手に当たってるのに…なぜハンドにならない? ファン不満も、優先される“主審の判断”

ハンドの反則について説明(写真はイメージです)【写真:柳瀬心祐】
ハンドの反則について説明(写真はイメージです)【写真:柳瀬心祐】

偶発的であっても攻撃側の手や腕に当たって直接ゴールになった場合はハンド

 手にボールが当たったら、思わず「ハンド!」と言ってしまいませんか? それってサッカーをやっていたり見ていたりしている人なら本能です。でも、本当にそれが「ハンド」の反則になるかは別の話。ジャッジのなかでも特によく解釈が変更されている「ハンド」について解説します。

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 サッカーのルールで一番分かりにくいのは「ハンド」ではないでしょうか。というのも、これまで「ハンド」は何度も解釈が変わってきました。だから少し前の基準を覚えている人が「ハンド」と思っても、今の解釈では違うということもあるんです。

「じゃあ面倒くさいから、手に当たったら全部『ハンド』でいいんじゃない?」という考えもあるでしょう。確かにしばらく前のヨーロッパの国のなかでは、それに近い解釈で審判が笛を吹いていたこともありました。

 他にも、とても細かく「ハンド」を規定した時代もありました。どこより上に手が上がっていたらダメだとか、体を支えていた手に当たったら「ハンド」じゃないとか。ちなみに、今は「支え手」という定義はなくなっています。体を支えていても「ハンド」になる場合があります。

 解釈を細かくしすぎた反動なのか、今はもっと主審の判断に任されるようになってきました。もちろん、細かい規定はあります。ただし、その規定はよく変わりますので、毎年最新の規定をチェックしてください。

 まず、どこから触ったり当たったりするとハンドの反則になるのか。

○ハンドになる部分は脇の下の最も奥の位置まで

 ということで、静止した状態で脇の下から地面に平行にラインを引き、その上は「肩」として「ハンド」になりません。

 ではその「肩」より下の腕の部分がボールに触れたとき、現在はどういう場合が「ハンド」の反則になるのか。

○手や腕をボールの方向に動かして触った場合
(意図的にボールに触ろうとしたと見なされます)

○手や腕を不自然に体を大きく見せるように広げてボールに触った場合
(「偶然に見せかけて当たればいいと思った」と見なされます。体から手や腕が離れていると、そう思われる可能性があります)

○手や腕の位置が体の動きから正当ではないと判断された場合
(「普通はそう手を動かさないのだから意図的に触ろうとした」と見なされます)

 つまり意図的に手や腕でボールを触るとハンドになってしまいます。でも、たとえどんなに意図的でなくともハンドになる場面があります。

○偶発的であっても攻撃側の手や腕に当たって「直接」ゴールになった場合
(「直接」ですから、ゴールになる直前ではない偶発的な「ハンド」は反則になりません)

○偶発的であっても手や腕に当たった選手が「直後」に得点した場合
(この「直接」の解釈が時代とともに変わってきていて、今は「手に当たったボールをそのままシュートした」という流れのプレーを「直後」とします。手に当たって、少ししてからシュートした、というのは含まれません)

 ではどんなときに「ハンド」にならないのか。

○手や腕が体にくっついていた場合
(体を大きく見せるようとはしていなかったと見なされます)

○手や腕の位置が不自然ではなかった場合

○すぐ近くでボールが蹴られたりヘディングされていたりして避けようがなかった場合
(ただし、手や腕を広げていたりして大きく見せようとしていたと思われたら反則になります)

○目の前で急にボールの飛ぶ角度が変わっていて避けられなかった場合
(目の前で味方に当たってボールが反対方向に飛び、手や腕に当たった場合など)

○自分が触ったボールが手や腕に当たってしまった場合
(ただし、ゴールになった場合は反則になります)

 どうでしょうか。こうやって整理してもなかなか大変です。だけど忘れてはいけないのは、「意図的」かどうかというのが大きなファクターになっていること。そして「意図的」だったかどうかは、「レフェリーにはどう見えたか」で判断することになっています。

 それは元々サッカーのレフェリーは、両チームが話し合って決着がつかないとき、「どう見えたか」を参照(リファー)される立場だったということに起因します。それだけ主審の判断が優先されるのです。

「今のはわざとじゃないだろう!」と言いたくなる気持ちはよく分かります。でも、レフェリーというのは、どちらかを立てればどちらかが不満を持つ立場。ファンとしては「そう見えちゃったのなら仕方がない」と納得せざるを得ません。でも気持ちはよく分かりますけどね。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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