夕食中に父から突然「バルサから話がある」 昇格逃し単身で来日へ…19歳逸材が抱く「日本のために」

C大阪の髙橋仁胡【写真:Getty Images】
C大阪の髙橋仁胡【写真:Getty Images】

C大阪DF髙橋仁胡が急成長…バルサのカンテラ出身

 セレッソ大阪のU-20日本代表DF髙橋仁胡が急成長中だ。前節ヴィッセル神戸戦でフル出場を果たし、相手DF酒井高徳とのマッチアップも制して決勝点を演出。スペインの名門バルセロナ下部組織出身の19歳は、幼い頃に培った技術を武器に頼もしさが増している。そんな髙橋のルーツに迫った――。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 アルゼンチン人の父、日本人の母と夜、食卓を囲んでいた時だった。父が改まって口を開いた。「バルセロナから話がある」。他クラブからもオファーがあったが決断に迷いはなかった。「バルサに行きたい」。14歳の時だった。

 スペインで生まれ育ち、4歳でフットサルを始めた。カタルーニャ州代表になる実力を持ち、サッカーを始めたのは「10歳ぐらいだった」という。わずか4年ほどでバルセロナのカンテラへ。当時プレーしていたUEコルネジャのコーチから父にオファーが伝えられ、父から髙橋へ話が渡った。

「もちろん嬉しい気持ちだった。自分もバルサに行きたいという気持ちが決まっていたので。バルサでは素晴らしい選手とプレーして色んなことを学んだ」

 サッカーを始めてからサイドバック一筋。徹底的に「ボールを大事にすること」を叩き込まれた。トップチームの練習で目標としていたジョルディ・アルバとプレーしたこともある。「本当にうまかった」と直に刺激を受け、成長させられた。

 それでも、負傷の影響もありバルセロナBに昇格することができず。退団が決定し、18歳で単身日本へやってきた。スペインからのオファーもあったがC大阪行きを決断。年代別代表でともに戦ったFW北野颯太の存在や、神戸出身の母の地元が近いこともあり「セレッソでプレーしてみたい」と思いが募った。

 母と日本語でコミュニケーションを取っていたことからスピーキングに問題はなかったが、リーディングはできなかった。今も「読めるのはひらがなぐらい」だといい、「字が読めなくて苦労した。生まれた国から離れて家族や友達もいなくて。でも自分はサッカーがやりたかった。これぐらいは絶対やらなあかんと、強くおるしかないなと思った」と、“異国”で戦いながら研鑽を積んでいる。

香川真司も期待「上を目指してほしい」

 現在、2試合連続でフル出場中。アーサー・パパス監督の下で実力に磨きをかけ、MF香川真司も「頼もしい。ここから成長してグッと上がってほしいし、それだけの可能性がある。満足してもらいたくない。ここから代表、欧州や上を目指してほしい」と期待を寄せた。

 今年は前回飛び級で出場したU-20ワールドカップ(W杯)にもう1度出る可能性もある。U-16でスペイン代表にも選出されたこともあるが、「100パーセントは分からないけど、今は日本のために戦いたいと思う」と、将来的なA代表入りも狙う。

 バルサ仕込みの攻撃力を武器に、C大阪の“ヤングスター”は輝き続けるはずだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

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