W杯日本の理想型 交代ゼロで変幻自在…カメレオン布陣を実現する2人のキーマン

日本代表の戦い方に柔軟性をもたらすことができるキーマンとは?【写真:徳原隆元】
日本代表の戦い方に柔軟性をもたらすことができるキーマンとは?【写真:徳原隆元】

堅守速攻から超攻撃型まで、W杯に臨む日本代表の戦術的アドバンテージ

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝でアーセナルを破ったパリ・サンジェルマン(PSG)に対して、元アーセナル監督でフランス人のアーセン・ベンゲルは「これまでのパリ・サンジェルマンとは違っていた」と話している。

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 PSGといえばヴィティーニャを中心とした洗練されたパスワークとウスマヌ・デンベレ、クビチャ・クワラツヘリア、デジレ・ドゥエといった突破力に優れたアタッカーたちによる攻撃的なプレースタイルが印象的だったが、アーセナルとの第2戦では堅守によって決勝進出を果たしたからだ。

 ワールドカップ(W杯)においても、こうした柔軟性や戦い方の幅は問われてくる。

 2022年カタールW杯での日本代表は堅守のチームだった。5バックで守備ブロックを組んで相手の攻撃に耐え、鋭いカウンターアタックで相対的に少ないチャンスを活かしてドイツ、スペインを破り、クロアチアと引き分けている(PK戦により16強敗退)。

 森保一監督は「いざとなったら全部1対1にすればいいと思っている」と話しており、実際にドイツ戦の後半はそれで流れを変えた。数的優位を作らなければ強豪国には対抗できないと長く信じられていたのが、もう日本はそうではないのだと分かった一戦である。

 2026年の北中米W杯もメンバーにそれほど大きな変化はなく、堅守速攻型の戦い方は再現できるかもしれない。一方、カタールW杯で唯一の敗戦となったコスタリカ戦はまったく別の試合だった。堅守はコスタリカのほうで、日本はボールを保持しながら打開できずに終わっている。

 この課題に取り組んできたのがカタールW杯後の日本代表だった。

 アジア最終予選では3-4-2-1システムを採用し、両ウイングバックにウイングを起用する極めて攻撃的な人選を行った。この最大火力投入は奏功し、早々に予選通過を果たしたわけだ。

 堅守速攻から超攻撃型まで、幅のある戦い方ができる。これはW杯に臨む日本代表の戦術的なアドバンテージと言える。では、試合中に攻守のバランスを変えるのはどれくらい可能なのだろうか。

日本代表で鍵を握るのは2人…可変するなら最もスムーズな組み合わせ

 5人を交代できるとはいえ、なるべく交代なしでバランスを変えることを考えると鍵を握るのは2人の「イトウ」になる気がする。伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)と伊東純也(スタッド・ランス)だ。

 3-4-2-1でスタートするとして、右ウイングバックに伊東を起用。左ウイングバックも伊藤。攻撃的にシフトするなら右の伊東を2列目に上げて4-2-3-1に変える。これが可能なのは伊藤がサイドバックとウイングバック(さらにセンターバック)をこなせる能力があるからだ。右の伊東は攻撃の選手ではあるが、ほかのウイングバック候補である堂安律(フライブルク)、三笘薫(ブライトン)、中村敬斗(スタッド・ランス)と比べると守備に安定感があり、所属のスタッド・ランスでもチームが残留争いだったことで、もっぱら守備に回ることが多かったので経験値も高い。

 試合中に可変するなら両サイドに伊東と伊藤という組み合わせが最もスムーズではないかと思われる。

 さらに攻撃的にするなら、再び3バックにして左ウイングバックに三笘や中村を置き、予選時の超攻撃型にシフトできる。三笘と中村は左のシャドーでもプレーできるので、オーストラリア戦で見せた三笘と中村のダブル・ウイングも使える。

 ほかのオプションもほしいところだが、現状では伊藤と伊東の両サイドが現実的ではないだろうか。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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