデア』、『スピード・アジリティ』という5つの項目がある。どれか1つだけが突出するのではなく、すべてを8割以上まで広げていく。
実はこの五角形チャートは、トップ昇格が現実味を帯びてから考え始めたものではない。その原型が生まれたのは、鹿島アントラーズジュニアに所属していた小学生の頃まで遡る。
「ふと『自分の武器って何だろうな』と考える時期があったんです。きっかけはお父さんやコーチから『武器を作れるようになりたいね』と言われたことでした」
それをきっかけに、「何でもできる選手になりたい」と決意。自分に必要な能力を細分化し、五角形をイメージするようになった。
最初はジャンプ力、キック力、ヘディング、左足のキックなど、攻撃に関する項目が中心だった。イメージをより具現化するために、当時トップチームで活躍していたMF土居聖真(現・モンテディオ山形)のプレーに注目した。
「スピードがあって、技術があって、アイデアがあって、決定力もある。何でもできる選手として憧れを抱くようになりました」
お手本となるプレーを頭に入れつつ、かつ自分の五角形チャートを形骸化させることなく、もっと伸ばしたいもの、苦手だと思っているものをチャートに入れ、それを広げていく。成長して課題が変われば、項目も柔軟に変えていった。
その五角形に大きな変化が生まれたのが、鹿島ジュニアユースに所属していた中学3年生の時だった。鹿島ユースのセカンドチームが参加していたIFAリーグ(茨城県リーグ1部)にも出場するようになり、そこで攻撃だけでは通用しないことを痛感。守備の項目をチャートに初めて取り入れた。
そして、当時、鹿島ユースのコーチだったクラブレジェンド・小笠原満男の言葉が、この項目を最重点ポイントに変え、より具体的なイメージを持って取り組むきっかけとなった。
「守るというより、奪うことの重要性を言われました」
たとえばサイドでの1対1。相手のボールに足を当て、タッチラインを割らせたとしても、小笠原はそれを「勝ち」とは捉えなかった。平島に求めたのは、ボールを外へ逃がす守備ではない。自ら奪い、そのまま攻撃を始める守備だった。
そこから平島は1対1で『奪い切る』ことを強く意識するようになった。サイドでの対人守備ではユースの先輩であるDF松本遥翔(現・カターレ富山)の間合いや駆け引きを観察し、その技術を吸収した。
高校に上がってからは、1対1の強さだけでなく、プレスバックや連動性などの要素も追加された。さらに武器であるスピード、アジリティ、決定力も怠ることなく磨き続け、3年間でさらなる成長を遂げた。
1年生から重要な戦力となり、2年生で10番を託されて3冠達成に貢献。今年もプレミアリーグEASTで6ゴールをマークするなど、コンスタントに結果を残し、トップ昇格を掴み取った。
小学生の頃、自分の武器が分からなかった少年が描き始めた小さな五角形。不断の努力で項目をブラッシュアップし、成長を感じるたびに項目を書き換え、広げ、また足りないものを見つけてきた。年代が上がった今、『決定力』、『フィジカル』、『守備』、『アイデア』、『スピード・アジリティ』という、より大きな括りで自分自身を捉えられるようになった。
「小さい頃からチャートに入れていた項目が、今になってどんどんつながってきている感覚があります」
点と点が結びついて、しっかりとした線になっている。
平島が口にする「何でもできる選手になりたい」という言葉は、決して漠然とした理想論ではなかった。小学生の頃から自分自身を見つめ、足りないものを探し、それを一つずつ埋めてきた時間の積み重ねから生まれる言葉であった。
もちろん、プロの世界に飛び込めば、五角形はさらに大きくしなければならない。彼自身、現在のフィジカルを自己採点で「6程度」と捉えている。「プロで活躍するなら8以上は必要」と明確に課題を認識している。
五角形はまだ完成していない。むしろ、ここからどこまで大きく、美しく広げていけるのか。その成長の軌跡こそが、「何でもできる選手」を目指す平島のプロキャリアそのものになっていく――。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。



















