Jユース不合格→高2でスカウトが釘付け 世代別代表でも放った“異彩”「落ちた時は悔しかった」

帝京大可児高の高田憲慎【写真:安藤隆人】
帝京大可児高の高田憲慎【写真:安藤隆人】

帝京大可児の2年生FW高田憲慎

 夏を超えて強くなる―。

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 これから始まるリーグ後半戦、そしてその先の全国高校サッカー選手権予選、日本クラブユース選手権などを見据えて、各チームは遠征を繰り返しながらチームと個人の強化を行なっている。ここでは『成長の夏』を誓う高校生たちにスポットを当てていきたい。

 今回は8月6日から10日にかけて石川県で開催された和倉ユースサッカー大会に出場した帝京大可児の2年生FW高田憲慎について。今年の夏で一気に注目度を高めた高校生の1人である高田。爆発的なスピードはU-16日本代表でも、全国レベルの相手でも通用するどころか、圧倒的な存在感を放った。

 50m走は6秒フラット、30m走では3秒8を記録した生粋のスピードスターは今、『熱い夏』を過ごしている。

「小学校の運動会から始まって、中学、高校でもずっと短距離は一番でした」と笑う快足は、ピッチに立てばより鮮烈に映る。味方のCBがボールを持った瞬間に相手最終ラインの背後へ飛び出し、一気にトップスピードに乗る。足元で受ければ鋭い仕掛けから相手を剥がし、グイグイと縦へ突破する。

 今年に入り、そのスピードでプリンスリーグ東海において頭角を現してきた早生まれ(2010年3月11日生まれ)の高田は、U-16日本代表スタッフの目に留まり、6月のインターナショナルドリームカップに参加するU-16日本代表メンバーに初招集された。

 最終戦となる第3戦のU-16アルゼンチン代表戦ではFW三井寺眞(横浜F・マリノス)のアシストを受け、鮮やかなキックフェイントで相手DFを剥がしてから右足シュートを突き刺し、その後にはアシストを記録するなど、1ゴール1アシストの活躍を見せた。

 そして、7月のインターハイでは富山第一高に初戦でPK戦の末に敗れたが、カウンターの際の爆発的なスピードや、ショートパスの連動の中でもスプリントと急停止を駆使した相手の逆を突くフェイントとパス出しで、Jリーグスカウトの目線を釘付けにした。そして今月の和倉ユースでも、その爆発的な加速力は大きなインパクトを残した。

 そんな高田には理想とするストライカーがいる。

「常にイメージをしているのは、ブラジルのロナウドです」

 高田が生まれる前に世界を席巻した“怪物”ロナウド。その存在を知るきっかけは小学生時代のコーチだった。

「面談みたいなのがあって、その時に『お前はロナウドに似ているから参考にしてみたら』と言われたんです」

 そこから動画でプレーを見て大きな衝撃を受け、食いつくように繰り返し見続けた。

「ロナウドの凄さは爆発的なスピードだけではなく、高速のシザースで相手を揺さぶり、わずかにずらした瞬間にシュートを放つ。その一つひとつを自分のプレーに取り入れようと思った」

 スピードの中で何ができるか。いつしか頭の中にはロナウドのプレーイメージが刻み込まれ、裏へのスプリント、ボディーフェイント、高速シザースを駆使して、FC岐阜U-15ではポイントゲッターとして君臨した。

 だが、高校進学時は名古屋グランパスU-18、京都サンガF.C.U-18の練習会に参加し、加入を目指したが不合格。それでも「小さい頃からテレビなどで見ていて、良いサッカーをするチームだと思っていた。落ちた時は悔しかったですが、実際に練習参加をして、帝京大可児なら周りも技術レベルが高くて絶対に成長できると感じた」と、地元の帝京大可児高に進み、そこからさらに上のステージを目指す決意を固めた。

 昨年はなかなかトップチームに絡めず、主戦場はセカンドチームだった。それでも「ここで伸びることしか考えていなかった」と全力で練習に食らいつき、周りの選手の足元の技術を体感しながら、自分のものへと取り入れていった。

 それによって、よりスピードに乗った状態でできることが増えた。足元でボールを受けても、ファーストタッチやダブルタッチなどで相手を剥がせるし、ずっと磨いてきた高速シザースも質が増した。2年生になった今年、レギュラーに抜擢されると、そこから快進撃が始まった。

「今年に入って仲井(正剛)監督から『もっと自分をアピールしろ』と言われました。仲井監督はチームに対しても、『もっと裏に蹴って憲慎を動かせ』と言ってくれて、そこからどんどん裏へのボールが来るようになって、より僕の特徴が活かせるようになった。(U-16日本)代表でもほとんどの選手が僕のことを知らない中で、廣山(望)監督やコーチの人たちが僕の特徴を伝えてくれて、裏へのパスが来るようになったことで、これまでと同じように自分の武器を出すことができた。本当に感謝しています」

 帝京大可児でもU-16日本代表でも、ボールの出し手と高田のイメージが噛み合った瞬間、そのスピードが一気に輝きを放ち始めた。

 まさにこの夏、水を得た魚のように躍動を始めた高田の視野は、さらに大きな舞台へと広がった。それは北中米W杯で、OBである鈴木淳之介が華々しいピッチに立った姿を見たからだった。

「僕もあのピッチに立ちたいと心から思いました」

 自らの道筋を示す最高の存在となった鈴木は、高校2年生の夏に大きく評価を高め、プロへの扉をこじ開けて、一気に世界へ羽ばたいていった。その話は高田も耳にしている。

「続かないといけないですし、それであればまだ自分は足りない部分が多い。インターハイの富山第一戦では守備を固めてきた相手になかなかシュートまで持っていけなかった。和倉ユースでも川崎フロンターレU-18との試合で運べたけど、シュートまで行き切れないシーンもあった。どんなに守りを固められても、シュートまで持っていってゴールをこじ開ける力をもっと身につけていきたいです」

 常に相手の背後を狙ってポジションを取り続け、パスが来ると予感したら一気に加速してDFラインをぶち破る。速さを止められたら、今度はボディーフェイントやシザースで剥がし、帝京大可児で磨いているポストプレーやワンツー、パスからの動き出しも使う。あらゆる引き出しを増やしながら、個でこじ開ける力も磨き続ける。

「プリンス東海で得点王。選手権に出場して、全国で得点王を目指します」

 一度加速したら止まらない。目の前に立ちはだかれても、もう一度加速する。それはピッチ上だけではないのかもしれない。

 憧れのロナウドのように、スピードで相手を置き去りにし、その先でゴールを奪うストライカーへ。彗星のように年代別代表へと駆け上がった高田にとって、この2年目の夏は、さらに大きな舞台へ加速していくための重要な時間になっている。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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