方向性を決める見極めの2連戦 解任騒動、滑り込み、何かが起きるW杯直前…今回はどうなる?

スコットランドとイングランドと対戦する日本代表【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
スコットランドとイングランドと対戦する日本代表【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

日本はスコットランド、イングランド代表と対戦へ

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)本番まで2か月あまり。日本代表にとって3月のスコットランド(グラスゴー)・イングランド(ロンドン)2連戦は、大会前最後の重要な活動の場だ。

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 ご存じの通り、今回はキャプテン・遠藤航(リバプール)を筆頭に、南野拓実(モナコ)、久保建英(レアル・ソシエダ)、板倉滉、冨安健洋(ともにアヤックス)といった主軸が揃って離脱中。そういう状況下でW杯出場国と真っ向勝負を演じるのは難しいことだが、現有戦力で何とか乗り切ると同時に、W杯を戦い抜けるメドをつけるしかない。

 過去のW杯直前の代表活動を見ても、非常に重要なターニングポイントになることが多々あった。

 前回の2022年カタールW杯を例に取ると、9月のドイツ遠征が第1次森保ジャパンのW杯での戦術、戦い方を決める非常に大きな機会になった。

 当時の日本代表は2018年ロシアW杯前からエースFWに君臨してきた大迫勇也(神戸)をどうするかという重要命題に直面していた。大迫が2022年に入ってケガで代表活動に参加できないことが多くなり、本大会切符を獲得した同年3月の最終予選・オーストラリア戦(シドニー)では浅野拓磨(マジョルカ)を最前線に据えることで乗り切った。

 しかしながら、森保監督はW杯本番でドイツ・スペインという強豪国と同組に入ったことを受け、相手に保持されながらも連動したプレスで応戦する戦い方にシフトすることを決断。それを具現化したのが、9月のアメリカ・エクアドル2連戦(デュッセルドルフ)だったのだ。

 そこで圧倒的存在感を発揮したのが、”鬼プレス”を武器とする前田大然(セルティック)。1トップに入った彼は守備のスイッチ役として献身的な仕事ぶりを披露。2列目の久保、鎌田大地(クリスタルパレス)、伊東純也(ゲンク)らと連動した守備でボールを奪いにいくスタイルが見事にハマり、アメリカに勝利。カタールに向けて希望が見えてきた。

 ある意味、この時点で「大迫と原口元気(ベールスホット)を外す」という最終決断が指揮官の中で下されたのだろう。やはり本大会直前の代表活動はW杯本番の戦い方を決定づける可能性が高い。今回もそうなる可能性が少なからずあるということだ。

 森保監督は攻守両方のバランスを取りながら、状況によっては守勢に回る展開も覚悟していると見られるが、その比率が低い方がいい。スコットランド・イングランド戦でどのくらい自分たちのサッカーを出せるかを見極めることができれば、自ずと先の方向性は見えてくるはずだ。

 一方で、当落線上の選手が急浮上するケースがあるのも、大会直前の代表活動。象徴的なのが、2014年ブラジルW杯に滑り込んだボランチ・青山敏弘(広島コーチ)である。

 彼は旧国立競技場のラストマッチだった同年3月のニュージーランド戦(旧国立)で好パフォーマンスを見せつけ、アルベルト・ザッケローニ監督の心を捉えたのだ。

 前年の東アジア選手権(現E-1選手権=韓国)優勝の立役者になった技巧派ボランチは、それまでA代表定着が叶っていなかった。だが、ちょうどこの時は長谷部誠(日本代表コーチ)が長期離脱中。ベテラン・遠藤保仁(G大阪コーチ)もパフォーマンス的に下降線を辿りつつあり、ザック監督も新たなボランチ要員を急いで見出す必要があった。

 青山と同じE-1優勝組の山口蛍(長崎)が一足先に存在感を高め、コアメンバーに定着しつつあったが、青山の場合はこのニュージーランド戦のインパクトによって、本大会メンバーに滑り込むことに成功した。

 結果的にブラジルでは第3戦・コロンビア戦(クイアバ)でスタメン起用され、惨敗して号泣する羽目にはなったが、この一戦が彼の命運を左右する重要ポイントになったのは紛れもない事実だ。

 そういう意味で、今回も「ケガの功名」が数多く出てきてほしいところ。ボランチに関して言えば、佐野海舟(マインツ)と藤田譲瑠チマ(ザンクトパウリ)という2025年から本格的に定着してきた2人がより主軸に近づく好機と言えるし、佐野航大(NECナイメンヘン)、塩貝健人(ヴォルフスブルク)ら2列目候補の若手にとっては、千載一遇のアピールのチャンスだ。

 彼らが「遠藤や南野がいなくても、世界の大舞台で十分戦える」という確証を示してくれれば、森保監督も安心感が強まるし、チームにも新たなエッセンスが加わることになる。そうすれば、オランダやチュニジアといった本大会同組の国々も日本の分析・対策がしづらくなる。新たな戦力は多ければ多いほどいい。20歳のFW後藤啓介(シントトロイデン)を含めて、最終登録メンバーに滑り込む人間が誰になるのかをしっかりと見極める必要がある。

 さしあたって、目を向けるべきなのが、28日のスコットランド戦だ。24日の公開練習では佐野航大と塩貝が2シャドウでプレー。佐野航大は三笘薫(ブライトン)とのコンビでスタートから行く可能性も大いにありそうだ。

「自分的にはゴールに絡むようなプレーをしたいので、シャドウがいい。チームではボランチもやってるので、どちらでもできますけど、シャドウの方がやりたいですね」と本人も意欲満々でピッチに立つだろう。そういうフレッシュな戦力がチームに活力を与えてくれれば理想的。

 もちろん、第2次森保ジャパンで控えに甘んじている小川航基(NECナイメンヘン)や前田大然、田中碧(リーズ)、橋岡大樹(ヘント)といった準主力の奮起も求められるところだ。

 2018年ロシアW杯前の3月シリーズはマリとウクライナ両国に結果が出ず、チーム内が内部分裂に近い状態になり、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督解任が加速するといった展開になったが、今回は仮に2連敗したとしても森保監督が更迭されるような最悪の事態はとは起こらないだろう。ただ、チームに暗雲が立ち込めることにはなりかねない。

 それを回避するためにも、2連戦の結果にこだわるべき。強豪国と続けて善戦し、そのうえで絶対的主力以外の台頭が数多く見られるような形が一番いい。そうなることを願いつつ、まずはグラスゴー・ハムデンパークの完全アウェー状況下で行われるスコットランド戦の動向を冷静に注視していくべきである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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