日本代表“10番”は「みんなの理想ではない」 託された3年…過去との比較に「結果を出すべき」

日本の10番を背負う堂安律【写真:徳原隆元】
日本の10番を背負う堂安律【写真:徳原隆元】

堂安律が背負った3年間のストーリー

 日本の10番が世界に誇れるプレーを見せ続けている。森保一監督率いる日本代表は現地時間6月25日にアメリカ・テキサス州ダラスのダラス・スタジアムで、FIFA北中米ワールドカップ(W杯)グループステージ(GS)第3節スウェーデン戦に臨む。決勝トーナメント進出を懸けた一戦。MF堂安律(フランクフルト)はここまで2試合連続で先発し、献身的な守備で貢献してきた。“持っている男”として2ゴールした前回大会から心身ともに成長。背番号「10」を付ける大黒柱が描く理想の「10番像」とは——。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 耳をつんざくような大歓声がメキシコ・モンテレイのスタジアムを包んだ。5万人を超える超満員の大観衆。GS第2節チュニジア戦(4-0)の前半4分、MF鎌田大地の先制ゴールが決まった。喜びの輪を作り、感情を爆発させる仲間たちから外れ、堂安は1人センターサークルへ戻った。相手のキックオフを阻止するため。1人、再開の瞬間を待った。

「チーム第一で考えるようになっている。チームが何を求めているのか。ゴール、アシストでチームを勝たせることが僕の理想の10番。でもそれができなかった時もどうチームに貢献できるのかというのを常に考えながらやっている」

 ここまで2試合に先発出場。右ウイングバックでオランダ、チュニジアの攻撃陣を“封殺”し、豊富な運動量、体を張った守備で1勝1分に貢献した。前回のカタールW杯ではドイツ戦(2-1)とスペイン戦(2-1)に途中出場して計2得点。試合を決める働きをした4年前より、より“自己犠牲”の色が強くなり、フォア・ザ・チームに徹するようになった。

 10番としてどうなのか。世界的にはアルゼンチンのFWリオネル・メッシやフランスのFWキリアン・エムバペらが得点王争いをする。では、日本の10番は? 世間からはさまざまな声も届く。それでも、誰もが憧れるエースナンバーをW杯の舞台で背負う堂安にはもちろん覚悟がある。

「みんなが理想とする10番ではないかもしれない。過去の10番の中で自分が日本代表を一番上に導いたと僕は思わせたい。一番点を取った、それもかっこいいですけど、僕は勝たせる、チームを勝たせるのがこのチームの10番であるべきだと思っている。今のチームにも(元10番の中村)俊輔さんや名波(浩)さんがいる。いろんな先輩たちがいるなかで、彼らの能力を超えるとかではない。本当に超えたいと思うのなら、チームとして結果を出すべきやと思うし、チームとして時代を超えるべきやと思っている。その時代の10番でありたいと自分は思っているし、その意思は強い」

 丸3年。2023年6月に新10番を託された。ドイツでのシーズン中、堂安のもとを訪れた日本代表スタッフから直接告げられた。同年3月にスタートした第2期森保ジャパンで空き番号となっていた「10」を付けることになった。当時掲げたのは「堂安律しか出せない10番像を作っていきたい」。何も変わっていない。W杯まで貫いた。

 ただ、譲ったこともあった。昨年6月、W杯出場権を得ていた日本代表はメンバーをガラリと変更し、欧州でシーズン通して出場機会が多かった選手は招集見送りになった。堂安も選外に。空いた10番はMF久保建英が付けた。パナソニックスタジアム吹田で行われたアジア最終予選インドネシア戦(6-0)。堂安はスタンドで観戦した。ピッチ上の久保は1ゴール2アシストの活躍。「もちろん刺激になった」。その姿を見た堂安は包み隠さず自身の思いを話していた。

「勝手に久保対堂安を作りたがっているかもしれないけど、みんな盛り上がっているな、と思っているし、面白くなってきたな、と。自分がまた頑張らないといけないという刺激はあるけど、ネガティブな発想は全くなくて、むしろ俺にとってはありがたい環境じゃないかと思っている。結果で黙らせるしかないので、黙らせますよ、俺は」

 第1期森保ジャパンでは、自分のことしか考えられなかった時期もあった。代表から外されたこともあった。それも過程。2015年5月27日、雲一つない5月晴れの万博記念公園、AFCチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦FCソウル戦の後半43分、途中出場でプロの1歩目を踏んだ。まだ16歳の高校2年生。「俺、クソガキやったでしょ!(笑)」。そこからわずか3年でA代表入り。8年前から森保ジャパンを支えてきた堂安だが、目まぐるしく変化する環境のなかで自分にしか矢印を向けられなかった時期があるからこそ、“日の丸”の意味を誰よりも考える10番になった。

 そして今、チームは堂安のゴールを渇望している。DF長友佑都は「彼には絶対いつかチャンスが来る。ボールがこぼれていって、彼が全て持っていくでしょう。それが堂安律ということを伝えておきたい」と期待した。堂安も「僕自身も点が取れる確信はなぜかある」と自信を持つ。「10番」は誰かを否定するための番号ではない。その意味はW杯が終わった時に証明されるはずだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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