森保Jは「100%でプレーするな」 英国人識者が提言…きわどさ見え隠れも「W杯を制する可能性ある」

アラン・ギブソン氏が言及【写真:徳原隆元】
アラン・ギブソン氏が言及【写真:徳原隆元】

森保ジャパンは来年どこまで勝ち進めるか

 日本サッカーを海外へ30年以上発信し続けてきた英国人のアラン・ギブソン氏。その間、プロリーグだけでなく、日本代表の進化も見届けてきた。歴代最強との呼び声高い森保ジャパン。サッカーの母国からやって来た識者は、現在の代表チームをどう見つめ、ワールドカップ(W杯)でどのような結果を手にできると期待しているのか。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全3回の3回目)

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 海外向け日本サッカー専門サイト「JSoccer.com」を1990年代後半から、英字の日本サッカー専門媒体「JSoccer Magazine」を2011年から運営しているアラン・ギブソン氏。これら以前に関西の英語月刊誌でもこの国のサッカーについて綴り、情報を世界へと発信してきた。

 日本代表についてもしかり。今でこそW杯出場の常連国となったが、世界がまだ夢舞台だった当時から代表チームにも注目してきた。アメリカW杯予選の頃を懐かしそうにこう振り返る。

「ドーハの悲劇の時なんて、『よしアメリカに行けるぞ! ボールを保持して何もするな!』とテレビに向かって叫んでいたのを覚えていますよ。それでも、チームで最も経験のあったラモス瑠偉でさえ次のゴールを目指してボールを保持しようとせず、逆に奪われてイラクに得点を許してしまった。うぶさを見せてしまったのです」

 高い国際競争力を持つ以前の苦い歴史からその後の発展まで、日本代表の足跡を長年見つめてきたギブソン氏に単刀直入に訊いてみた。来年の北中米W杯で森保ジャパンはどこまで勝ち進めるか。

「日本にも大会を制する可能性はありますし、ベスト8も十分に望めます」

 ただし、ポイントはここからだ。「少しの運と常に100%でプレーしないスマートさ、マリーシア(ずる賢さ)があれば」。

 運――自力でコントロールできないものの、W杯に限らずどんなトーナメントにも欠かすことのできない要素だ。分かる。残る2つはどういうことなのか。

「ドーハだけでなく2018年ロシア大会のロストフの悲劇といったあと少しで勝利を逃してきた歴史を見ていると、日本代表のサッカーにはどうもきわどさが見え隠れしている印象です」とギブソン氏。そこでこう提言する。

「日本代表は“100%でプレーしない”ということも学ぶべきだと思っています。勝負所を見極め、どこでストップをかけるかを知る必要があるのです」

 そして、最後に挙げたマリーシア。この点に関しては、言葉に苦言の色が強く浮かんだ。

「日本サッカーにおいて大好きであり嫌いでもある特徴があります。それは、選手がフェアすぎること。マリーシアが少なすぎます。プロフェッショナルファウルの数が十分ではない。代表チームにはより欠けていると感じます。汚い選手になれと言いたいわけではなく、もう少し戦う必要があると心得なければいけないでしょう。日本サッカー界にはもっとファイターが増えていいはずですし、汚いプレーを恐れるなと伝えたいですね」

「JSoccer.com」代表で「JSoccer Magazine」編集長を務める英国人のアラン・ギブソン氏【写真:本人提供】
「JSoccer.com」代表で「JSoccer Magazine」編集長を務める英国人のアラン・ギブソン氏【写真:本人提供】

「チームとして“プランB”のストライカーを見つけておく必要がある」

 では、チーム作りの観点で懸念材料はないのか。本大会まで残り約1年。残された時間は決して多くないなか、何を準備しなければならないか。「あるとすれば……」と切り出したうえで、ギブソン氏は次のように持論を展開した。

「ボールを保持し、ほかの選手とうまく連係できるプレーヤーを見つけることでしょうか。ボールを保持できれば才能豊かな中盤の選手やウインガーにスペースを作ることができ、彼らを前向きにプレーさせることができます。現時点では上田綺世がいますが、彼だけでは十分ではない。チームとしてプランBのストライカー、“大迫勇也2.0”のような選手を見つけておく必要があるのです。とはいえ、先発でなければならないというわけではなく、必ずしも得点力に恵まれている必要もありません。

 もちろん、森保一監督は今そこに取り組んでいると思います。これまでの戦いぶりを見る限り、3-4-2-1と4-2-3-1、どちらのフォーメーションでも戦えますが、『1』(FW)の部分が肝心で、ボールをキープできる選手を据えることが望ましい。今や他の強豪国の監督も日本代表を研究し、三笘薫や伊東純也、堂安律を抑え込んで、DFラインを押し下げる策はあると考えていると思います。プランAではうまくやってこれました。だからこそ、ここからはプランBの準備です。今のところ、日本はまだそれを手にできていないと思っています」

 ギブソン氏が期待するような選手が代表内で台頭し、プランBを携えたチームに今後バージョンアップできるか。森保ジャパンの本番に向けた準備が注目される。

[プロフィール]
アラン・ギブソン/1961年生まれ、英バーミンガム出身。日本サッカー専門サイト「JSoccer.com」代表、日本サッカー専門媒体「JSoccer Magazine」編集長。1988年11月にDJとして来日し、ジュリアナグループが運営していた神戸市内のナイトクラブで国内外DJのトレーニング業務を担当。その後に定住を決め、フリーDJとして活動する傍ら英語月刊誌「Kansai Time Out」の仕事を通じてライターの道へ。90年代後半に海外向け日本サッカー専門サイト「JSoccer.com」の運営を開始、2011年には英字の日本サッカー専門媒体「JSoccer Magazine」を創刊した。これら活動以外にも、スタジアムアナウンサーに加え、ヴィッセル神戸やガンバ大阪の英語版サイトの編集なども行ってきた。また、日本最古のスポーツクラブ「神戸リガッタ・アンド・アスレチック倶楽部」に所属し、複数チームでプレーヤーとしても週3~4回ほどサッカーを楽しんでいる。

(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)



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