オランダは「日本を舐めている」 同僚に送った日の丸…大舞台で「ギャフンと言わせたい」

渡辺剛がワールドカップへの思いを話した【写真:岩本太成】
渡辺剛がワールドカップへの思いを話した【写真:岩本太成】

カタールW杯は同世代の東京五輪世代が躍動「一生忘れられない経験」

 北中米ワールドカップ(W杯)開幕まで残りわずか。日本と初戦で対戦するオランダで研鑽を積む日本代表DF渡辺剛はさまざまな挫折を乗り越えてここまで来た。名門フェイエノールトの最終ラインで、牽引する屈強なセンターバック(CB)。不屈の精神を胸にここまで這い上がって来た。「FOOTBALL ZONE」のインタビューでは東京五輪、前回カタールW杯を糧にたどり着いた夢の舞台について語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の3回目)

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 その光景を思い出すことはできない。2022年冬、カタールの地で世界を驚かせた日本代表。グループステージでドイツ、スペインをなぎ倒し、新しい景色に手をかけようとした熱狂を感じることができなかった。

「前回のW杯は、正直に言って、ちゃんと見られなかった。悔しくて」

 力を込めて絞り出した言葉。テレビの画面に映るのは同世代の仲間たち。歴史を塗り替えていく歓喜の渦。そのすべてが当時、針のように刺さった。

「直視できないというか。最後のクロアチア戦のPK戦も、心の中がぐちゃぐちゃでした。勝って歴史を変えてほしいという願いと、そこに自分が立っていないことへの不甲斐なさ。PK戦を見届けなきゃいけないのに、自分は画面を見られない。あの大会は、僕に強烈な刺激を与えてくれた。一生忘れられない経験になった」

 悔しさを晴らす場所は、ピッチしかない。渡辺は、日本代表での立ち位置を確立するために、自らを極限まで追い込んだ。2024年のアジアカップでは、メンバー入りを果たして約1か月間帯同したものの、出場時間はわずか6分。ベスト8でイランに敗れた夜、ベンチでただただ無力さを感じた。

「信頼されていなかった。相手がロングボールを放り込んできた時『出るなら僕だろう』と思っていたシーンでも使われなかった。実力が足りないんだと突きつけられて……。帰り道、そのまま飛行機に乗って所属クラブの試合に向かいましたけど『ここで結果を出し続けないと、もう一生あのままだな』って。あのアジアカップでの無念さが、フェイエノールトへの移籍も、もっと高いレベルへの挑戦も、強く背中を押した」

オランダとの対戦に仲間の反応は…「日本の国旗を載せた」

 転機は、2025年6月。森保ジャパンに復帰した渡辺は、別人のようなオーラを纏っていた。ベルギーで磨かれた対人の強さと、何より「自分はここで生き残るんだ」という不退転の決意。特に世界を震撼させた同年10月の国際親善試合ブラジル戦での勝利は「代表として認められた」という確信に変わった。

「あのブラジル戦は、ここでやれなきゃもう生き残れないという覚悟で挑みました。怪我人が多い中で巡ってきたチャンス。ヴィニシウス選手ら世界最高峰の選手とマッチアップして、後半から前線からプレスをかけるマンツーマン気味の守備になった時に『あ、やれるな』と感じたんです。ブラジル相手にこれだけできるなら、他もいける。やっと土俵に立てた感じがした」

 何度も何度も挫折を味わった。その度に這い上がって、ここまで来た。アジア杯の絶望から日本代表へ復帰することも簡単じゃない。そこから掴みとった信頼は努力の賜物だ。

 2026年、北中米W杯のグループステージ。運命の初戦の相手は、自らが現在主戦場とするオランダに決まった。

「当たったら面白いねってチームメイトと話していたら、本当に当たっちゃって(笑)。抽選が決まった瞬間、WhatsApp(メッセージアプリ)のチームグループに日本の国旗をバン!って載せたんです。そしたら、みんな笑いのスタンプや『グッドラック』と送ってきて。正直、彼らはまだ日本を舐めているところがあるな、と思った。ヨーロッパから見れば、日本はそこまで怖い存在じゃないと思っている。でも、そこに隙がある。ギャフンと言わせたい。勝って世界を見返してやりたい」

 目標にして来た舞台。だが、いつしか目標は変わった。W杯の舞台に立つことではない。

「目標は、チームとしては優勝です。本気で言っています。ブラジルやイングランドを倒す力が今の日本にある。個人的には、全試合フル出場。怪我をせず、常に最高のパフォーマンスでピッチに立ち続ける『鉄人』でありたい。主役として活躍したい。新しい歴史を刻むところに繋がってくると思う。今までみたいに受け身じゃなくて自分が活躍できるような大会にしたい」

 激しく燃える闘志。運命の笛が鳴る時、日本の最終ラインには、誰よりも高く飛び、誰よりも強くボールを跳ね返す渡辺が立っているはず。不屈の魂。渡辺剛が切り拓く、新しい歴史の幕が今、上がろうとしている。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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