J内定の逸材大学生…デビュー戦で屈辱「ジュビロには」 大学との二刀流「戸惑いも」

法政大学の大畑凛生【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
法政大学の大畑凛生【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

法政大学の大畑凛生「経験を通じてよりエスパルスへの思いは強くなりました」

 清水エスパルス入りが内定している法政大学の4年生ボランチ・大畑凛生は、4月9日のルヴァンカップ1stラウンド2回戦のジュビロ磐田との静岡ダービーでスタメンフル出場をしてプロデビューを飾ると、同16日のJ1第12節の横浜F・マリノス戦で残りわずかの出場だったが、J1デビューを飾った。同29日のJ1第13節のFC東京戦でもベンチ入り。出番は来なかったが、大きな経験を積んだ。

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「夢舞台という感覚ではありました。エスパルスである以上、同じ静岡県内のジュビロには絶対に負けてはいけないにもかかわらず、1-2の敗戦を喫してしまったことはめちゃくちゃ悔しかった。でも、これらの経験を通じて、よりエスパルスへの思いは強くなりました」

 5月からは関東大学サッカーリーグ2部を戦う法政大学に戻ってきた。彼不在の間、チームは破竹の開幕4連勝を達成し、1部復帰へ好発進を切った。

 合流間もないことから3日の同じ全勝の早稲田大との首位決戦はベンチスタート。0-0で迎えた後半19分に投入されたがプレーに精彩を欠き、試合はそのままスコアレスドローに終わった。

「静岡ダービーに90分出て、疲労ではないですが、シンプルに身体が重くて、コンディション的に難しさを感じています」

 プロの世界と大学サッカーを行き来することは想像以上に難しかった。それはプロと大学の実力差があるからという単純な理由ではない。

「正直、こう感じるのは初めてなので戸惑いもあります。それと同時に、これまで大学とJリーグを両立してきた選手もいるわけで、昨年で言うと稲村隼翔(アルビレックス新潟)選手は両方で主軸としてやっていて本当に凄いなと改めて思いました」

 どちらに行っても責任は伴う。清水ではいくら内定選手と言えど、ピッチに立てばそんな肩書きは一切関係なく、1人のプロ選手として結果が求められる。大学に戻れば、J内定選手からプロデビュー済みの選手として、ほかの選手と違いを出すことを求められる。そのプレッシャーと義務を味わったことで、これまでの感覚とは違う感覚が芽生え、それに戸惑っているように見えた。

 それが確信に変わったのは、改めて清水での経験について聞いたときの答えだった。

「J屈指の熱いサポーターの皆さんがいて、選手・スタッフだけではなく、クラブの人たちなど周りが『エスパルスのために』という気持ちを持って一生懸命動いている姿も目の当たりにしてきた。だからこそ、エスパルスの勝利に貢献したいし、リーグ戦が行われているにもかかわらず、快く送り出してくれた法政大の勝利にも貢献したい。サッカーをする意義を強く感じています」

 この言葉で彼の実直さが伝わってくる。おそらくこのわずか1か月のなかで、より自分にベクトルを向けて「サッカー選手とは何か」「自分とは何か」を真剣に考えるようになったのだろう。

 この言葉から3日後の関東リーグ2部・第6節の拓殖大学戦。3-1で迎えた後半25分に投入されると、その3分後に今季リーグ初ゴールをマークし、勝利を確定づけた。

 彼はまさに今、心身ともに1つの殻を破ろうとしている。この苦しみの先により大きくなった自分がいると信じて。大畑はオレンジの魂を心に宿してサッカーと自分に向き合い続ける。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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