スカウト興味…J屈指の左SBが育てた逸材 「キックは凄まじい」師匠から受け継ぐ武器

流通経済大柏の増田大空「根本裕一監督のキックは本当に凄まじくて…」
プレミアリーグEASTで首位を走る流通経済大柏は、昨年から始まった「ダブルキャプテン制」を今年も敷いている。
ボランチの島谷義進と左サイドバックの増田大空が任命され、プレミア開幕から昨年度のセカンドチームのキャプテンだった島谷が代表をしてキャプテンマークを巻いていた。だが、島谷が負傷した影響で第8節の市立船橋との「千葉高体連ダービー」では増田がキャプテンマークを巻いてピッチに立った。
「新鮮というか、いつも以上に気合が入りました。感じたのは、キャプテンマークがあるのとないのとではだいぶ重みが違う。義進がこれまで重圧を背負いながらプレーしていたことを感じました」
初のキャプテンマークの試合がいきなりのライバル決戦だったこともあり、より増田は重責を感じただろう。しかし、試合が始まると効果的なオーバーラップから得意の左足からのクロスや、ボランチの位置やトップ下の位置まで潜り込んで、ビルドアップやフィニッシュまでの組み立てに関わるなど、持ち前の戦術理解度の高さをプレーで存分に発揮した。
チームも開始4分に大型ストライカーのFW大藤颯太が先制弾をマークすると、前半38分にはMF安藤晃希が追加点。2点のリードに対し、増田はチームの緊張が緩まないように左サイドから大きな声で集中を促し、かつコーチングをしながら全体をコントロール。CBが前に出たカバーリングや危険なスペースを埋める動きで守備を引き締めた。
後半30分にセットプレーから大藤が3点目を叩き込み、勝負あり。ライバル決戦を3-0の完勝で飾った。
「昨年、僕は1年間セカンドチームにいてプリンスリーグ関東2部を戦っていたので、市船のトップとやるのは初めて。しかも義進がいないなかだったので、本当にいろんなことを考えました。ただ、プリンス関東2部で苦しい戦いの連続で、うまくいかないことばかりで苦しかったのですが、それを乗り越えて残留できた経験がすごく生きていて、勝っていても、負けていても焦れずに自分たちのサッカーをやり抜く、簡単に失点しないという粘り強さを今日も出すことができた。向こうも気合い剥き出しできたので、こっちもバチバチにやれて楽しかったです」
こう引き締まった表情で話す増田は、キャプテンとしてだけではなく、希少価値のある左利きの左サイドバックの専門職とあって、Jクラブのスカウトも興味を抱く存在となっている。
「突破してクロス、中に入ってゲームメイクもできるのが自分の武器」と口にする彼の左サイドバックとしての土台を築いたのは、鹿島アントラーズつくばジュニアユースで3年間指導を仰いだ根本裕一監督の存在が大きかった。
根本監督は鹿島のアカデミーで育ち、トップ昇格からセレッソ大阪、ベガルタ仙台を経て、大分トリニータのJ1でのシーズンを支えたJ屈指の左サイドバックだった。増田と同じレフティーで、その正確無比かつ強烈なパンチ力を持った左足のキックから「美白のロベカル」との異名を持った。
「個人的に現役時代のことを知っていたので、同じサイドバックとして学ぼうとコミュニケーションは多く取らせていただきました。根本監督のキックは本当に凄まじくて、いろんな蹴り方、球種を教えてもらいました。CKのキッカーをやっていたときも、最初はふわりとしたボールしか蹴られなかったのですが、速いボール、ストレート、GKから逃げるボール、向かっていくボールなど教えてもらいました。ミドルシュートもタイミングやコース、軸足の位置などを学びました」
増田の意欲的な姿勢もあって、多くのものを吸収することができた。鹿島ユースには昇格することができなかったが、このベースがあったからこそ、プレミアトップを走る強豪校で不動のレギュラー、キャプテンとしてチームを牽引する存在になれている。
「これからもっと自分1人で攻撃も守備も完結できるような選手になりたいし、人間としても義進とともに苦しい時に周りを支えられる人間になりたいです」
心身ともに大きな成長曲線の中にいるレフティーサイドバックの注目度はこれからますます上がっていくだろう。ぜひチェックしておいてもらいたい選手の1人であることは間違いない。