強豪校のスーパー1年生…監督は「大前元紀に似ている」 当たった壁も「むしろ幸せ」

流通経済大柏の熊木虎太郎「もちろん出たら結果を出せる自信はある」
昨年度選手権準優勝の流通経済大柏のスーパールーキーが今、強豪校の洗礼を受けている。神奈川のエストレーラFCインファンチルからやって来たFW熊木虎太郎は、屈強なフィジカルとゴール前での多彩な動き、得点嗅覚を持ち、榎本雅大監督も「大前元紀に似ている。点を取るポイントを分かっている」と期待を一身に背負っていた。
プレミアリーグEAST第2節の昌平戦でベンチ入りを果たすと、2点リードした後半35分に投入され、3分後に圧倒的な一撃を見せる。
左サイドでスルーパスに抜け出すと、寄せてきたDFに対して加速してカットイン。「最初はニアに思いきり打とうと思ったのですが、相手GKがニアに重心があったので逆を突こうと思いました」と、右足一閃。ボールはゴールに向かって対角の軌道を描いて、ゴール左隅に突き刺さった。
デビュー戦で初ゴール。衝撃的なデビューを飾った熊木だったが、これは本格的な競争のスタートラインだった。
「点を決めてから周りの雰囲気が変わったというか、練習中でもかなり厳しいプレスが来るようになったと感じます」
まだ1年生とあり、それまではどこかお客さんのような感じだった。しかし、あのゴールを境に一気に「競争相手」に変わった。ある意味、流通経済大柏の一員として認められた証拠でもある。
そこから熊木はとんとん拍子にはいかなかった。続く第3節の川崎フロンターレU-18戦もベンチ入りするが出番はなし。第4節のFC東京U-18戦では途中出場を果たしたが、第5節の横浜FCユース戦はベンチ外。その翌日のプリンスリーグ関東2部にセカンドチームとしてスタメン出場をしたが、結果は残せなかった。次にプレミアでベンチ入りをしたのが第9節の青森山田戦で、出番は来なかった。
プリンス関東2部でもベンチスタートが増えるなど、幸先の良いスタートとは裏腹に、早くも流通経済大柏の激しい競争の壁にぶち当たっている。
迎えた6月21日、この日は彼にとって大きな経験の1日となった。午前9時半キックオフのプリンス関東2部第8節・西武台との一戦で、後半途中で投入されると、3トップの下のセントラルポジションに入り、前線からのプレスとセカンドの回収、1.5列目からの飛び出しを見せた。ゴールこそなかったが、彼の献身的なプレーもあり、チームは3-2の逆転勝利を手にした。
「途中から入る難しさを改めて感じましたが、まだ自分のプレーは周りの信頼を掴むまでには行っていないと思っています。だからこそ、午後はなんとか期待に応えられるようにしたいと思います」
彼の言う午後は、アウェーで午後4時キックオフのプレミアEAST第10節の鹿島アントラーズユース戦を指していた。彼はベンチ入りを果たしたことで、「チームのためにプレーしたい」と気持ちを切り替えて、トップチームとして鹿島に移動をした。
結果は出番が来なかった。それでも彼はこの状況をポジティブに捉えている。
「もちろん難しいことは増えました。でも、それを望んで僕はここに来ました。ある意味平等に見てくれていて、本物の競争に飛び込んだからこそ、成長できている実感はあります。今、僕の心のなかにはスタートで出たいというハングリー精神がものすごくあります。1年生でこれが経験できるのは、むしろ幸せだと思っています」
その目はルーキーとは思えないほど、研ぎ澄まされていた。待ち望んだ環境のなかで、「もちろん出たら結果を出せる自信はある」と、闘争心と反骨心をさらに燃え上がらせているスーパールーキーの本領発揮は、まさにここからだ。
(FOOTBALL ZONE編集部)