激震のチュニジアは“楽な相手”か 警戒すべき「26回」、1-5惨敗の中で光った不気味な数値
![[図1]出典:FIFA WORLD CUP 2026「Post Match Summary Report」のデータをもとにAIで作成](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2026/06/20191956/20260620_data-1.jpg)
連載「北中米ワールドカップData Lab.」第4回、チュニジアvs日本データ展望
北中米ワールドカップ(W杯)の激闘の裏側で、何が起きているのか――。史上初の3か国共催、出場48チームが全104試合を戦う世界最高峰の舞台を、FIFAが試合後に公開するデータを最新AIで読み込みながら、アナリストが分析していく連載「北中米ワールドカップData Lab.」。森保一監督率いる日本代表は、日本時間6月21日にチュニジアとのグループステージ第2戦に臨む。初戦で強豪オランダと2-2で引き分けた日本に対し、チュニジアはスウェーデンに1-5と惨敗。さらにサブリ・ラムシ監督を電撃解任し、後任として前サウジアラビア代表監督のエルベ・ルナール氏の就任を発表した。激震が走ったチュニジアは、スウェーデン戦でどんなサッカーを展開したのか。FIFAが試合後に公開したデータ「Post Match Summary Report」をもとに、日本の第2戦の相手を分析した。(文=森本美行)
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日本代表がオランダと2-2で引き分けた約6時間後、モンテレイで行われたグループFのもう一つの試合でチュニジアがスウェーデンに1-5で敗れた。欧州予選最下位からネーションズリーグの成績によってプレーオフに進み、なんとか本戦出場を決めたスウェーデンに大敗した結果を見ると、日本の次戦は比較的楽な相手にも見えるが、果たしてどうだろうか。スウェーデンとチュニジアの一戦のデータを掘り下げながら、見ていきたい。
この2チームの特徴は、ポゼッション率とパス数を見ると見えてくる。この試合、スウェーデンのポゼッション率47.4%に対してチュニジアは42.7%。しかしパス数を見るとスウェーデン356本に対してチュニジアは370本。つまりチュニジアは短いパスを回しながら自分たちの時間を作ろうとしているのに対し、スウェーデンのパスは移動時間の長いミドル、ロングパスで自分たちの時間を作っていたということだ。
そのようなパスの構成で、チュニジアは前進するためのライン突破を26回試みて21回成功させた。26回――これはスウェーデンの16回(成功12回)、オランダ戦での日本の22回(成功16回)を上回っている。相手のゴールに近づくためのライン突破の数は、攻撃に優位性をもたらすという意味で注意すべきデータだ。
しかし、チュニジアがライン突破後のゴールに向けた「進路」に課題を抱えていることは間違いない。それがシュート数6本中ペナルティーエリア内からのシュートが2本、xG(ゴール期待値)0.34という数値に表れていた。
一方の守備面に目を向けると、[図1]に記されたチュニジアのDefensive Pressures Applied(守備プレス適用数=守備プレッシャー)というデータには、そのスタイルが明確に表われている。
チュニジアの守備プレス適用数は223回で、スウェーデンの172回を大きく上回っていた。この数字は日本のオランダ戦での316回より遥かに少ないが、オランダとスウェーデンのボール保持率(オランダ=54.9%、スウェーデン=47.4%)に7.5%もの差があったことを考えると、守備プレス適用数の中のDirect pressures(直接ボールホルダーに対するプレス数)の数が、チュニジア45回、日本46回とほぼ同数だった点には、ボールホルダーに向かう意識の高さが垣間見える。
![[図2]出典:FIFA WORLD CUP 2026「Post Match Summary Report」のデータをもとに著者が作成](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2026/06/20192000/20260620_data-2.jpg)
守備面で露呈した効率の悪さ
さらに[図2]を見ると、チュニジアの守備の意図がはっきりと分かる。相手のボール保持時に外へ誘導しようとすることと、ボール保持者にはプレスをかけることだ。
