伊東純也の少年時代 2人の弟の存在「無理やり連れてってたり」…道を拓いた一つのゴール

伊東純也は横須賀市でのびのび育った
世界を切り裂く右サイドの韋駄天。ベルギー1部KRCゲンクに所属する日本代表MF伊東純也は、32歳となった今も輝きが増す。ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かり、数々の試練を乗り越えてきた伊東がいま見つめる景色とは。不器用ながらも実直な言葉に宿る、エースの矜持。「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じ、原点から北中米ワールドカップ(W杯)に向けた未来まで語った。第2回は家族と支え合って築き上げた少年時代について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の2回目)
【PR】ABEMA de DAZN、2/6開幕『明治安田Jリーグ百年構想リーグ』全試合生配信!毎節厳選6試合は無料!
◇ ◇ ◇
稲妻のようなスピード。伊東の代名詞だ。その原点は理論ではなく“野生”に近い場所で育まれた。神奈川県横須賀市。海と山に囲まれた地で、少年時代を過ごした。特別なトレーニングではない。ただ、すぐそばに砂浜と坂道があった。
「実家は本当に海と山が近くて。トレーニング的なことは分かっていなかったですけど、きついことをやればいいだろうという考えでしたね。砂浜ダッシュもきついし、坂道ダッシュもきつい。一緒に弟を連れて、そういう自然の中を走ったりしていました」
2歳下と6歳下の弟。少年団のコーチを務めた父は時に厳しく、母は静かに見守ってくれた伊東家でのびのびと育った。「トレーニングに行こう」。思い立ったら弟を誘った。「嫌々連れていったりもしていましたね。家から出たくない弟を無理やり(笑)。2歳下の弟は大学生になるまでよく一緒にボールを蹴りました。喧嘩とか全くせず、今もいい関係」。理屈抜きの反復こそが、今の爆発的な1歩目の礎となった。
そんな環境の中で、プロへの意識が明確になったのは大学に入ってから。目の前のことに没頭し続けた結果、道が拓けた。伊東らしく、マイペースに実直に。どんな歩みも今につながった。
小学6年生の時。横浜F・マリノスジュニアユースのセレクションを受けた。最終選考に残ったが、結果は不合格。だが、伊東にとっては挫折ではなかった。

自身を信じて選んだ進学先「家から通えるから」
「セレクションは免除みたいなのがあって行ったんですけど、正直、あんまり受かりたくなかったというのがあるんですよね。知り合いがいなかったので(笑)。もちろん受かったら行くつもりだったので、真面目にはやりました。結局は落ちましたね……。落ちた悔しさはありましたけど、落ちても次に行くクラブで倒してやろうぐらいに思っていました」
選択全てにストーリーがある。高校進学時も「サッカーがある程度強くて、家から通えるから」という理由で地元の逗葉高校を選んだ。国体メンバーに選出された時も、早生まれで1学年下の招集だったことから「1個下なんて全員知らない」という理由で行かなかった。でも、それは自らが選んだ道。周囲の評価や世間のレールに流されず、自分の直感を信じた。独自の感性が伊東を築き上げた。
だからこそ訪れた転機。高校3年時の全国総体の予選で逗葉高校は強豪・桐光学園高校と対戦した。チームは1-6と大敗。だが、伊東が挙げた唯一のゴールが、桐光の選手を視察に来ていた大学スカウトの目に留まった。神奈川大学への道が拓けた。
「まさかプロになれるとは思っていなかった。大学からですね、プロをちゃんと意識したのは」
少し開いたプロへの扉。大学1年の時、当時4年生だったDF佐々木翔(現・サンフレッチェ広島)を見に来ていたヴァンフォーレ甲府の森敦スカウトが“速さ”に度肝を抜かれた。そこから4年間追い続けられた。大学4年時に特別指定選手になり、念願のオファー。練習参加を経てプロの門を叩いた。
プロのスタートは甲府から「通用する」
「スカウトと何回かご飯も行って『オファーするわ』と言われた。すぐ『はい』と言って。(甲府では)最初の3試合くらい出られなくて『なんで使わないんだろう』と思っていました。監督が変わって試合に出られるようになって、プロでも全然やれるなと自信をつかめましたし、J1でも通用すると甲府で試合に出ることで思えましたね」
無名の高校生から、大学を経てプロへ。1年目から30試合に出場し、翌年には柏レイソルへ移籍した。2017年には日本代表に初選出。階段を駆け上がり続け、森保ジャパンの絶対的な存在になった。
「自分でも今ここにいることは想像できなかったですし、周りも絶対思っていなかった。目の前のことに集中してやってきたなかで、いい選択をして、人にもチームにも恵まれたなと思います」
地元・横須賀でひたすらに走っていた少年が積み上げた歴史。あの日、砂浜を駆け抜けていた少年は、いま、日本を背負い、世界の頂を見据える場所まで辿り着いた。32歳、韋駄天の物語はまだここから。その加速は止められない――。
(第3回に続く)
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)













