最終戦のロペス「心が痛く、寂しいです」 ダービーで値千金の決勝弾→涙の別れ「降格してはいけない」

ロペスにとって横浜FMでのラストマッチに
在籍した3年半で2度のリーグ得点王に輝き、これまでリーグ戦通算118試合で58得点を挙げてきたストライカーは、横浜ダービーが横浜F・マリノスの選手として臨む最後の90分になることを理解して、7月5日のJ1リーグ第23節・横浜FC戦に臨んでいた。
Jリーグのオリジナル10であり、過去に一度もJ2に降格を経験したことがない、国内屈指の名門・横浜FMだが、今シーズンは23節を終えて最下位に低迷している。一昨シーズン、昨シーズンと2シーズン連続で得点王に輝いていたFWアンデルソン・ロペスも、今シーズンは開幕戦で1ゴールを挙げたのみとチームと同じく低空飛行が続いてきた。
迎えた横浜FCとの横浜ダービー。試合前にはサポーターが三ツ沢公園で禁止されている発煙筒を焚き、入場ができないという異例の状況で迎えた。横浜FCに試合の主導権を握られた前半をスコアレスで耐え抜くと、後半33分にチャンスが来る。エリア内でMF渡辺皓太が倒されてPKを獲得。キャプテンのMF喜田拓也にボールを託されたロペスは、いまはJリーグ名物ともなった独特のタメる助走から左足を振りぬき、ボールをゴール左隅に突き刺した。「今日もいつも通り、冷静さを保って自分に集中することができました。ただ、いつもよりプレッシャーはありました。相手のサポーターの目の前で、ブーイングもありましたし、自分も長い間得点を決めていない。チームもこの(最下位という)状況で、本当に緊迫した雰囲気でした。それでもいつもどおり自分を信じて、集中して、冷静して得点できてよかったです」と、振り返った。このゴールが決勝点となり、横浜FMは5試合ぶりの勝利を手にしている。
ゴールを決めた後、逆サイドの横浜FMのサポーターが待つゴール裏へ走って喜んだロペスは、試合後もファン・サポーターと喜びを分かち合っていた。「ダービー、プラス横浜FCとのアウェーゲーム、勝てていなかったアウェーの地で歴史的な勝利だったと思います。僕のこのチームでプレーする最後の試合で、こういった形で得点で勝利に貢献できたこと、本当に神様のおかげだと思いますし、幸せな、感動する試合でした」と、ロペスは試合後のミックスゾーンで、横浜FMの選手として戦った最後の90分を振り返った。
「マリノスは僕のすべての夢を叶えてくれたチームです。Jリーグのタイトルも、得点王も取れました。この3年半は幸せな瞬間のほうが多かったです」というロペスは、「本当に去りたくはないですし、去ることは心が痛く、寂しいです。ただ決断をしたので行かなければいけません。僕はどこに行っても横浜FMを応援していますし、これだけのチームが降格してはいけない。選手たちは今までも、今もピッチで表現しているので、この状況から脱してくれることを信じています」と、クラブを離れることの辛さを口にし、J1残留を心から願いチームメイトに託した。
試合後には正式に海外移籍を前提にクラブを離れることが発表されたロペスは、「僕は去りますが、このクラブの歴史に名を残せたと思います。やるべきことはすべてやったと思います。横浜FMだけでなく、日本で歩んだすべてのクラブで、僕も、僕も家族も幸せでした。またいつか日本に帰ってくることができたら、とても嬉しく思います」と言い、名残惜しそうにスタジアムを後にした。
(河合 拓 / Taku Kawai)