父はプロ野球選手&母はプロゴルファー…最強遺伝子の逸材18歳 両親から受けた英才教育

名古屋U-18の大西、父・崇之さんは現ソフトバンク外野守備走塁兼作戦コーチ
ゴールに向かっていく迫力、爆発的なスピードは見ている者たちを釘付けにする。名古屋グランパスU-18のエースストライカー・大西利都は、ゴール前に入るとずば抜けた集中力と高い身体能力とシュートセンスを駆使したフィニッシュワークで、矢のようなシュートをゴールに突き刺す。
プレミアリーグWEST第3節・帝京長岡戦において彼が見せた圧巻の2ゴールは、まさに真骨頂と言えるものだった。1-0で迎えた後半4分、センターライン付近でMF小島蒼斗がボールを持ってドリブルで運ぶと、大西は彼の右斜め前方で相手ボランチとCBと駆け引きをしながらラインブレイクを狙った。
「蒼斗と相手のDF2枚の動きを見ながら裏を狙ったのですが、直線的にいかずにタイミングを見計らいました。そうしたら相手のDFの1枚が蒼斗に少し食いついた瞬間、2枚のDFの間が割れたので、そのスペースに一気に飛び込もうと思いました」
そう振り返ったように、大西は一気に加速すると、左ポケット(ペナルティーエリア内の左)に小島からスルーパスが届く。この時点で大西はゴールを斜めに通り越す形でランニングをしており、かつ間を破られたDFが1枚シュートブロックの体勢に入っていた。
切り返してから右足で狙うのかと思った瞬間、彼はトップスピードに乗った状態で迷うことなく左足を一閃。ダイレクトで狙ったシュートはブロックに来たDFの股を射抜き、GKが横っ飛びをしても触れられない鮮やかな軌道を描いてゴール右隅に突き刺さった。
「ゴールから離れる斜めのランニングだったので、ボールを受けてからはゴールの位置は見ていないので感覚で蹴り込みました。日頃からあの角度から足を振る感覚というのは練習して、練習してつかんでいるので、出せて良かった」
そしてこの5分後にはカウンターから中央でMF齋藤太陽がドリブルで運ぶと、フラットに並んだDF2枚の間にポジションを取り、これも相手DF一枚が齋藤に食いついた瞬間に、オフサイドラインを掻い潜って、中央右のスペースへ一気に加速。そこに齋藤からスルーパスが届くと、プレスバックして来たDFを鮮やかな右アウトサイドタッチで交わしてから今度は右足を一閃。
「2点目も1点目と同じような感じでニアに打つより、ファーに打って、GKの重心をずらした方がいいなと思ったので狙いました」と、GKの伸ばした手の先をすり抜けてゴール左隅に突き刺した。
細かい駆け引きとスピードで相手を凌駕した鮮やかな抜け出しからの両足から繰り出された対角のシュート。彼のずば抜けた能力を示すのに十分なゴールだった。
「相手との駆け引きの幅が広がりました」
試合後、そう口にしたように彼の本来のポジションはFWだが、今年は1トップに伊藤ケンが入り、大西は2シャドーの一角となった。当初はビルドアップの関わりやFWのサポートや追い越す動きなど、これまでとの役割の違いに戸惑ったが、徐々にプレーを工夫して持ち味を出せるようになると、帝京長岡戦ではスタートはシャドーだったが、後半から1トップになった瞬間にあの2ゴールをマーク。本来のポジションに戻ってみて、改めて異なるポジションを経験した価値を感じ取ることができた。
「シャドーというポジションは僕にとってチャレンジ。与えられたポジションでどう武器を出せるのか、チームのために何ができるのかを考えてやったことの成果だと思います」
この心構えは両親からずっと学んできたものだった。
彼の父親・崇之さんはかつて中日ドラゴンズ、巨人で俊足プレーヤーとして名を馳せた元プロ野球選手。現役引退後は指導者の道に進み、昨年まで中日の一軍外野守備走塁コーチを務め、今年からは福岡ソフトバンクホークスの一軍外野守備走塁兼作戦コーチを務めている。
「自分はプレー中にどうしても感情的になってしまうのですが、お父さんには『いかにそこで平常心を保てるか。そこがいい選手になれるかなれないかの分かれ目になるぞ』と言われます。あとは日々の練習に対する向き合い方、チームの一員としての考え方などをアドバイスしてくれます。現役のコーチというのもあって、チームプレーや周りを思う気持ちをアドバイスしてくれることが多いです」
さらに母の晴美さんも元プロゴルファーで1998年のJLPGAツアーで優勝を遂げている。
「団体競技と個人競技の違いもあると思うのですが、お母さんからは個人のメンタリティーの部分をアドバイスしてくれます。よく言われるのは1つのシュートに対する思いや集中力の部分。チャンスでシュートを外したりすると、『ゴール前なのに集中してないの?』と言われます。やっぱりゴルファーなので一打に対する重みを知っているからこそのアドバイスだと思っています」
2人に共通して言われるのは「自分にフォーカスを当てろ」だ。「(2人のアドバイスは)リンクする部分が多いので、自分のためになります」と、真摯に受け止め続けたからこそ、今彼は新たなポジションを通じて成長し、本来のポジションでの圧倒的なパフォーマンスにつながっている。
「もっと自分が成長をして、プレミアで優勝したいし、上のステージで戦えるようにやるべきことをきちんとやっていきたい」
その目は輝いていた。両親から植え付けられたプロフェッショナルの心構えを持って、大西利都は未来をそのスピードで切り開いていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)