新監督が求める「あなたじゃないとダメなのか」 J1復帰へ…若返った名門に必要な“再構成”

ジュビロ磐田は26-27シーズンに向けて戦術の浸透と結果を求めていく【写真:徳原隆元】
ジュビロ磐田は26-27シーズンに向けて戦術の浸透と結果を求めていく【写真:徳原隆元】

磐田は今季から志垣良コーチが監督に昇格した

 ジュビロ磐田は2026年の新シーズンに向けた新体制発表を行なった。いわゆる“秋春制”へのシーズン移行に備えて、まずは半年間の百年構想リーグに臨むが、J1復帰を目指す磐田にとって1年半の戦いを想定する意味合いが強い。

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 百年構想リーグにおいて磐田はJ2・J3の混合戦を4つのブロックに分けた地域リーグ・ラウンドで、EAST Bに組み込まれている。北海道コンサドーレ札幌、福島ユナイテッド、いわきFC、RB大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府、松本山雅FC、AC長野パルセイロ、藤枝MYFC、FC岐阜とリーグ戦を行い、5月の終わりから6月の上旬にかけて、プレーオフ・ラウンドを戦う。

 コーチからの昇格という形で、新たに磐田を率いる志垣良監督は百年構想リーグに関して「昇降格が無いから勝敗は二の次だということには絶対にならないと思っています。プロである以上、勝敗にこだわり結果を求めてやっていく」と主張する。その中で若手を含めた新戦力の起用や、新たな挑戦の方針も明らかにした。

 新戦力は下部組織からの昇格選手、高卒、大卒の選手を除けば、横浜FCからセンターバックの山﨑浩介を獲得しただけだが、名古屋グランパスから期限付き移籍で、昨年から加入していたサイドアタッカーの倍井謙が、レンタル期間を1年延長という形で残留。サンフレッチェ広島から昨夏に、期限付き移籍していたMF井上潮音が、完全移籍での加入は大きい。井上は「自分の年齢(28歳)を考えると、1年半J2というのは正直、迷ったところではあったんですけど、自分の力を100%出して、1年半後にJ1のピッチで、自分とこのチームが躍動していることを思い描いて決断しました」と語る。

 また10得点5アシストを記録したFWマテウス・ペイショットや中盤で獅子奮迅の働きを見せたMF金子大毅など、チームを支えてきた主力の大半が残った。さらにアルビレックス新潟へ期限付き移籍していたMF植村洋斗の復帰も心強い。昨シーズンの昇格プレーオフ準決勝で負傷したDF江﨑巧朗が復帰にしばらくかかる点は、百年構想リーグを戦う上での懸念材料ではあるが、新戦力の山﨑や2年目となるDFヤン・ファンデンベルフ、生え抜きのDF森岡陸らの切磋琢磨が、守備のベースアップにつながるはずだ。

 藤田俊哉スポーツダイレクターは「昨シーズンの我々のフットボールは、(当時のジョン・ハッチンソン監督のもと)アタッキングフットボールでスタートしました。攻撃面での成果というのは、ある一定の得点を重ねることが出来た一方で、守備面の課題が多く残り、守備面の弱さが最後の成績、結果に現れてしまった非常に悔しいシーズンとなりました」と語る。リーグ戦の残り7試合という段階でチームを引き継いだ安間貴義前監督は、逆転昇格のためにプラグマティック(実践的)な戦い方に舵を切った。

 ここから百年構想リーグ、昇格がかかるJ2の2026-27シーズンで持続性のあるサッカーをしていくために、戦術の再構築は不可避だが、パフォーマンスの波が大きかった昨年の反省材料を生かしていく必要がある。志垣監督は攻撃志向を留めることなく、守備面を改善していくというテーマを課されている。ただし、志垣監督は守備と攻撃を分断して捉えてはおらず、いい攻撃がいい守備につながるという考えをベースに、戦術のベースアップを進めていくようだ。

「例えばビルドアップでも、後ろで引っかけられるといい守備はできないと思いますし、だからこそ高い位置で守備をしたかったら、いい攻撃で終わらないといけないと思います。志垣は守備だろ、という言われ方をして。そんなつもりはないんです」

 そう語る志垣監督の戦術を評価するポイントになるのが、ハードワークの考え方だ。例えば前からボールを奪う守備でいえば、ボールホルダーに激しくアタックしていくことばかりが評価されがちだ。とはいえボールホルダーと受け手に対して、いかに攻撃の選択を限定しながらミスや判断の迷いを誘って、チームとしてボールを奪うかが大事になる。ここをロジカルに整理するほど、守備のために長い距離を走らされるロスも減り、基本的な攻撃ポジションも上げられる。「頑張れと言っても、選手は頑張りますけど、それが効果的なのか、効率的なのかで。どうやったら、より効果的にボールを奪えるのか、効率的にゴールに迫れるのか」をチームに共有させていきたいというのが、志垣監督の流儀だ。 

 そうした戦術構築をしながら結果も求めていく百年構想リーグになるが、競争が大きなテーマになることは間違いない。最年長は42歳のゴールキーパーの川島永嗣だが、平均年齢は26歳前後まで下がっており、ここ数年の中でもかなり若いチームに生まれ変わったことがポジティブな材料だろう。全国高校サッカー選手権で、ベスト4に勝ち残った流通経済大柏のDF増田大空など、新加入選手はもちろん、現在サウジアラビアでU-23アジア杯を戦っているMF川合徳孟、大卒2年目となるMF角昂志郎など、すでに主力としての活躍が期待される選手もいる。 

 磐田はシーズン移行に合わせてスタートするU-21リーグへの参戦を表明しているが、藤田SDはセカンドチームというより、育成年代のトップカテゴリーとして考えていることを明かしている。もちろん高卒ルーキーの増田やユースから昇格したDF甲斐佑蒼やMF石塚蓮歩は夏からU-21の試合にも出られるが、彼らに期待されるのは昨年の川合のように、どんどんトップチームの競争に食い込んで、ブレイクしていくことだろう。それと同時に、プレミアリーグU-18に昇格したユースを改めて安間監督が率いることになり、そこからの突き上げにも注目したい。昨シーズンに二種登録された17歳のMF西岡健斗など、さらなる台頭がU-21やトップチームの活性化につながっていくはずだ。

 志垣監督は選手起用の基準に関して「(練習から)競争して、勝ち点3を取れる選手をピッチに送り出していく」と強調した。日頃のトレーニングで求められるのは「なんで、あなたじゃないとダメなのか」を選手それぞれが表現していくこと。そこから試合に勝つために、選手の価値を見極めてスタメン、ベンチメンバーを選んでいくが、いざ試合になったらチームのために戦える集団になっていけるか。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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