「一緒に歴史を作ろう」から始まった快進撃 過半数が国外生まれ…人口50万人カーボベルデ躍進の意義

北中米W杯に挑むカーボベルデ代表【写真:ロイター】
北中米W杯に挑むカーボベルデ代表【写真:ロイター】

優勝経験国のスペイン、ウルグアイから勝ち点を奪取

 多くの日本人にとって「初めまして」だったはずだ。初出場ながらスペインに続いてウルグアイとも引き分け。優勝経験のある2か国から勝ち点を奪ったアフリカの小国カーボベルデが、世界中から注目されている。

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 スペイン戦は40歳GKボジニャの活躍で0-0。この日は点の取り合いの末に2-2で引き分けた。初出場と思えないほどの組織的な守備、全員がハードワークを惜しまず、相手のミスは見逃さない。そんな戦いぶりに、世界から熱い視線が送られる。

 カーボベルデ、ポルトガル語で「緑の岬」を意味する国は、アフリカ大陸最西端のセネガルの沖合にある島国だ。面積は滋賀県とほぼ同じ4000平方メートル、人口は鳥取県並の50万人。1975年にポルトガルから独立し、リゾート開発も進んだ最近はヨーロッパからのバカンス先にもなっている。

 経済を支えるのは、島外で生まれ育った同国出身の「ディアスポラ」(国外移住者)。サッカーも同様で「ブルーシャークス(青いサメ)」の愛称を持つ代表の急成長には、約200万人といわれる「ディアスポラ」の存在が欠かせなかった。

 これまでアフリカ選手権ベスト8が最高のカーボベルデが本格的な代表強化に乗り出したのは、今大会のアフリカ大陸枠が従来の5から9.5に倍増したから。同国にルーツを持つ欧州でプレーする選手を精力的に発掘、同国のレジェンドでもあるブビスタ監督が「小国でもできることを証明しよう」「一緒に歴史を作ろう」と1人1人を口説き落とした。

 もともと、人材がいないわけでない。フランス代表で活躍したDFパトリス・エブラの母はカーボベルデ人だし、スウェーデン代表の伝説的FWヘンリク・ラーションの父も同国出身。ポルトガル代表FWロナウドの祖母もカーボベルデ生まれで、もしカーボベルデ代表を選んでいたら歴史は変わっていた。

 これまで、カーポベルデ代表を選ぶ選手は少なかったが「W杯に出られる可能性があるなら」とルーツ国の代表になった。同点ゴールを決めたFWバレラはポルトガル生まれ。今大会登録26人中、オランダ6人、フランス、ポルトガル各3人など半数以上の14人が国外で生まれている。そんな選手たちをブビスタ監督が1つにまとめあげ、W杯初出場をなしとげたのだ。

 今大会初出場のキュラソーも事情は似ている。カーボベルデのように独立国ではなくオランダ王国の構成国のため代表資格は少し異なるが、MFタヒット・チョンを除く25人はオランダ生まれ。乱暴な言い方をすれば「オランダのBチーム」がW杯に出場しているわけだ。

 世界が注目するW杯は国をアピールする最大のチャンス。ブビスタ監督はW杯出場が決まった後、FIFAのインタビューで「小国でも大きな夢を持つことができる」と胸を張った。小国だからこそ、W杯への思いは強いし、出場の価値は高い。

 24年パリ五輪、ボクシング男子51キロ級でダビド・ピナが銅メダルを獲得した。カーポベルデ初の五輪メダリストは「小国でもできる。我々の国を知ってもらいたい」と吠えた。スポーツを通して母国のアイデンティティを世界に示す。その最高の舞台がW杯であることは間違いない。

 強豪2か国と引き分けて、1次リーグ最終のサウジアラビア戦に決勝トーナメント進出をかける。スペイン、ウルグアイが2強と言われたグループHに波乱を巻き起こし、世界中にその名を知らしめたカポベルデ。大会前「トーナメント進出」と話していた目標は「上の順位を目指す」(ブビスタ監督)と上方修正されている。

(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)



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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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