クラブに直談判→選手たちに「言わせてくれ」 優勝目前で決まっていた退任「試合の3日前に」

退任が決まった松田岳夫監督「クラブから言われたのは試合の3日前」
日本女子サッカーのプロリーグ「WEリーグ」は5月19日に東京都内で「2024-25 WEリーグアウォーズ」を実施した。4シーズン目で初優勝した日テレ・東京ヴェルディベレーザの松田岳夫監督は最優秀監督賞を受賞したが、シーズン終了後には退任も発表された。そのことは、優勝を決めた最終戦を前に選手たちに伝えていたという。
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松田監督は「クラブから言われたのは試合の3日前だったと思う」と、優勝の懸かった最終戦を前に退任が決まっていたと話す。
「こういう勝負の世界で、実際にはクラブが判断すること。本当は試合前に選手たちには伝えてほしくないとクラブには言われたが、しっかり選手たちと向き合ってきた2年間を大事にしたかったので言わせてくれと言い、それを認めてもらった。それがプラスになったかは分からないが、最終戦のゲームの入りやパフォーマンスはいつも以上に高かったと思う。全員がいつも以上の一体感を持って入れたのは大きかった」
日本女子サッカーの歴史の中で、押しも押されもせぬ名門ベレーザだが、次々に主力が海外へ移籍していく状況もありWEリーグ開幕からの3シーズンはいずれも3位だった。そのなかで、昨季に就任していた松田監督は「今までと違うベレーザを表現しようと共有して積み上げてきた」と話す。その中身は、「上手いだけじゃ通用しない。世界のサッカーの流れを見れば、男子同様にすごく成長している。フィジカルを鍛えて、その中で技術を生かさないといけない」というものだった。
実際に時間が掛かった理由を「フィジカルを強調しすぎると、スピードが上がり過ぎて周りが見えなくなって技術が落ちる。技術を要求するとパワーや運動量と言った強度が落ちる。いいバランスでやるのが難しい」と話す。それでも、下部組織のメニーナから昇格してくる素質ある選手たちを成長させながら、今季は22試合で50得点という爆発的な攻撃力も披露した。最終的に勝ち点51でINAC神戸レオネッサと並びながら、得失点差+34がものを言った。
松田監督が選手たちに伝えてきたのは、「頭を経由するプレーは本物じゃない。調子が悪い時の自分が本当の実力」というもの。3バックも採用し、新しいベレーザの印象を与えたシーズンでWEリーグ初制覇をした名門は、フィジカルと技術の融合した今季をベースにさらなる飛躍を求めていくことになった。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)