16年の時を経て…“日本がオランダに追い付いた”日 森保監督が訴える「国のサッカー力」

日本代表はオランダに劇的ドロー【写真:ロイター】
日本代表はオランダに劇的ドロー【写真:ロイター】

日本は2010年大会でオランダに0-1で敗戦

 日本中が盛り上がる最高の試合だった。相手のオランダは、ヨーロッパを代表する強豪。10年の南アフリカ大会で対戦した時は善戦しながらも0-1、「格」の違いを感じたものだ。「追いつくまでは、まだ時間がかかる」と思っていたが、この日は追いついた。しかも、2度も。

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 前半はピンチの連続だったが、選手たちは集中していた。「後半、森保監督が選手交代のカードを切った時が勝負」と思ったし、その通りに後半試合は動いた。

 先制されて追いつき、突き放されてもさらに追いつく。「高さ」が大きな武器のオランダに空中戦で競り勝ち、終了間際の同点ゴール。劇的な試合展開に、テレビ画面に向かって思わず歓声をあげた人も多かっただろう。

 ブラジルやイングランドに勝ったのは親善試合。もちろん、それもすごいことだけれど、W杯本番は特別だ。世界中が注目する中で、しっかりと日本の強さを証明した。本当に日本は強い。

 ただ、当然だけれどオランダ戦はゴールではない。まだ1次リーグの初戦、大会は始まったばかりだ。森保監督も選手たちも、この結果に一喜一憂することなく、次のチュニジア戦に気持ちを切り替えているはずだ。

 W杯は長丁場、コンディショニングが重要になる。優勝を狙うようなチームは、ピークをしっかりと決勝トーナメントに合わせてくる。1次リーグからエンジン全開では息切れするからだ。

 実際に、長い大会の歴史でも全試合勝って優勝したチームは少ない。前回カタール大会優勝のアルゼンチンは1次リーグ初戦でサウジアラビアに負けているし、10年大会優勝のスペインも初戦でスイスに敗れている。1次リーグから全勝での優勝は、02年日韓大会のブラジルが最後だ。

 チーム数が増えた今回はさらに会期が長い。決勝まで1試合増えて8試合もあるのだから、より1次リーグの戦い方は難しくなる。最低限の勝ち点は必要だけれど、勝ち負けよりも内容。チームをどう成長させ、盛り上げていくか。そういう意味では、チームの自信になる引き分けは大きかったと思う。

 そして、オランダ戦の劇的ドローで大きいのは、国内の応援ムードが盛り上がるということ。早朝の興奮状態のまま学校や職場でW杯の話題になる。最後まで諦めずに戦う姿勢が、代表チームへの期待をさらに高める。熱い思いが、W杯を戦うチームに届く。

 森保監督は試合後「早朝の日本からの念」に感謝した。広島の監督時代から常にサポーターのことを忘れない森保監督。決してリップサービスではない。「応援の力」が選手たちの背中を強く押すことが分かっているからだ。

 W杯優勝のためには「チームの力」だけでなく「国のサッカー力」が必要。過去の優勝チームと比べて、日本に足りない部分だ。だからこそ、森保監督は国民に向けて「一緒に戦ってください」と繰り返し訴える。これまでに比べて監督や選手のCMやメディアへの露出が多いのも、多くの人のサポートを願うからだ。

 渋谷は今、山手線沿いの「MIYASHITA PARK」を中心に日本代表一色に染まっている。オランダとの劇的な試合で、さらに盛り上がるのは間違いない。あのまま負けていれば「最高の景色」への機運醸成にも影響していたはず。だから、本当によかった。

 W杯ムードを盛り上げ、日本代表への応援を加速させる意味で、この日の引き分けは大きかった。1人1人の声が、大きな力となってW杯を戦う日本代表に届く。まだまだ大会は始まったばかり。みんなで「念」を送り続ければ「最高の景色」が見えるはずだ。

(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)



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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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