常勝軍団を蘇らせたかつての“敵将”「あの時連覇していたら…」 両者を分けた2017年の因縁

11日に国立競技場での対戦を控える鹿島と川崎【写真:徳原隆元 & Noriko NAGANO】
11日に国立競技場での対戦を控える鹿島と川崎【写真:徳原隆元 & Noriko NAGANO】

鹿島がJ1リーグで唯一負け越している相手が川崎

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 鹿島アントラーズは、5月11日に国立競技場で行われるJ1リーグ第16節で、川崎フロンターレと対戦する。Jリーグの“オリジナル10”である鹿島にとって、川崎は幾度となく行く手を阻まれた「実に厄介な相手」にほかならない。両クラブの対戦史を振り返ると、そこに厳然たる事実が浮かび上がる。(取材・文=小室功/全2回の1回目)

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 Jリーグクラブ最多の通算20冠を誇り、“常勝”の名をほしいままにしてきた鹿島アントラーズが、J1での対戦において唯一、負け越しているチームがある。それが川崎フロンターレだ。

 2024シーズン終了時での戦績になるが、ここまでの通算42試合を紐解けば、11勝8分23敗と、何とも分が悪い。なかでも2015年8月29日に鹿島が勝利して以降、16試合連続で白星を挙げられなかった。2000年11月4日のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)決勝や2017年元日の天皇杯決勝といった“大一番”では勝っているだけに、川崎に対する過度な苦手意識がチーム内に巣食っているような印象はない。とはいえ、リーグ戦での負け越しの事実は変わらない。

 長年、鹿島の強化責任者としてチーム編成に携わってきた鈴木満・現フットボールアドバイザー(FA)は、川崎との対戦史について次のように語っている。穏やかな口調ながら、猛烈な対抗心を隠さず、それとともにリスペクトの念もうかがわせた。

「リーグ戦で負け越しているというのは、もちろん知っています。勝ちきれない時期が続きましたが、当然、負けたくない相手です。リーグ戦では、常に自分たちが上位にいなければいけないと思っています。ただ、切磋琢磨することで、お互いを高め合える存在でもある。川崎との試合はいつも楽しみにしていますね」

 未勝利状態から脱したのは2024年3月17日、地元カシマスタジアムでの一戦だった。前半36分に先手を取られながらも後半にチャヴリッチと鈴木優磨が立て続けにゴールを決め、2-1と逆転勝利。同年のアウェーゲームも勝ちきり、シーズンダブルを成し遂げたことで、多少なりとも溜飲を下げたのではないか。

 Jリーグ初年度の参入10チームである鹿島は、これまで一度もJ2に降格しておらず、積み上げてきた栄光の数々は他クラブも羨むほどだろう。ここ8シーズンは国内タイトルから遠ざかっているとはいえ、明日をも知れぬ群雄割拠のJリーグのなかで確固たる地位を築き上げた“名家”にほかならない。

 かたや2000シーズンに初めてJ1昇格を果たした川崎は、わずか1年でJ2に逆戻りしたものの、2005シーズンにJ1に返り咲き、着々と地力をつけてきた。2017シーズンにJリーグ初制覇を飾って以降、ここまで通算7冠を数えるなど、今や押しも押されもしない強豪クラブの仲間入りを果たした。

“オリジナル10”の鹿島が、追いつけ追い越せとばかりに猛追してくる川崎に初めて黒星を喫したのが2005年9月11日のアウェーゲームだった。その翌年に初めてシーズンダブルを食らい、J1での最終順位も鹿島が6位で、川崎が2位と、初めて後塵を拝した。

「優勝を狙っていこうというチームが、同じ相手に同じシーズンにホーム&アウェーともに負けるなど、あってはならない」と、鈴木FAは日ごろ語っていただけに、さぞかし歯がゆい思いを募らせたことだろう。

 2007シーズンからJリーグ史上初の3連覇を達成し、我が世の春を謳歌していた鹿島だが、その行く手を阻むべく、激しく対抗してきたのが川崎でもある。この3シーズンに限れば、1勝2分3敗と、常勝の牙城を切り崩しにかかる新興勢力に随分、手を焼いた。

両者の因縁を生んだ2017シーズンの最終節

 そして、大きく明暗を分けたのが、2017シーズンだ。その前シーズンにJリーグと天皇杯を制していた鹿島は、開幕戦こそ敗れたものの、着実に勝ち点を積み重ねていく。そんな最中、ACLの敗退を主たる理由に石井正忠監督(当時)との契約を解除。チーム内に激震が走ったが、コーチから内部昇格した大岩剛監督のもと、仕切り直し、連覇に向けてあと一歩のところまで迫った。

 リーグ戦もいよいよ佳境を迎え、残り2試合の段階で、優勝の行方は首位の鹿島と2位の川崎に絞られていた。両者の勝ち点差は4。つまり、鹿島が連勝すれば、川崎の結果に関係なく、タイトルを獲得し、1勝1敗でも自力による連覇達成が可能だったわけだ。

 ところが、2引き分けに終わった鹿島は、連勝した川崎に勝ち点で並ばれ、得失点差によって最後の最後に首位を明け渡す。最終節のジュビロ磐田戦で、不明瞭な判定から“幻のゴール”が生まれるなど、鹿島にしてみれば、後味が悪かったが、いずれにしても勝ちきれず、掴みかけていたタイトルを逃した。

 鈴木FAは当時を思い出しては「あのときに連覇していたら、チームとしても選手としてもすごく自信になったので、次のシーズンにつながったはずです。目前でタイトルを逃した悔しさは同じJリーグで晴らすしかない」と繰り返し、こう続けていた。

「優勝したときの喜びはその日だけで、いつまでも浸ることはありません。むしろ、また優勝するために何が必要なのか、どうしたらもっとチームが強くなっていくのか、そっちに頭がいって、すぐに動き出すという感じになれるのです。でも、優勝できなかったときは何が足りなかったのか、どうすれば良かったのか、そういう思いがいつまでも頭の隅に残ってしまう。一刻も早くJリーグのタイトルを奪還して、この悔しさを払拭したいと思います」

 2017シーズンに鹿島の連覇を阻んだ川崎の指揮官は、日本サッカー界の異才・風間八宏監督のあとを受け、同シーズンから監督に就任したばかりの鬼木達だった。翌年もJ1リーグを制した川崎は2020年、2021年と再びリーグ連覇を成し遂げ、さらに天皇杯2回、ルヴァンカップ1回の優勝を加え、一時代を築いた。

 かたや、鹿島は2018年にクラブ悲願のACL初制覇を飾ったとはいえ、ここ8シーズン、国内無冠が続く。両クラブは、まさに対照的な道を歩んできた。こうした苦境に終止符を打つべく、白羽の矢を立てたのが誰あろう、宿敵を率いていた鬼木監督だ。

 昨日の敵は今日の友――。

 これを地でいくようなエピソードだが、鬼木監督にとっての鹿島は1993年にプロのキャリアをスタートさせた古巣であり、Jリーグきっての名将として引く手数多となった今、鹿島を指揮する日がくるのは必然だったのかもしれない。

 タイトル奪還を必達目標に掲げる鹿島。ここ数年は主力の海外流出が相次ぎ、チーム作りの新たなサイクルに入ったことを印象づける川崎。置かれた状況はそれぞれ異なるものの、しのぎを削り合うライバル関係は今後も過熱していくはずだ。

 見逃せない一戦が間近に迫る。J1における通算43回目の対決が、5月11日、東京・国立競技場で行われる。

(小室 功 / Isao Komuro)



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