津波注意報で中断…猛暑2日間で5失点「何もできなかった」 プロ注目10番が示した違い

昌平の山口豪太「ここまでチームとして何もできなかったことはなかった」
7月26日から福島県で開催されているインターハイ男子サッカー。全国の予選を突破した51校が真夏の王者の栄冠をかけて激しく火花を散らすこの大会で、躍動を見せながらも、志半ばで「敗れし者たち」をピックアップしていく。
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第14回は準々決勝において、大津との“プレミアリーグ対決”に0-5で敗れた昌平のプロ注目MF山口豪太について。プレミア対決でショッキングな大敗を喫したが、この試合で10番が見せた人間的な成長とは。
「完全に大津が個でもチームでも上回った結果だと思います。切り替えの局面で、相手はすぐに反応して即時奪還をしたり、次のサポートの早さや正確性だったり、走る距離も大津の方が圧倒的にあって、運動量、技術面も全て完敗でした」
試合後、山口は唇を噛みしめながら、毅然とした態度で質問に答え、この試合をこう評した。確かにこの試合で昌平の流れるようなパスワークや、連動した守備で奪ってからの個性を生かした分厚い攻撃は影を潜め、大津の攻撃の前に押し込まれる場面が多かった。
前半で2点のリードを許すと、津波注意報のために中断し、翌日に再開された後半においても流れを掴むことができず、後半14分に3点目を奪われると、同アディショナルタイムに立て続けに失点をし、大量5点を奪われた。
シュート本数は昌平4本に対し、大津は17本という数字を見ても、「5失点をしたことはプレミアでもありましたが、ここまでチームとして何もできなかったことはなかった」(山口)と、ショッキングな敗戦であった。
だが、そのなかで最後まで諦めない姿勢を見せたのが山口だった。左利きの独特のボールタッチとボディーバランスを駆使して、相手の逆をとるドリブルと正確なクロスやラストパスでチャンスメークができる世代屈指のMFとして、彼は昌平の下部組織にあたるラヴィーダ時代から注目を集めていた。
中学3年生で高校トップチームの一員としてプリンスリーグ関東でプレーし、高校1年生になると入学直後から出番を掴んできた。
だが、強烈な個の技術を持つ一方で、プレーに波があり、1年生のときにスタメンを外されることもあった。昨年はインターハイ優勝に貢献するも、選手権では埼玉県予選準々決勝でまさかの敗戦。歓喜と落胆を経験していくなか、彼は精神的にどんどん逞しくなっていった。
今年、顔つきは精悍になり、フィジカルも明らかについた。そして大津との試合で彼が見せたのは、「何がなんでもボールを1つでも前に進めていく」という強い意志だった。
失点を重ね、猛暑のなかでの連戦と、周りの体力と気力が削がれていくなかで、彼はボールを持つとただひたすらドリブルで前に運んでいき、奪われてもすぐに守備に回って激しい球際でボールを奪い返しに行くなど、鬼気迫る表情でとてつもないボールに対しての執着心を見せていた。
「僕はとにかくまず1点を取るというところと、どんなに差がついても、ここで1点を奪って、もう1点という流れになれば、この試合の先にある自分たちの未来にもつながると思った。最後まで全員で戦うことが、自分たちの成長にもつながると思ったので、最後まで絶対に諦めてはいけないと思っていました」
徐々に敗戦濃厚となっていくが、彼の集中力はより研ぎ澄まされていった。終盤にドリブルで2、3人を引きずるように敵陣に侵入していくと、ラインを割りそうになったボールをスライディングで引き戻して、もう一度ドリブルを開始するなど、まさにプレーでチームを鼓舞していた。
苦しいとき、うまくいかないときに何ができるか、どう立ち振る舞えるか。まさに10番にふさわしい存在感を放った山口。
「2連覇は狙っていましたが、これで途絶えたので切り替えて、プレミアでチームとして成長をして勝ちを重ねて、冬の選手権で王者になれるように1から努力したい。僕もフィニッシュの精度をもっと上げないと、プレミアや選手権で勝てないし、上のステージでも通用しないと思うので、もっと貪欲に取り組んでいきたいです」
進路はプロ一本と決めている。実際に彼のもとには複数のJ1クラブからオファーが届いている。その先のプロのステージで輝くために、何より昌平の10番として周りを鼓舞し、試合を動かすより大きな存在となるために。これからも強い責任感を持って、心身ともに成長をし続ける。
(FOOTBALL ZONE編集部)



