しかし意図に反して、ボール奪取の効率は必ずしも高くない。Forced Turnovers(プレスからのボール奪取)は、少ないプレス数だったスウェーデンの42回(奪取率24.4%)に対し、チュニジアは41回(同18.4%)、Ball Recovery Time(ボール回復平均時間)もスウェーデン15.0秒に対してチュニジア17.18秒と、ボールを奪うまでに時間がかかった。「プレスをかけ、外に誘導したが奪えない」という効率の悪さが守備面での課題だ。それが被xG2.09に対して5失点を喫した結果の原因の一つだろう。
日本とチュニジアの一戦が、果たしてどのような試合になるのか。オランダ戦で勝ち点1を獲得後、日本の多くのサッカーファンが関心を寄せる点だが、チュニジア指揮官の電撃解任という事態を受けて、前提条件が大きく変わってしまった。
チュニジアを新たに率いることになったルナールとは、どのような監督なのか。
ザンビア代表(2012年)、コートジボワール代表(2015年)を率いてアフリカネイションズカップ優勝。モロッコ代表監督として2018 年ロシアW杯、サウジアラビア代表を率いて2022 年カタールW杯に出場し、フランス女子代表も指揮したルナールは「コンパクト・組織的・規律・結束・モチベーション」を掲げ、チームをまとめ上げて“戦える集団”とする現場型の指揮官との評価を多く聞く。
また、サウジアラビア代表監督時代(2019~23年、24~26年)に日本と4度対戦しており(日本の2勝1分1敗)、森保ジャパンの戦い方を熟知しているはずだ。そして22年カタールW杯では、優勝したアルゼンチンを2-1と撃破している。
その試合を分析したサッカー戦術分析サイト「Total Football Analysis」によれば、サウジアラビアは「引いて守ることより高い位置から能動的かつコンパクトな守備」を目指していたという。細かなラインコントロールでオフサイドトラップを積極的に仕掛けアルゼンチンを苦しめたようだが、今回の日本戦までの限られた時間のなかで、守備を整備することは簡単ではないはずだ。
攻撃面においては、コンパクトで堅牢な守備によってボールを奪った瞬間、素早い縦への攻撃が持ち味だ。これらの特徴を聞いて何か思い浮かべることはないだろうか――。そう、チュニジアの攻守における特徴だ。
![[図3]出典:FIFA WORLD CUP 2026「Post Match Summary Report」のデータをもとにAIで作成](https://www.football-zone.net/wp-content/uploads/2026/06/20191959/20260620_data-3.jpg)
日本はチームとして創造性を発揮できれば…
ポゼッションとパス数の関係から、チュニジアのパススピードは速く、前へのラインブレークは彼らがボールを保持している時の特徴の一つだ。労を厭わぬプレス、サイド誘導という守備の共通理解と、ボールホルダーへのプレス数が守備の特徴だ。しかし、それが上手くはまらずに失点を重ねたことが、今回の監督交代の引き金であったことは間違いない。
ボールを奪うために重要なことは、ボールホルダーへのプレス強度に加え、それが剝がされた時のカバーリングのポジションと距離感、つまりコンパクトな陣形だ。ルナールはチュニジアの守備に足りない大事なピースを与えてくれるかもしれない。同時にこのような短期間の世界大会での選手たちのモチベーションを高めること、敗戦を引きずらないように気持ちを切り替えることの重要性を十分理解している監督でもある。
コンパクトな守備を崩すために必要な創造的なプレー。その最大の体現者である久保建英を欠いた状況で戦うことを余儀なくされた日本が、勝利を手繰り寄せるために大事なことは、個人ではなくチームとして創造性を発揮すること、そして初戦で得た勝ち点1の重要性を理解し、試合が動かない状況の時間帯を自分たちにとって有利な試合展開だと信じてプレーを続けることだろう。
それができれば、モロッコ代表監督時代の2018年ロシアW杯や19年アフリカネイションズカップで起きたような、終盤に自滅して勝ち点を失うルナール監督の、もう一つの顔が見えてくるはずだ。
(森本美行/Miyuki Morimoto)
森本美行
森本美行
もりもと・みゆき/1961年生まれ。92年米ボストン大学経営大学院でMBAを取得。2002年にスポーツデータ配信や分析を行うデータスタジアム株式会社の代表取締役に就任。16年には日本初の野球独立リーグ四国アイランドリーグplusを運営する株式会社IBLJの代表取締役及び一般社団法人日本独立リーグ野球機構の常務理事を務めた。またJリーグのヴィッセル神戸や東京ヴェルディ1969、京都サンガF.C.などでトップチームのアナリストを歴任。鈴鹿ポイントゲッターズや慶応義塾大学体育会ソッカー部などでは、コーチとして選手を指導した。現在は横浜FCでデータ戦略アドバイザー、ヴィアティン三重のデータアナリストを務めている。















