Jスカウト熱視線も「高卒プロは通用しない」 大学サッカー界屈指のCBが選んだ“あえて”進学の訳

流通経済大2年DF塩川桜道、空中戦と対人の強さが光るU-20日本代表
夏の「大学サッカーの全国大会」とも言える総理大臣杯の関東代表を決めるアミノバイタルカップ。関東大学サッカーリーグ1部、2部、3部、さらには都県リーグの垣根を超えた一発勝負のトーナメントでは、毎年のように数々のドラマが生まれる。プロ内定選手、Jクラブが争奪戦を繰り広げる逸材、そして彗星のように現れた新星が輝きを放つ。今大会も6月5日から29日にかけて開催され、注目を集めた選手や印象深いエピソードを紹介していきたい。
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第3回目はU-20日本代表として今年2月のU-20アジアカップ、6月のモーリスレベロトーナメントに2年連続で参加した大学サッカー界屈指のセンターバック(CB)である塩川桜道についてだ。
186センチ、80キロのサイズとフィジカルを持ち、圧倒的な空中戦と対人の強さ、長いストライドからのスプリントを生かしたカバーリング。そのスケールは大学2年生とは思えないものがある。
流通経済大柏時代、高校3年時に急激に伸びた。要因は「自信」だった。能力は昔からずば抜けたものがあったが、CBに必要な「佇まい」が十分に備わっていなかった。ミスをして萎縮してしまうこともあった彼が、夏を境にどんどん自信をつけ、あっという間にU-18日本代表、日本高校選抜と駆け上がっていった。
高卒プロの可能性もあったが、「僕の中では高卒プロの選択肢はありませんでした。フィジカル的にも技術的にも高卒の段階でプロに行っても通用しないし、大学でもう一度自分とサッカーをしっかりと見つめ直したかった。一から鍛えたいと思って進学しました」と、ビジョンを持って流通経済大にやって来た。
1年生からレギュラーを掴むと、関東大学サッカー1部で新人賞を獲得。今年はU-20日本代表として上記の2つの大会以外にもスペイン遠征に参加。9月に控えるU-20ワールドカップ(W杯)に向けて着実に経験を積んでいる。
4試合中3試合に出場したモーリスレベロトーナメントを戦い終え、帰国後すぐにアミノバイタルカップを戦うチームに合流。「時差ぼけもなく、コンディション調整は上手くいったと思います」と、初戦の中央学院大戦に1-1の同点の75分に投入され、守備を統率して逆転勝利に貢献。ラウンド32の慶応義塾大戦ではスタメンフル出場を果たし、延長戦まで戦い抜いて2-1の勝利を収め、総理大臣杯出場権を手にした。
「モーリスレベロではコンゴ、マリのアフリカ勢、デンマーク、メキシコと各地域の国と戦うことができて、本当にいい経験になりました。これは行くたびに思うのですが、スピードや球際、競り合いの面で課題を感じましたし、ビルドアップ面を含めても判断力や予測のスピードをもう1つ上げていかないといけないと思いました。改めて常に頭を動かしておかないといけないと痛感しました」
日の丸を背負って戦う自覚「毎日の基準を落とさないことが大事」
全国が懸かった慶応義塾大戦。彼は移動の疲れを見せないハイパフォーマンスを披露する。開始早々に失点こそ許したが、その後は大きな声の指示と、安定した1対1の対応で相手を圧倒。特に延長戦に入り、慶応義塾大が期待のルーキーであるFWオノノジュ慶吏を投入し、勝負をかけてきた際には、「試合前からオノノジュがどこかで入ってきてポイントになると思っていた」と、すぐにマンツーマン気味に視野に入れた対応を見せる。
オノノジュのパワーとスピードに対し、フィジカルバトルを演じるだけではなく、彼のスプリントコースを遮断。スピードアップする前に身体を当て、ポジショニングでスペースを埋めるなど、肉弾戦と頭脳戦で高度な駆け引きを繰り広げた。
「(オノノジュは)さすがのフィジカルとスピードだったので、目が離せないなかで集中して戦えました。海外の大会に行くと、一歩、半歩の細かいポジショニングが本当に重要になると感じます。前に入られたらもう最後なので、入られないようにブロックしたり、距離感もスピードに警戒しながら取ったりする。そのイメージで彼とマッチアップしました」
恵まれたフィジカルとサイズだけに頼らず、高度な駆け引きで頭脳戦もできる。CBとして着実に成長を遂げている彼には、すでに多くのJスカウトから熱視線を送られている。
だが、進路に迷う前に、彼の目の前にはU-20W杯という大きな目標と、下位に沈んでいる関東1部での浮上という重要な責務がある。
「(U-20日本代表の)自分以外のCBはみんなプロだし、ハイレベルな日常を送っている。でも、僕ら大学生はこうして試合経験を多く積むことができている。だからこそ、毎日の基準を落とさないことが大事だし、チームとして結果を出すことも大事。日本代表の関係者の人たちが一番見るのは大学での結果だと思うので、今は大学サッカーに集中して打ち込みたいです」
日の丸を背負って戦う選手としての自覚を持って、塩川はまっすぐに目標に向かって突き進む。
(FOOTBALL ZONE編集部)