ジョーカー起用は「苦手で嫌」 伊東純也が克服した夜…“ラスト”北中米W杯まで「譲る気はない」

北中米W杯は「リベンジ」…4年越しの秘めた思い
北中米ワールドカップ(W杯)まであと100日。ベルギー1部ゲンクに所属する日本代表MF伊東純也は、32歳となった今も輝きが増す。ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かり、数々の試練を乗り越えてきた伊東がいま見つめる景色とは——。「FOOTBALL ZONE」のインタビューで、世界を切り裂く右サイドの韋駄天が、不器用ながらも実直な言葉に宿る、エースの矜持に迫った。原点からW杯に向けた未来まで。第1回は「リベンジ」をテーマに掲げる大舞台について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の1回目)
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ブリュッセルから電車に揺られて東に1時間半。人口約6万6000人、炭鉱の街がゲンクだ。「池とかこういう(森のような)ところが至る所にあるので、よく散歩をしますね」。周りは木々に囲まれ、野生の鹿がこちらを見た。「あ、遠くに見えますね! 動物もよくいます」。自然豊かな街で北中米W杯に向けた欧州での戦いを日々繰り広げている。
何度も何度も口にした。「W杯に向けて」「W杯では」「W杯に」……。自分に言い聞かせるよう、北中米の地で全てを出し切る覚悟が滲み出ていた。
2022年、カタールW杯。日本中を熱狂させた冬、伊東は間違いなく主役の1人だった。全4試合のうち3試合でフル出場。第2戦のコスタリカ戦でも途中出場で23分間プレーした。史上初のベスト8入りを懸けた決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦。延長120分間の死闘の末に訪れたPK戦をピッチの上で、ただ見つめることしかできなかった。
「体力は大丈夫だったんですけど、あの試合、肉離れしていたんです。股関節のところ。PK戦になって、時間が経つにつれてどんどん痛みが強くなってきて……。『あ、これ自分は蹴れないな』と思いながらやっていた。もし次、W杯の舞台でPKがあったら、その時はしっかり蹴りたい。めちゃくちゃ得意という訳ではないけど、大舞台は気持ちと経験が必要だと思うので」

北中米までの道中…立ちはだかった壁
敗退が決定した瞬間、仲間たちは芝に膝をつき、涙に暮れた。伊東はただ前を見つめ、泣くことはなかった。「悔しさは内に秘めていますね。あんまり嬉しくても悔しくても泣かない。感情を出すのが得意じゃないので」。だが、もちろん思いが薄いわけではない。むしろ、言葉にできないほどの渇望が、北中米へと奮い立たせた。
「本当に惜しいところまでいって負けた。今はみんな欧州で戦えるようになってきて対等にやれる部分はわかっている。前回W杯を経験したメンバーがほとんどあまり変わらずに残っているので、前回の悔しさを晴らせるチャンスがある。そこはしっかり超えたい」
カタールW杯は29歳だった。「もう最後(のW杯)かもなと思ってやっていました」。攻撃的なアタッカーは競争が激しい。それでも、その存在感は誰もが認めるところ。「やっていくにつれて『まだまだできるな』と思ったので、まだ若いやつには負けないように頑張ろう、と思っています」。何より、高め合える強力なライバルとの共存が伊東を突き動かした。
第2次森保ジャパンがスタートし、日本代表の層はより厚くなった。久保建英や堂安律は成熟度を増し、右サイドのポジション争いはさらに熾烈になった。第2期では久保に並んでチームトップタイの17アシスト。だが、スタメン、途中出場ともに12試合と第1期に比べてベンチスタートが増えた。「もちろん、最初から出たいという思いは持っている」。久保や堂安というライバル、3バック主体の戦術に変更され、ジョーカー起用の増加……。「途中出場はずっと苦手で嫌だった」。思いを巡らせる伊東に森保監督は声を掛けた。
「何回か話はしました。自分の役割が少し変わってくるのはしょうがないかなと思っていますし、スタメンでも後半から出ても結果を出せるようにというのは変わらない。それが実際に(17アシストという)結果に結びついているんじゃないかな、と。まだ譲る気はない。ここもう7、8年ぐらい律やタケ(久保)と強いライバルがいて負けないようにやらなきゃというのはありますし、切磋琢磨してやってきた。もっと結果を出して使わざるを得ないところまでいかなきゃいけない。スタメンでもベンチでも対応できるようなメンタルや身体を作っていかなくちゃいけない」

ブラジル戦でMVP級ハイパフォーマンス「違和感なく入れた」
体現したのが昨年10月のブラジル戦。途中出場で2アシストし、0-2からの大逆転勝利に貢献した。この時、久保と交代だった伊東はそのままシャドーでプレー。これまでは伊東がウイングバック、堂安がシャドーとポジションを入れ替えることが多かったが、予想外の指示に完全適応した。
「ウイングバックでイメージしていたので『あ!シャドーか!』とは思いました。でも、律とのコンビネーションで裏を抜けてクロスまでいけて。結果、点に繋がって良かった。途中出場の時は試合の流れを見てイメージしてやっていますけど、シャドーで入ると思っていなくても元々練習でもやっていたし、違和感なく入れました」
これが伊東の真骨頂。“苦手”を乗り越え、世界の脅威になった。北中米W杯まであと100日。今月、伊東は33歳になる。次のW杯で掲げるテーマがある。
「個人的には、リベンジであるかなと思っています。多分最後だと思うので、しっかりやりたい。小さい頃はただ見ているだけのW杯だった。まさか自分が出るとは思っていなかった。今は現実的にもっと上に行きたい、日本を上にしてやりたいと思っています。前回のW杯でできなかったことをやりたい。優勝を目指してやるからには、頑張らないと。自分はまだW杯でゴールを取っていない。次はゴールを取って、チームを勝利に導きたい」
何度も「W杯」を繰り返した訳。“ラストチャンス”と位置付け、全てを捧げる覚悟を示しているから。最高潮の“フィナーレ”を飾るため、伊東純也は今日もまた、青いピッチを真っ直ぐに、誰よりも速く駆け抜けていく。
(第2回につづく)
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)






















