世界で称賛された“毅然なるレッドカード” FIFAも高評価…見事に捌いたW杯の一発退場劇

南アフリカW杯で起きた一発退場劇【写真:L'EQUIPE/アフロ】
南アフリカW杯で起きた一発退場劇【写真:L'EQUIPE/アフロ】

FIFAからの高い評価 強豪同士の「大一番」を託された西村雄一主審

 1930年の創設から、これまで数々のドラマを生み出してきたFIFAワールドカップ(W杯)。4年に一度の祭典で起きた印象的な出来事を振り返る「W杯事件簿」の今回は、2010年南アフリカ大会で、サッカー王国に対して一歩も引かず、毅然としたジャッジで世界的な称賛を集めた日本人レフェリーの雄姿を振り返る。

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 岡田武史監督率いる日本代表が、自国開催以外で初となる決勝トーナメント進出を果たし、日本中が熱狂に包まれた2010年南アフリカ大会。ピッチ上で躍動していたのは、選手たちだけではなかった。

 準々決勝のオランダ対ブラジルという、大会屈指の好カード。この大一番の主審を任されたのが、日本の西村雄一氏だった。同大会ですでにグループリーグ3試合の笛を吹き、国際サッカー連盟(FIFA)の審判委員会からそのレフェリングが高く評価されたことで、強豪国同士がぶつかり合う重要局面の担当に抜擢されたのだ。

 試合は前半10分にFWロビーニョのゴールでブラジルが先制するも、後半に入るとオランダが猛反撃。後半8分と同23分にMFウェスレイ・スナイデルが立て続けにネットを揺らし、2-1と逆転に成功する。

 リードを許したブラジルは徐々にプレーの強度を上げ、ピッチ上はファウルが飛び交う荒れ模様の展開へと変貌していく。そして迎えた後半28分、決定的な事象が起きる。ブラジルMFフェリペ・メロが、倒れ込んだオランダFWアリエン・ロッベンを故意に踏みつけるという蛮行に及んだのだ。

 この瞬間、西村主審は一切の迷いなくフェリペ・メロに駆け寄り、レッドカードを提示。サッカー王国の大黒柱に対する一発退場劇だったが、その毅然とした態度と的確な判定にはブラジルの選手たちも抗議できず。一触即発だった試合の熱を見事にコントロールし、見事な試合運びで激闘を終わらせた。

 試合はそのままオランダが2-1で勝利し、敗れたブラジルはベスト8で姿を消した。

 重圧のかかる状況下で、私情や雰囲気に流されることなく的確に試合を裁いた西村主審に対し、欧州メディアは「冷静な正しい判断」とこぞって絶賛。普段は判定に対して辛口なブラジルメディアでさえ、ぐうの音も出ないほど完璧なジャッジだった。

 自身の信念を貫き通し、日本人レフェリーの質の高さを世界に見せつけた西村氏。その存在感はブラジル国民に強烈な印象を残し、4年後の2014年ブラジル大会で開幕戦(ブラジル対クロアチア)の主審を同氏が務めることが決まった際には、「ブラジル人に嫌な記憶を思い出させる因縁の主審」と現地メディアから恐れられるほどだった。

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