日本代表がW杯で記録した「10/25」 G大阪出身が多数の訳…根付く「いったれ精神」

ガンバ大阪出身者がW杯でゴールを決めてきている
2026年北中米ワールドカップ(W杯)で初戦・オランダ戦(14日=ダラス)を2-2のドローで発進した日本代表。20日には次戦・チュニジア戦(モンテレイ)に挑むが、ここへきて攻撃のキーマン・久保建英(レアル・ソシエダ)が左ひざを負傷。当面は治療と回復に専念することになり、本職のシャドーをまたも欠いたチームがどう得点を奪うかが大いに気になる。
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そこで期待されるのが、オランダ戦でW杯初ゴールを奪った中村敬斗(スタッド・ランス)。彼は三菱養和SCからガンバ大阪を経て、海外へ羽ばたき、現在の地位を確立した。G大阪在籍はわずか1年半だったが、ガンバファミリーの一員であることは間違いない。
そこで改めて見返してみると、98年フランス大会から8回のW杯でゴールを奪った選手の中に、ガンバ大阪出身者が多いことに気づかされる。2002年日韓大会の稲本潤一(川崎FRO、アカデミー出身)を筆頭に、2010年南アフリカ・2014年ブラジル・2018年ロシアの3大会で4ゴールを叩き出した本田圭佑(FCジュロン、アカデミー出身)、2010年南アで本田とともに直接FK弾を蹴り込んだ遠藤保仁(G大阪コーチ)、2022年カタールW杯で2ゴールをマークした堂安律(フランクフルト、アカデミー出身)、そしてオランダ戦でゴールを奪った中村、鎌田大地(クリスタルパレス、アカデミー出身)と合計6人もいるのだ。
日本のW杯得点者はトータル20人。このうち6人が1クラブから出ているというのは、やはり特筆すべきものがある。ゴール数という指標で見れば、全25得点中10点。40%という高確率である。これにはガンバ関係者も驚きを覚えているかもしれない。
同クラブで27年間、スカウトとして活躍し、堂安や鎌田の獲得に携わった”伝説のスカウト”・二宮博氏(現ヴァリュエンスホールディングス・社長室シニアスペシャリスト)はこう語る。
「ガンバはトップからアカデミーに至るまで技術を非常に大切にしています。高いスキルを身に着けていることが得点の原動力になっていると思います。そこに『選手個々の魂』が重なり、大きなパワーにつながっている。2022年以降の世代にしてみれば、稲本、本田という先駆者のブレイクのインパクトも大きかったでしょう。その活躍を目の当たりにした後輩たちが系譜をつないでいることに、不思議なリレーションシップと伝統を感じます」
一方で、稲本とユース時代の同期で、ガンバのアカデミーで長く指導し、堂安や鎌田と正面から向き合った梅津博徳氏(現横浜F・マリノスジュニアユース監督)もこんな話をしていたことがある。
「僕らの恩師である上野山信行さんが指導されていた頃から、ガンバは『つねにゴールを目指す』『最短距離でゴールに向かう』という考え方があった。それが現場に落とし込まれてきたのは確かです」と。ゴールから逆算してプレー選択という点では、稲本や本田、堂安、中村らに通じるところがある。それも数多くのW杯スコアラー輩出に寄与してきたと言っていいだろう。
さらに関西出身・クラブ関係者という視点に広げてみると、W杯得点者20人のうち12人(*2018年の大迫勇也は当時ケルン所属だったため、カウントしていない)とさらに比率が高くなる。ゴール数で見れば、全25得点中17点という数字。関西人は大舞台に強い傾向があるのかもしれない。
稲本が活躍していた2000年前後の頃、関西のある育成指導者が「関東や九州は勝ちにこだわる分、守備組織の構築や走力を生かしたスタイルを重視しがちだが、関西の指導者は色とりどり。それぞれこだわりを持って指導している人が多い。その分、攻撃重視になりがちで、独創的なアタッカーも出てきやすい」という話をしていたことがあったが、そういったサッカー文化や価値観によるところも大きいのかもしれない。関西の「いったれ精神」がW杯のような異様な緊張感と重圧のかかる大舞台でいかんなく発揮されるとしたら実に興味深い。
となれば、今大会もここからガンバを含めた関西関係者のさらなるブレイクが期待されるということ。その筆頭が堂安だ。前回2ゴールを奪った男は「自分がカタールW杯で活躍したことは1回忘れて、チャレンジャーとして今大会に挑みたい」と力を込め、オランダ戦ではPSV時代の盟友、ガクポ(リバプール)を徹底的にマークしたが、ここから先はもっと得点に関与しなければいけない。
「どこで出ても得点は狙っていますし、ウィングバック(WB)だから点が取れなかったという言い訳をするつもりは全くないので。WBでもシャドーでも点を取れますし、自分のよさは得点やと思っているので、間違いなく点を取れる時が来ると思います」と自身の28回目の誕生日翌日の17日の代表練習後にも鼻息を荒くしていた。
こういう強気のマインドは先輩の本田圭佑と重なる。本田は3大会4ゴールだったが、堂安もここから数字を重ねれば、本田と並ぶ、あるいは追い越すことも可能だろう。南野拓実(モナコ)、三笘薫(ブライトン)、久保のいない苦境を打破すべく、ガンバの偉大な伝統の継承者になってほしいところだ。
中村としても1点では物足りないだろう。今の日本代表攻撃陣にとって、左サイドでボールを持って独特のリズムで仕掛けができる背番号13は不可欠な存在になりつつある。そのうえで、誰もが認めるシュート力とシュート技術を備えているのだから、さらなる量産への期待が高まってくる。
「大きな舞台とか強い相手に点取るっていうのはいつも喜び。でも今日、ゴールを取った時には『今がワールドカップ』っていう特別な感覚は正直、しなかったです」と本人はオランダ戦後に語っていたが、そういう強心臓も心強い。
W杯2戦目を苦手としている日本代表にとって、チュニジア戦は鬼門。彼らがそれを突破する得点源になってくれれば理想的だ。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。















