189センチの逸材が下した“驚きの決断” 父は経営者…文武両道を貫き「一般受験の方がいい」

新潟明訓のCB牛腸敢太
7月25日から福島県のJヴィレッジなどで開催されるインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が日本一を懸けて凌ぎを削る大会に向けて注目選手をピックアップしていきたい。
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今回は新潟県予選決勝でプレミアリーグEASTに所属する帝京長岡を3-0で下し、8大会ぶり8度目のインターハイ出場を手にした新潟明訓の『ハイタワー』・CB牛腸(ごちょう)敢太について。
189cmの圧倒的なサイズを誇るDFリーダーは、県内屈指の進学校の中でもずば抜けた頭脳と、自分で決断してやり遂げる強さを持っている。
「帝京長岡という全国トップレベルのチームを相手に堂々と戦えたこと。その上で完封勝利をすることができたのは大きな自信になりました」
近年、新潟明訓は帝京長岡の最大のライバルとして存在感を放っていたが、両チームの激闘はいつも接戦が多かった。その中で3点差をつけて完封勝利を収めたことは、チームにとっても牛腸にとっても驚きであり、自信を掴む大きなきっかけとなった。
だが、「コツコツと積み上げてきたつもりなので、ここで勘違いしないようにしたい」と彼は冷静だ。きちんとビジョンを持って取り組めることが、彼の武器でもあるからだ。
新潟県出身で、サッカーにのめり込む一方、祖父の代から続く建築設計事務所を経営する父を持ち、長男として仕事の様子を幼少期から見てきた。
「建築業界に自然と興味を持つようになりました。特に建物を作ることだけではなく、都市計画や街づくりにも興味を持ちました。小さい頃から都市の成り立ちや都市整備を特集したテレビ番組を見ていて、『かっこいいな』と思っていたんです。なので、耐震設計などの家業以外にも、建物と周囲の環境との共存だったり、空間設計だったり、そこに興味を持つようになって、徐々に勉強にも力を入れ、その道に進むのも面白いなと思うようになりました」
そこからサッカーと勉強の両立が当たり前になった。中学に進学して地元の県央FCでCBとボランチとしてプレーする中で、身長が一気に22cmも伸びた。特に中学3年生の1年間で10cmも伸び、184cmの大型セントラルプレーヤーとして頭角を現していった。
そして中3の夏、新潟明訓からスポーツ推薦でのオファーをもらった。高校でも文武両道を目指していた彼にとって、かなり魅力的なオファーだったが、ここで彼は驚きの決断を下す。
「スポーツ推薦で入ると、学業で入った人たちとは別のコースになる。そうなると、高2になる時に文系しか選べなくなるんです。カリキュラムも違うし、将来のことを考えると一般受験の方がいいと思ったんです」と、推薦入学のオファーを断ったのだった。
新潟明訓は、高校からの入学者向けで、難関大学や医学部医学科などへの進学の道があるⅠ類、中高一貫クラスで新潟明訓中学からの内部進学生が進むⅡ類、スポーツ専願のⅢ類に分けられる。スポーツ推薦はⅢ類に進むため、彼が描く未来のビジョンからは少し逸れてしまうのだった。
「そんな選手はいなかったので衝撃でした」と坂本和也監督も驚いたように、中3で大きな覚悟を持った決断を下した。
「正直、中3の時の模試でもあまり結果が良くなくて、一般受験だと落ちるリスクもあったのでかなり迷いました。親からも『推薦でもいいんじゃないか』と言われましたが、僕はサッカーも勉強もハイレベルでやりたかったし、当時は必ず理系に行くとは決めていなかったのですが、入ってから自分の選択肢を狭めたくなかったので、回答期限の10月ギリギリで最終的には覚悟を決めましたし、親も自分の意思を尊重してくれました」
自らの決断を正解にし、ビジョンを広げる。必死で受験勉強に挑んだ結果、見事に合格を掴み取った。しかも入学式では、成績上位者が務める新入生代表挨拶にも指名され、堂々とその責務を果たした。
そして高校に入ってからもハイレベルな文武両道を目指し、勉強面では2年生進級時に理系を選択。サッカーではその年の夏以降にボランチとしてレギュラーを掴み、今年は難関国立大の理工系学部への進学を目指しながら、『越後のハイタワー』として最終ラインを束ねる存在に成長した。
「大学進学とプロサッカー選手になることを目指して、コツコツと続けることはずっと変わりません。サッカー面でも筋トレや食トレを1年の時から地道にやってきたからこそ、2年生でフィジカルとプレーがマッチするようになって、結果が出るようになった。勉強も変わらず時間を見つけてやっています。それを続けることが大事ですし、まずは初めてのインターハイで、これまで積み重ねてきたものを成果としてきちんと出して、冬の選手権につなげていきたいです」
ビジョンは明確だ。あとは、その可能性を自らの手で広げていくのみ。越後のハイタワーは、真っ直ぐに目標へ向かって突き進んでいる。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。



















