今も覚えている「ジェフに入りたい」 名門17年ぶりのJ1復帰…昇格の舞台裏「どこか緩さが」

ジェフユナイテッド市原・千葉の大久保裕樹TD【写真:元川悦子】
ジェフユナイテッド市原・千葉の大久保裕樹TD【写真:元川悦子】

千葉の大久保裕樹TDが語る“ジェフ愛”

 17年ぶりのJ1復帰を果たし、新たなステージでの躍進を期するジェフユナイテッド市原・千葉。強化部門のトップとしてチームを支える大久保裕樹テクニカルディレクター(TD)のインタビューをお届けする。連載第3回となる今回は、自身とクラブとの深い縁、現役時代から抱き続けてきた“ジェフ愛”、そしてJ1での飛躍に向けた確信に迫る。

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 Jリーグを90年代を見ている世代にとって、ジェフユナイテッド市原・千葉は「名門・古河電工の系譜を次ぐビッグクラブ」。しかし、2000年代生まれ以降の世代にしてみれば、「関東にいながらにして、ずっとJ2で戦っているクラブ」という位置づけだろう。それは2025年12月の明治安田J1昇格プレーオフ2025を制した時、17歳の姫野誠も話していたこと。2010~2025年という年月はそれほど重いのだ。

 1984年生まれの大久保裕樹TDは、30年以上に及ぶジェフとの深い縁について改めてこう語る。

「僕は蘇我駅の近くにある病院で生まれたんで、ジェフというクラブは本当に『地元のチーム』という感じでした。小学2年の時に松戸に引っ越して、(市立船橋)高校はそこから通っていましたけど、それまではユナイテッドパークのあるこのエリアで育ちました。

 Jリーグを初めて見たのは小学生の時ですけど、その試合もジェフ対ヴェルディ(川崎)戦。場所は市原臨海(現ゼットエーオリプリスタジアム)じゃなくて、国立競技場でしたけど、今もよく覚えています。『ジェフに入りたい』という思いはずっと持っていましたね」

 だからこそ、現役最後の2016~17年にジェフ移籍を選んだ。2年間在籍した松本山雅FCが1年でJ2に降格した2015年末、大久保TDは契約延長のオファーがあったというが、ジェフからの誘いを断り切れなかった。

「自分は強いクラブだというイメージがありましたし、実際、2010年にJ2に落ちてからも毎年のようにプレーオフには参戦していたので、それなりに実力のあるチームだと思っていました。でもいつも惜しいところで終わっていた。何度もJ1にチャレンジしたのに、上がれずに終わっていた。それはなぜなんだろうなと正直、疑問に感じていました。

 そう思いながら10年前にジェフに来たわけですけど、フクアリ(フクダ電子アリーナ)もユナイテッドパークもあって環境は抜群だし、年俸もある程度もらえるのに、クラブとしてどこか緩さがあるように感じました。

 自分はもともとプレーがそんなに上手だったわけでもないし、泥臭く粘り強く戦うっていうことだけでプロとしてやってきた。それが大前提だと思ったんです。『仲間のために』『クラブのために』という思いがあって、そのうえにサッカーのスキルがある。そういうところを追求していくべきだという気持ちを持って、向き合いました」

17年ぶりJ1復帰の舞台裏

 ベテラン選手だった時代の偽らざる思いを吐露した大久保TD。しかし、加入1年目だった2016年は11位でフィニッシュ。2017年は6位でプレーオフ圏内に滑り込んだものの、準決勝で名古屋グランパスに敗れ、昇格はならなかった。不完全燃焼感を抱いたままユニフォームを脱ぎ、その悔しさを後輩たちに託す形になったのである。

「選手時代の自分が感じた緩さをいろんな選手がそこを突き詰めようとしてくれましたけど、特に現キャプテンの鈴木大輔が2021年に加わってから、よりしっかりと共有してくれた印象があります。

 大輔は『本気でJ1に上がりたいのか』をみんなによく問いかけていましたし、『本気で日常の自分たちと向き合わなきゃいけないんだ』とも口癖のように話していました。その姿勢が周りにどんどん伝染していって、1つの文化が築かれていったのかなと思います。

 もちろん2009年のJ1を経験している大ベテランのヨネ(米倉恒貴)の存在も大きかった。彼はもともとそういうキャラクターの人間じゃないんですけど(笑)、練習から泥臭く戦う姿勢を示し、意識的に発言もしてくれていました。昇格できた昨年は特にあの2人が中心になって大きな仕事をしてくれた。心から有難く感じています」

 自らが果たせなかった最高峰リーグ復帰という大きな出来事を現実にした今の選手たちに大いなるリスペクトを口にした大久保TD。そんな面々と一緒にジェフを復活させたいという思いは誰よりも強いはずだ。

 大久保TDがまだ若手だった頃、ジェフは名将・イビチャ・オシム監督が采配を振るい、黄金期を築いていた。当時の主力だった坂本将貴コーチ、岡本昌弘GKコーチらも現場にいるし、当時を知るスタッフも会社にいる。そうした面々と力を合わせつつ、姫野のような若い世代のエネルギーや活力も生かして最大パワーを発揮していけば、J1トップレベルに浮上することも夢ではないはずだ。

「今のジェフの選手たちはすごく野心的で、『本気でタイトルを目指すんだ』と口にする選手も多い。彼らに対して大輔やヨネを筆頭に、30代の田口(泰士)、(呉屋)大翔、(日高)大なんかも『それにふさわしい日常を過ごそうよ』と働きかけてくれています。

 17年という年月は長いですから、J1基準への慣れが足りないのは紛れもない事実。百年構想リーグでJ1の壁の高さを実感した選手も多かったでしょう。この半年間でそれを知るチャンスをもらえたのは本当に大きかった。今はエリソンら補強したメンバーも加わって、みんながケガがなく、いい競争をして、フルシーズン力を出し切ることができれば、絶対できると信じている。僕も彼らを力いっぱいサポートしていきます」

 誰よりもジェフ愛の強い大久保TD。その思いが結果に表れれば、J1での躍進も夢ではないはずだ。(第4回に続く)

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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