対戦国の分析「情報がありませんは許されない」 日本の鍵を握る下準備「100%の力でやっていたらダメ」

山本昌邦NDがW杯本大会への準備やE-1選手権に言及【写真:徳原隆元】
山本昌邦NDがW杯本大会への準備やE-1選手権に言及【写真:徳原隆元】

本大会に向けた準備、E-1選手権の選手選考について語った

 2026年にアメリカ・カナダ・メキシコで共同開催されるワールドカップ(W杯)出場を決めた日本代表は、今後どのような準備をして本大会に臨むのか。山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)に、本大会に向けてどんな準備が進んでいるのかと同時に、7月に予定されているE-1選手権についても聞いた。(取材・文=森 雅史/全4回の4回目)

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   ◇   ◇   ◇   

――森保一監督がヨーロッパに住んで試合を視察するという話もありました。

「本意は、ヨーロッパでの視察が足りないので、もっと滞在して日数を増やしたいという話ですね。『移住』というのが言葉のアヤとして出て、そこが取り上げられたのですが、向こうに住むということではありません。

 ただトップレベルというかW杯の頂点に向かう時に、もちろん日本代表の選手たちも見ますが、ライバルになる国の選手たちがヨーロッパでプレーしているので、その特徴や質なども見られるところは大きいですね。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の上位チームが大事な基準だと思うので、そういう試合にできる限り行って見るのは当然大事だと思っています。

 ただ、監督のコンディションも重要です。2月の視察の時は17日間で16試合、ドイツ、オランダ、ベルギー、イングランド、デンマーク、スイスを回っていました。かなり大変なスケジュールです。ヨーロッパは国が近いとはいえ、ほぼ毎日移動してかなりの負荷がかかっていると思います。

 コーチングスタッフのコンディションは本当に大切なんですよ。最近、会議ではそればかり言っています。『安全とコンディションはとにかく万全で、無理しないで頼みます』と。みんな無理してしまう人たちなので。コーチングスタッフだけではなくてサポーティングスタッフも同じなので、そこは気にしています」

――本大会での負荷も大きそうです。

「特にグループリーグを抜けて決勝トーナメントに上がった時の1試合目、今回で言うとベスト32の試合の時は負荷がグンと上がります。対戦の可能性のある国はすべて分析しなければいけないですし、会場がどこになるか、どうやって移動してトレーニングをするか、すべて対応しなければいけません。どこが出てきても『情報がありません』というのは許されないんです。

 だからグループリーグの間にサポーティングスタッフが100%の力でやっていたらダメです。そこで力を使い果たしたら、もうそのあと力が出せません。だからグループリーグでは余力を持って乗り切らなければいけない。スタッフが疲れていると、選手に対していい仕事をしてあげられなくなりますし、それでは勝てないと思っています」

――今年7月に韓国でE-1選手権が予定されています。国内組中心のメンバーになると思いますが、これまで呼んでいないヨーロッパ組の選手を参加させることはないのでしょうか?

「E-1選手権がインターナショナルマッチウィークではないので、所属クラブが招集に応じてくれなければ参加はさせられません。クラブ次第になってくるでしょうね。その点、Jリーグとはしっかり話ができていて、その期間J1リーグ戦を空けてもらっています。日本サッカー全体のために、クラブも協力してくださるわけです。ですからJリーグの選手中心になると思います。

 招集され、チームに入ってミーティングやトレーニングを行うなかで、選手が気付いて自信を深めるか、要求されるレベルが分かるかなども重要だと思います。わずか3試合ですが、その間にマインドが変わることが大事ですね。過去には、E-1選手権招集の選手の中からW杯本大会メンバーも選ばれていますので、成果を出せばチャンスはあります」

――若い選手を帯同させて将来の布石にするという考えはあるのでしょうか。

「U-20やU-17の選手に刺激を入れるという点ではいいでしょう。実際、3月のSAMURAI BLUE合宿の時、U-17日本代表も同じ会場でトレーニングをしていて、先輩たちから話をしてもらっています。ただ、最も大切に考えなければいけないのはSAMURAI BLUEの練習の質を担保することです。若手選手を帯同させることは彼らのためになるのですが、代表のトレーニングの質が下がるのであれば、それはちょっと違うかと思います。

 だから一番良いのは、若い選手が地力でSAMURAI BLUEに入ってきてくれることです。実際に世界を見渡せば17歳のラミン・ヤマルがスペイン代表に入っている。それを考えると、そんな遠い未来ではなくて、たとえば『来年のW杯が終わったらSAMURAI BLUEに入る』とU-17の選手が思っていることが重要だと思っています」

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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