青森山田の苦境…開幕4連敗に「苦しかった」 救世主になった逸材9番「俺しかないと」

青森山田でゴールを決め続ける深瀬幹太【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
青森山田でゴールを決め続ける深瀬幹太【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

青森山田の深瀬幹太「僕は9番なのに途中から出る日々だったのは悔しかった」

 背番号9の自分こそがエースストライカーだ。青森山田のFW深瀬幹太を見ていると、屈強なフィジカルと180センチのサイズがそのメンタリティーによってより迫力を帯びているように感じる。

 プレミアリーグEASTにおいて、開幕4連敗という近年の青森山田では考えられない結果に戸惑いながらも、自分にベクトルを向け続けてきた選手たちの話は、GK松田駿、DF杉山大起のコラムでも触れた。深瀬も同様に「苦しかった。結果を出せない自分がもどかしくて仕方がなかった」と自分自身にベクトルを向けていた。

 だが、結果として彼がチームを苦境から救い出す救世主の1人となった。4連敗の間、彼はずっとベンチスタートで、リードを許している劣勢のなかでの後半途中から投入された。

「途中出場する選手の役割は本当に重要で、流れを変える仕事を求められます。そこで流れを変えられなかった方が、スタメンで出られなかったことと同じくらい悔しかった」

 絶対に反撃の狼煙となるゴールを自分が叩き込む。毎試合、その強い意志でピッチに飛び出して行ったからこそ、正木昌宣監督はその彼の姿勢に対する最大限の評価として、彼を第5節の柏レイソルU-18戦でスタメンに抜擢。深瀬もいざスタメンのチャンスを掴んだときにはすでに準備万端だった。

 1-0で迎えた後半38分、右からのFKを中央で高い打点のドンピシャヘッドで突き刺し、初勝利を決定づける2点目を叩き込んだ。続く第6節の東京ヴェルディユース戦で2試合連続スタメン出場を果たすと、前半44分に相手のミスを見逃さずに回収したボールをそのままGKとの1対1を制してゴールに流し込むと、後半12分には右CKを得意のヘッドで合わせて3点目。2連勝の立役者となった。

 そして3連勝、4試合連続スタメンで迎えた第8節の昌平戦。この試合も最前線から果敢なプレスと、身体を張ったポストプレーを見せると前半35分に突破からPKのチャンスを得た。

「俺しかないと思いました」とボールを受け取り、ペナルティースポットにボールを置いた。中学時代に県選抜で一緒だった昌平GK小野寺太郎と対峙し、「少しやりづらかった」と口にするが、冷静にGKの逆を突いて先制弾をチームにもたらした。

 さらに後半12分には左サイドで縦パスに抜け出すと、そのまま相手DFを振り切って飛び出してきたGK小野寺と1対1に。角度も厳しく、小野寺が飛び出すタイミングもバッチリだったが、「枠内にシュートを打ち込む感覚は磨いてきた」と、空いていた小野寺の肩口の上を狙って、右足インフロントで擦り上げるようにインカーブのシュートを放った。

 ボールはゴール右ポスト内側を叩いたが、跳ね返ったボールがゴールカバーに入ろうとしていた相手DFの胸に当たってゴールに吸い込まれた。記録上はオウンゴールだが、深瀬の冷静さとシュート技術が生み出したゴールだった。

 これでスタメン奪取をしてから4試合で4ゴールと得点ランキングも3位に浮上。チームの破竹の4連勝を最前線から力強く牽引している。

「僕は9番なのに途中から出る日々だったのは悔しかったし、流れを変えられない自分が本当に情けなかった。僕の仕事の役割の多くがボックス内での仕事。チームに足りなかったのは、シュートの数。何がなんでもシュートを打つんだ、持っていくんだという気持ちで僕は誰にも負けてはいけないと思っています」

 全身から迸るゴールへの渇望。ただ、この結果で満足できるほど、彼の渇きは小さくない。

「セットプレーや裏抜けでゴールを取れていますが、チームの武器はサイド攻撃。いいサイドアタッカーが味方にいるからこそ、もっとクロスからゴールを決めないといけないと思っています。次以降はしっかりと結果で示したいと思います」

 5連勝、その先にあるインターハイ、4度目のプレミアEAST制覇、冬の全国高校サッカー選手権に向けて。屈強な陸奥のストライカーがその牙をさらに鋭くする。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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