佐野海舟に周囲も困惑「本当に無言」 独特なコミュニケーション…元トレーナーから見た”現在地”

日本代表の佐野海舟【写真:徳原隆元】
日本代表の佐野海舟【写真:徳原隆元】

佐野海舟の元トレーナー水野純一氏

 日本代表、そしてドイツでも活躍を続けるMF佐野海舟。欧州へと羽ばたく直前の約1年間、その肉体を影で支えたのが、専属パーソナルトレーナーであり理学療法士の水野純一氏(WellBody株式会社代表取締役社長)だった。第1回では異次元のフィジカル、第2回ではフィジカル論と内面の貪欲さにスポットを当てたが、最終回となる今回は、彼のミステリアスなコミュニケーションの裏側、海外での現在地に注目する。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小西優介/全3回の3回目)

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 佐野とのセッションは異様な空間だった。ピッチ外での佐野海舟は、周囲が「何を考えているか分からない」と口を揃えるほど、極端に口数が少ないことで知られる。水野氏との最初の数回も、独特な時間が流れていたという。

「僕は選手と接する時、少なくとも最初の数回は年下であっても『さん』『くん』つけでタメ口は使わない、自分からは自分の話をしないと決めているんです。そうしたら、海舟も本当に必要以上の話をしないので、最初の3回くらいはトレーニング中、室内がほぼ無音でした(笑)。寝ているわけでもなく、起きてるんですけど何も喋らない。気まずい見方もありますけど、あっちにとってはそれが普通なんですよね」

 鹿島アントラーズで同僚だった知念慶や樋口雄太も、「海舟は本当に無口で、こっちから話しかけないと話さない」と水野氏に話していたというが、決してコミュニケーションを拒絶しているわけではない。

「プライベートな雑談は一切してこないのに、身体のことになると急に貪欲になるんです。『ここの筋肉ってどういう風に鍛えればいいですか?』『どういう時に使うんですか?』という質問は凄かったですね。本当に自分に必要なこと以外、脳内に入れたくないんでしょうね」

 その後、徐々に信頼を深めていった二人は、2人でご飯を食べる仲になり、最終的には90分間のセッション中、ほぼ喋りっぱなしになるほど打ち解けていった。心を許した相手には、深い味わいを見せる人間味も彼の魅力だった。

 そして佐野は2024年夏にドイツへと戦いの舞台を移した。水野氏は今も、外から佐野のプレーを見守り続けている。

「海外でも、Jリーグ時代と全く同じプレー(ボール奪取)を簡単にやってのけているのがまず凄いですよね。ベースがタフですし、何より適応力が速い。海外のスピードやピッチに脳と身体をアジャストさせる工夫を、本人が感覚的にやっているのだと思います」

 一方で、かつて身体を診てきた水野氏だからこそ見える「さらなる伸び代」もあるという。

「あえて言うなら、後ろ重心になった時の力の出し方ですね。下がりながらのヘディングや、戻りながら前に強いパワーを出すプレー。今後、さらに上のレベルの相手と戦う中では、そこがフィジカル的にもう一段階上がると、手が付けられない選手になるんじゃないかと思います」

 佐野をはじめ、多くのJリーガーが絶大な信頼を寄せる水野氏。最後に、自身のこれからの展望を語ってくれた。

「単に身体を大きくしたり、筋力を鍛えたりするのではなく、その人それぞれの身体の特徴を見極めて適切なアプローチを提供する。この重要性を、プロだけでなく子供から大人までもっと広めていきたいです。今は店舗(紹介制)を総本山としてクオリティを突き詰めつつ、企業向けに理学療法士が出向く福利厚生事業(BtoB)を大きく広げています。正しい知識を持つ人を増やし、社会全体の身体を豊かにしていきたいですね」

 往復3時間をかけて地道な努力を積み重ね、世界へと羽ばたいた佐野海舟。彼の成功の裏には、奇跡のような身体の資質と、それを信じて磨き上げたブレない個の哲学、そして支えてくれたトレーナーとの伴走があった。

(FOOTBALL ZONE編集部・小西優介 / Yusuke Konishi)



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