小川航基が誓う「正真正銘のゴール」 紆余曲折の末…W杯で証明した「必ず僕が結果を出す」

W杯初戦のオランダ戦で同点弾をアシスト
2026年北中米ワールドカップ(W杯)の初戦となったオランダ戦。夢に描いていた場面は89分にやってきた。
「(伊東)純也くんのボールが、本当に良くて。あのゾーンを見た時に高くて(難しいと思ったが)、あそこからしかゴールが生まれなさそうだなというところに走り込んで、本当に意思疎通が合った」
右サイドのCK、伊東のインスイングキックがニアサイドに飛ぶと、競り合った小川がヘディングで合わせた。ボールは鎌田大地にディフレクトしてゴールに吸い込まれ、喜びを爆発させながらベンチメンバーが作った輪に飛び込んだ。
「本当に僕はゴールを取ることに関してずっと自信を持っているし、今もそうです。それをこの舞台で発揮できたというのは、また自分の力を信じる良いきっかけになったと思います」
公式記録は鎌田のゴールに変わってしまったが、小川のヘディングシュートがチームの勝利に結びついたことは間違いない。
桐光学園高時代から世代屈指のストライカーと言われ続けてきた。第94回全国高等学校サッカー選手権大会でも4得点を挙げ、そのパフォーマンスが評価されてジュビロ磐田に入団。誰もが順調なキャリアを思い描いていた。
しかし本人は言う。「本当にキャリアを振り返っても僕は順風満帆ではなかった」。左膝の前十字靭帯断裂と半月板損傷を経て、J2でも試合に絡めない時期があった。東京五輪も、カタールW杯も、自分と同世代の活躍をテレビの前で見守るしかなかった。
それでも、下を向くことなくどんな時にも得点だけは取り続けた。Jリーグでもエールディヴィジでも、ゴールへの執念は手放さなかった。横浜FC退団の際、小川は言い切った。「次のW杯でゴールを奪うのは僕です」。その言葉通りにここまで来た。
「難しい時期も必ず僕が結果を出す、花開くタイミングが来ると思って、本当に小さいことからやってきた。今までやってきたことはやっぱり間違ってなかったなと思います」
北中米W杯のために事前キャンプのメキシコ・モンテレイ入りしてから、小川はずっと確信を持っていた。
「僕自身、このW杯で得点を取るイメージが本当に湧いている。楽しみでしかない」
初めてのW杯、夢の舞台。会場に入り、ピッチに立った時、頭の中にはさまざまなものが流れ込んできた。
「いよいよ始まるんだという感じで、すごく気持ちを抑える方が大変というか、ちょっと足が震える、ではないですけど、ちょっとそういう気持ちになっていた。いろんなことを思うと、緊張感だったり、そういうのも楽しみながらやらなければいけないと。いろいろな人の思いを背負って戦わなきゃいけないという気持ちになった」
緊張も興奮も、すべて纏めて飲み込んで戦う覚悟を決めた。
試合が始まると、仲間たちの奮闘をベンチから見つめながら、今か今かと出番を待ち続けた。75分、ついに名前を呼ばれた。
「本当に自分が小さい頃からずっと思い描いてきた舞台というか、そういったところに立った時は、自分のためにもそうですけど、いろいろな人が得点を欲しがってるというのをピッチに入った時にすごく感じた。みんなの助けになりたいという強い気持ちを持って入りました」
前述した通りゴールは鎌田のものになった。しかし、あのヘディングには確かに小川の強い意志が宿っていた。
「僕のゴールではないのでなんて言っていいかというのがありますけど、(日本が前回のW杯決勝トーナメント1回戦で)クロアチアに負けた日からずっと俺がやるっていう気持ちで思っていました。あの日、テレビの前で見た光景というのは今でも覚えてるし、今もすごい悔しい気持ちがある。本当に俺がやってやるんだという思いで、インスタに投稿したことをすごく覚えています」
あの時の誓いは果たした。だが、夢はまだ完結していない。
「(夢を叶えたかと言われると)まだ、だと思います。まだ僕のゴールと公式記録上なってないので。ここから先は長いので、正真正銘のゴールはここから決めればいい」
まだ1試合が終わったばかり。大舞台の喜びも興奮も、もう次に向けて切り替えている。「今日の試合はもう忘れて、次の試合に向けて最高のコンディションを作っていけたらいい」。夢が完結する瞬間を目指して――。小川は正真正銘のゴールを目指して、次の戦いへ向かう。

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
















