伊東純也が導き出した「突破しない」 32歳で変化受け入れ…再出発の地で迎える“最高潮”

伊東純也は3年ぶりにゲンクに復帰した
世界を切り裂く右サイドの韋駄天——。ベルギー1部ゲンクに所属する日本代表MF伊東純也は、32歳となった今も輝きが増す。ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かり、数々の試練を乗り越えてきた伊東がいま見つめる景色とは。不器用ながらも実直な言葉に宿る、エースの矜持。「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じ、原点から北中米ワールドカップ(W杯)に向けた未来まで語った。最終回は代名詞のスピードに対する意識の変化について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の3回目)
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かつての「家」に帰ってきた安心感がある。あいにくの曇り空でものどかな空気が流れる。ゲンクの街はすべてが伊東にとっては心地よい。「冬は寒いですね、雨もよく降りますし。ゲンクは駅の近くが全てで、ショッピングモールの隣の池の周りをよく歩いたりしています。ムール貝とか美味しいですね」。昨夏、3年ぶりに戻ってきた地の変わらぬ姿に微笑んだ。
2019年1月に加入した当時は25歳。欧州でのキャリアをゼロから切り拓こうと野心溢れる若者だった。それから7年以上の月日が流れ、今の伊東には日本代表のエースという肩書きと、確固たる実績がある。
「W杯のためにコンディションを最高潮に持っていきたい。(決勝トーナメント進出を決めた)UEFAヨーロッパリーグも戦える。入った当初よりは、やっぱりリスペクトを相当感じますね。ある程度結果を残していたという部分で、歓迎されているな、と。25歳の時は本当に誰も自分のことを知らなかったので、ここから結果を出していくしかないなという感じだったので」
スタンスは変わらない。ゲンクの本拠地セゲカ・アレーナには“特訓用”の裏山がある。「山、走らされます(笑)。オフシーズンは特に」。過酷なトレーニングを振り返り、思わず苦笑い。ただ、すべては32歳という年齢を言い訳にせず、最高の自分であり続けるためだ。

辿り着いた答え「突破しないこと」
いつしか稲妻と呼ばれるようになった。爆発的なスピードを誇り、30代に突入すると、多くのスピードスターがプレースタイルの変更を余儀なくされる。しかし、伊東の輝きは陰るどころかより鋭さを増しているようにすら見える。
その理由の1つが意識の変化。ゲンクでも、日本代表でも相手DFからの警戒は年々強まるなか、スピードを保ちながら、突破するにはどうしたら良いのか。辿り着いた“答え”は「突破しないこと」を引き出しの1つにすることだった。
「突破できるタイミングだったらするのはもちろんですけど、ゴールに直結するように(パスを)出せるなら出す。クロス、ドリブルの両方できれば、突破もやりやすくなる。キャリアを重ねるにつれてドリブルで抜く回数より、ゴールに絡む回数の方が多くなったとは思いますね」
北中米W杯最終予選、8試合に出場して1ゴール7アシスト。前回の最終予選は9試合で4ゴール1アシストと得点でチームを救った。アシスト数の増加は一目瞭然。「前はゴールが多すぎた。こっちが本来のプレースタイルですね」。念頭にあるゴールの意識がクロスとドリブル、両方を武器として磨かせた。
変化を受け入れ、適応していくことが強みになっている。周囲の喧騒をどこ吹く風と受け流すマイペースさは、伊東の大きな魅力。衰えない秘訣を「寝ることですね(笑)」と即答するのは実に“らしい”。だが、そんな鉄人も直近では負傷が続いた。昨夏に負った足首の怪我に加え、復帰後に昨年10月の国際親善試合ブラジル戦(3-2)で痛め、さらに同箇所を再発……。昨年末まで2か月半の長期離脱を余儀なくされたことは自身の肉体を見つめ直す転換点となった。
ゲンクは単なる“再出発”の場ではない
「30歳を過ぎても向き合い方ややっていることは変わっていない。ただ、最近は怪我が続いたので、練習後のケアは意識して長くやるようにしていますね。午後にはストレッチや可動域を広げるモビリティーの動きを入れるようにしています」
元々怪我が少なく「柏時代には休んだ記憶がほとんどない」というほどの鉄人ぶりを誇っていた。柏レイソルに在籍した3年間のリーグ戦ではなんと全102試合中94試合でスタメン出場、7試合で途中出場。負傷により欠場したのはわずか1試合だけだった。
痛みを感じてもうまく付き合ってきたタイプ。それでも、今は自分の体と丁寧に対話を繰り返すようになった。冬のベルギーは寒さが厳しく、雨も多い。オフの時間は自宅でソファーに寝そべり、テレビを見たりゲームをしたり。リラックスする“静”の時間を大切にすることで、ピッチ上での“動”を支えている。
怖さが増す選手へ。自らももう一段階上のレベルアップを果たした。32歳の韋駄天にとって、ゲンクは単なる“再出発の地”ではない。残り100日を切ったW杯へ向けて、クロス、スピード、ドリブル……武器を研ぎ澄ませる場。「昨年の9月、10月は代表でも結果を残せた。ここからはW杯まで自チームで結果を出すことが大事になってくる。特徴をしっかり出していきたい」。またあの大舞台に帰る。深みを増した思考と進化を止めることのない推進力を持って、集大成の北中米へ、さらなる加速を続けていく。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)





















