“未完の大器”が覚醒寸前へ…J2でのしあがるブレイク候補11人 怪我からカムバックした逸材も

すでに若手として扱う必要はない“キャプテン”
J2は第15節まで消化、すでにシーズンの3分の1を越えたが、若手選手たちの台頭が目を見張る。今回は2003年生まれより下の年齢の選手を対象に、J2若手ベスト11を選んでみた。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
GKは平尾駿輝(21/カターレ富山)だ。J2でスタメン起用されている選手では最も若く、抜群の反射神経を生かしたセービングと正確なキックを誇る。高卒4年目で、1歳上の田川知樹の控え的な立場だったが、守護神のアクシデントにより、第14節の長崎戦からゴールマウスを守っている。その試合は敗れたが、終盤にFWフアンマ・デルガドのヘッドを弾き返すなど良さも見せた。そして前節のホーム大分戦では相手に多くのチャンスを創られる苦しい戦いで、1失点に抑えて勝ち点1をチームにもたらした。
ディフェンスラインは土屋巧(21/ヴァンフォーレ甲府)、市原吏音(19/RB大宮アルディージャ)、西野奨太(20/北海道コンサドーレ札幌)の3人を選んだ。J1の柏レイソルから育成型期限付き移籍で甲府に加入している土屋は3バックの右で防波堤のような働きを見せている。ボランチもこなせる選手だけあり、後方からの展開のパスなど、攻撃面の貢献も大きい。
U-20日本代表のキャプテンでもある市原は10代にして、大宮の3バックをまとめる存在だ。対人の強さもさることながら、冷静に状況を見極める姿勢が良く、微妙な判定のシーンではレフェリーとコミュニケーションを取るシーンもよく見られる。昨年から主力を張る彼に関してはメンタル面も含めて、すでに若手として扱う必要はないかもしれない。
札幌のアカデミー出身である西野は序盤戦こそ出番に恵まれなかったが、沖縄キャンプから非常に良いアピールをしていただけに、今シーズンの台頭は時間の問題とも言えた。アグレッシブな守備が持ち味で、相手FWが強いほど、存在感が際立ってくるタイプだ。DF出身で、元代表選手でもある岩政大樹監督の指導で、どこまで伸びるのか楽しみだが、チームの苦しい状況を考えれば、救世主的な活躍が期待される。
右サイドは文句なしに梅木怜(19/FC今治)を選んだが、左は該当する2003年生まれ以降の選手がなかなか見当たらない中で、シャドーを本職とする横山夢樹(19/FC今治)をA代表の三笘薫や中村敬斗のような起用法をイメージして、ここに持ってきた。梅木は市原とともに今年U-20アジア杯で、ベスト4に貢献した選手であり、秋のU-20W杯でも期待がかかる。推進力の高い攻め上がりと相手陣内での柔軟な仕掛け、右足のクロスと鋭いミドルシュートが武器だ。
梅木とともに帝京高校から加入して2年目の横山はスピードと自在性の高いドリブル、そしてゴール前の決定力が特長。まだ出場時間はそれほど多くないながらも3得点を記録している。名願斗哉(20/ベガルタ仙台)も変幻自在のドリブルを無事しており、投入されれば確実に相手の脅威になれる攻撃のタレントだが、プレーの強度や持続性など、もう一皮二皮、むけてほしいところがある。
長崎でも主軸を担うべき“タレント”
ボランチは石渡ネルソン(20/いわきFC)と安部大晴(20/V・ファーレン長崎)という将来性の豊かなコンビになった。ナイジェリア人の父を持つ石渡はセレッソ大阪のホープとして、高校2年生でトップデビューした逸材だが、そこからプロの壁に当たり、昨年は愛媛で武者修行をしていた。新天地のいわきでは逞しさが増した姿を見せており、第11節の長崎戦ではアウェーで4-3の勝利につながる得点を決めた。懐の深いボールコントロールを生かした組み立てとチャンスに関わっていくセンスは非凡なものがあるだけに、いわきで力強さが加われば、大きな飛躍が期待できる。
2021年にクラブ史上最年少の16歳でデビューした安部に関しては、長崎でも主軸を担うべきタレントであり、個人能力とリーダーシップの両面を持ち合わせている。彼が序盤戦の10試合を欠場していたことは、下平隆宏監督にとっても非常に痛かったと言えるかもしれない。2ボランチはもちろん、4-3-3のアンカーも務まるバランスワークと多くのチャンスをもたらすサイドチェンジで、タレント力の高い攻撃を支える。
2シャドーは齋藤俊輔(20/水戸ホーリーホック)と川合徳孟(18/ジュビロ磐田)というフレッシュな組み合わせになった。齋藤はプロ2年目。水戸だと4-4-2の右サイドハーフがメインとなっているが、左がわでもプレー可能だ。個人で打開するドリブルを武器としながら、意外性のあるパスなどで相手の裏をかくこともできる。川合は今シーズンのJリーグでも、最も面白いヤングタレントの一人であり、試合の流れを読みながら柔軟なボールタッチとキック技術を駆使してチャンスを切り開ける。身体は大きくはないが守備強度も高く、攻撃的なボランチも担える選手だ。
FWは千葉寛汰(21/藤枝MYFC)を選んだ。“ザ・ストライカー”というイメージの選手で、ボックス内でいかにラストパスを引き出すかにこだわる、良い意味でのエゴイスティックなキャラクターを持つ。それでいてハイプレスからボールを奪えば、鋭い仕掛けでゴールに向かったり、藤枝の流動的な攻撃のコネクターとしても効果的な役割を担っており、チームとしての攻撃力アップが、そのままフィニッシュのチャンスを増やすことにもつながるだろう。そのほか熊田直紀(20/いわきFC)や山本桜大(20/レノファ山口)のブレイクにも期待していきたい。
今回は入れられなかったアタッカーのブレイク候補としては安野匠(19/ベガルタ仙台)と内藤大和(20/ヴァンフォーレ甲府)、鈴木大馳(18/サガン鳥栖)の名前をあげておく。

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。