海外名門クラブが10億円で狙う20歳日本人 C・ロナウドを封じた現代日本の象徴

川崎の高井幸大【写真:徳原隆元】
川崎の高井幸大【写真:徳原隆元】

日本人CBの大型化で欧州移籍も増加…現代スタイルの高井幸大に注目

 高井幸大のトッテナムへの移籍が合意間近と報道されている。正式移籍はメディカルチェックをしてサインするまでは分からないが、スパーズは移籍金500万ポンド(約10億円)を用意しているらしく、これは即戦力としての獲得と考えていいだろう。

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 トッテナムの昨季のリーグ戦順位は17位で残留圏ぎりぎりだったが、UEFAヨーロッパリーグ(EL)で優勝したので来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を得ている。

 高井は川崎フロンターレの下部組織出身。身長192センチのセンターバック(CB)として活躍している。準優勝だったAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)でも、準決勝でアル・ナスルのクリスティアーノ・ロナウドと堂々と渡り合い、3-2の勝利に貢献した。

 日本代表のCBは長身選手が並んでいる。町田浩樹が190センチ、板倉滉、伊藤洋輝、冨安健洋の3人は188センチ。渡辺剛、瀬古歩夢が186センチ。いずれも欧州で活躍している。逆に欧州でプレーするなら、これくらいのサイズは必要になるわけだ。

 日本人選手の欧州移籍は当初アタッカーが中心だった。

 奥寺康彦に始まって、三浦知良、中田英寿、中村俊輔など、FWかMFの攻撃的なポジション。サイドバックは長友佑都、酒井宏樹などが活躍したが、GKとCBはほぼいなかった。サイズが必要なポジションだからだ。170センチ台の名CBもいるにはいるが、基本的には185センチ以上が目安だろう。以前はそれに該当する日本人CBがあまりいなかったのだ。ところが、近年になってようやく日本人CBの大型化が進み、欧州移籍も増加した。

 CBの大型化は日本代表の戦い方にも大きな影響を与えている。

 2014年ブラジル・ワールドカップ(W杯)のCBは最長身が吉田麻也で189センチ。今野泰幸178センチ、伊野波雅彦179センチ、森重真人183センチ。185センチ以上のCBが1人しかいなかった。この時のチームは非常に攻撃的でボール保持力もあり、W杯の3試合も攻撃的にプレーしていた。CBは被カウンター対応型で押し込まれることは想定していない、というより、押し込まれた場合に耐性のある長身CBが少なかった。結局のところ攻撃するしか選択の余地のないチームだったと言える。

 ベスト16だった2010年W杯は押し込まれながらも堅守でグループステージを突破。田中マルクス闘莉王、中澤佑二のCBは185センチ、187センチと日本代表としては例外的に高さのあるコンビだったが、当時は170センチ台のCBはむしろ普通だった。

 W杯はノックアウトステージともなれば押し込まれる展開も予想しなければならない。その時にCBの高さがないのは致命的で大きな問題だった。しかし、2018年ロシアW杯では吉田麻也、昌子源のコンビが高さにも対応できていた。CBの高さ不足という長年の弱点が解消された分岐点となる大会だった。

 現在の日本代表は欧州勢にも高さで遜色のないCB、GKを擁している。そのため、ある程度押し込まれる展開にも対応できるようになった。これはW杯において中堅グループに属する日本にとってはかなり重要な変化である。

 高井は長身で空中戦に強いだけでなく、深いタックル、鋭い読み、そして安定した足元の技術を兼ね備える。20歳の若さも魅力。現代的なCBとして活躍を期待したい。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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