定位置になかった”マグネット”「あれ?」 大学2年でJ名門からオファー…転機となったコンバート

横浜FMへ前倒しでの加入が決まった関富貫太【写真:安藤隆人】
横浜FMへ前倒しでの加入が決まった関富貫太【写真:安藤隆人】

関富貫太は前目のポジションからSBに変更

 2025年シーズン。残留争いを演じた横浜F・マリノスにおいて、リーグ戦終盤に現れた1人の特別指定選手が重要な働きを見せて残留を手繰り寄せた。桐蔭横浜大2年生の左サイドバック・関富貫太。独占インタビュー第3回は高校3年生の夏に藤田優人コーチから突然ボードで知らされた左サイドバックへのコンバートから始まった新たなサッカー人生について。(取材・文=安藤隆人/全4回の3回目)

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 柏レイソルU-18ではFW、右サイドハーフなどをこなしていたが、自分の思いをぶちまけた数日後の練習で、事前に紅白戦の配置などが並べられたボードを見ると、『関富』と書かれたマグネットが左サイドバックのところに置かれていた。

「最初は『あれ?』とは思ったのですが、特に理由などは聞きませんでした。ちょうど『1からやろう』と意識が変わったところだったので、『新しいチャレンジができるな。やってみよう』と思いました」

 違和感もなく左サイドバックのポジションに入ると、今まで見えなかった景色が広がった。FWやサイドハーフをやっている時よりもピッチ全体が見渡せる。ボールを前向きに受けることが多く、より多くの情報を掴んだ状態でプレー選択をすることができる。

 コンバート前から好きだったスルーパスを出したり、パスで関わっていくプレーだったりがサイドバックでもできる。それどころかよりいろんな情報を持った状態できる。すぐにサイドバックの面白さに気づき、どんどん思考しながら『自分らしいサイドバック像』を築き上げて行った。

 彼の成長に比例するかのようにチームは調子を取り戻していく。プレミアEAST後期、チームは8勝2敗1分の成績を収めて4位でフィニッシュ。左サイドバックの10番として躍動して高校3年間を終えた。

 桐蔭横浜大学に入学をすると、最初の半年はトップで出番はなく、関東大学サッカーリーグ1部後期の第14節・流通経済大戦でベンチ入りし、途中出場でリーグデビューを飾ると、その4日後の明治大戦(第12節延期分)でスタメンデビューを果たした。

 この試合、私は取材に行っていた。左サイドハーフとして出場した彼は、ボールを積極的に受けてテンポの良いパス出しやワンツーなどの関わりで、ビルドアップや突破に関わる一方で、スピードを生かしたスプリントでサイドを突破したり、プレスバックに行ったりする姿を見て、高校時代よりスケールアップをしていると感じた。

「自分はそこまでスピードでどんどん仕掛けていくタイプではなかったのですが、大学に入って強度やスピード感が上がった中で、自分ももっと走らないとやっていけないと思った」と、しっかりと大学サッカーにも素早くアジャストをして進化を遂げたのだった。

 そして年が明けて2025年、関東1部開幕からスタメンの座をガッチリと掴み、前期全試合にフル出場を果たした。

 圧倒的な走力とドリブル、パス、ポジショニングを始めとしたオフ・ザ・ボールの質の高さを見せつけるレフティーの左サイドバックをプロのスカウトが見逃すはずがなかった。

 横浜F・マリノスなど複数のJクラブが動き出す中、7月にはロス五輪をターゲットにするU-22日本代表のウズベキスタン遠征のメンバーに名を連ね、自身初の年代別日本代表に選出された。そして早くも横浜FMから正式オファーが届いた。

「もう少し待って自分の視野や選択肢を広げるという道もあったのですが、マリノスというハイレベルな選手が揃う環境に大学2年生の段階で身を置けて、特別指定で試合に出られるチャンスがあることに魅了を感じ、決めてチャンスを掴みたいという思いが強くなった」と、2028シーズンからの加入という形で横浜FMのオファーを受ける決断をした。

 ここからは大学サッカーとJリーグ、U-23日本代表の3足の草鞋を履く多忙な日々が始まった。

 関東1部後期が始まる2週間前にU-23日本代表としてAFC U23アジアカップ予選(ミャンマー)に出場をし、帰国後すぐに横浜FMに帯同。9月13日のJ1リーグ第29節・川崎フロンターレとの『神奈川ダービー』でベンチ入りとJ1デビューを果たし、翌第30節のアビスパ福岡戦で初スタメンを飾った。

 福岡戦から中3日の関東1部・第13節の国士舘大戦でスタメンフル出場。その翌週にはクラブに戻って、第33節の古巣・柏レイソル戦で初のフル出場を果たした。

 それ以降は桐蔭横浜大で最終節まで戦い抜いて1部残留とインカレ出場権獲得に貢献をすると、再び横浜FMに合流をして、第37節のセレッソ大阪戦、最終戦の鹿島アントラーズ戦と左サイドバックとしてスタメン出場。そして大学に戻ってインカレに出場をした。

「ここまでは予想していませんでした」と口にしたように、2025年はまさにフル稼働した激動のシーズンだった―。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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