日本サッカー特有の学業と競技の両立「三笘のように」 英6部クラブ代表が描く理想

英名門大学と連携して目指す「教育×スポーツ」の取り組み
イングランドサッカー協会(FA)の公認指導者養成インストラクターを務めるジャスティン・メリット氏が、東京・世田谷にあるファンルーツパーク芦花公園で小学生を対象としたクリニックを開催した。メリット氏はコーチを務める傍ら、スポーツ教育企業「Ignite Sport UK」を率い、英国各地の学校や地域クラブを対象にサッカープログラムを展開。さらにイングランド6部の「オックスフォード・シティFC」の代表も務めている。昨年7月には、そのシティFCと名門・オックスフォード大学が長期的なパートナーシップを締結。教育とスポーツを結びつけた取り組みは、英国国内で注目を集めているという。
「我々のユニフォームの胸には、オックスフォード大学のロゴが入っているんですよ。これは、スポーツと教育の融合を通じて、選手のキャリア支援や地域社会との連携強化を目指す取り組みです。教育プログラムでは、選手としての成長だけでなく、引退後のキャリア構築や社会的なリーダーの育成も視野に入れています」
実際にシティFCの選手たちは、すでにオックスフォード大学の著名な講師陣によるプログラムを修了。今後はほかのクラブにも展開していく予定で、大学とクラブの新たな協業モデルとなりそうだ。
こうした活動の背景には、メリット氏自身の経験がある。ワトフォードのアカデミー時代に負傷し、現役生活はU-19で終了。選手の道を断たれたことが、彼にセカンドキャリア支援の重要性を痛感させた。
「私はこのテーマに情熱を注いでいます。怪我をしたり、契約を切られたりして、21歳から23歳で新しい道を探さなければならない選手はたくさんいます。その点、日本には大学で学びながら高いレベルでサッカーを続けられる道がありますよね。三笘薫のように」
学業と競技の両立が可能な環境は、日本サッカーの大きな強みだとメリット氏は言う。さらに近年は、サッカーを通じてアメリカの大学へ進学する日本人選手も増加中だ。

プロの夢を絶たれた後、ビジネスの世界で活躍するケースも
例えば、帝京長岡高で2016年度の選手権ベスト4入りに貢献した本田翔英は、カリフォルニア大学バークレー校に進学。サッカー部で活躍した後、在学中にドイツ4部クラブとプロ契約を結んだ。また、JFAアカデミー福島出身の岩井蘭は、奨学生としてフロリダ州立大学でプレーし、全米選手権を2度制覇するなど確かな足跡を残している。
もちろん、大学でプレーした後にプロの道を選ばなかった選手も少なくない。だが、彼らは卒業資格や英語力、そしてサッカーを通じて得た広い視野を活かして、ビジネスの世界で活躍しているケースも多い。
メリット氏とファンルーツアカデミーでは、オックスフォード大学と共同で進める「フットボールUKプロジェクト」を日本でも展開する予定だという。競技と学業の両立を可能にする環境が、国境を越えてさらに広がりつつある。
(生島洋介 / Yosuke Ikushima)



















