「日本の子供たちのほうが上手い」 サッカー指導者が感じたイタリア人との差「そこが一番違う」【インタビュー】

ペルージャジャパンアカデミー代表を務める河井大和氏が語る現地合宿の意義
かつてイタリアのペルージャユースでプレーし、現在ペルージャジャパンアカデミーの代表を務める河井大和氏。2025年3月29日から4月5日まで、ペルージャジャパンは日本の子供たちを連れて現地ペルージャで合宿を敢行し、トレーニングに加えてスタジアムや市内見学、文化交流なども行った。世代別の日本代表選手も輩出するなど成果を残すなか、河井代表はどんな思いで育成に携わっているのか。イタリア合宿を行う意義や両国の違いについて語ってもらった。(取材・文=倉石千種)
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――ペルージャジャパンがイタリアのペルージャと提携して16年。2008年にスクールを開設し、10年連続でJリーグ下部組織のセレクションに総勢150人以上が合格した一方、過去5年で世代別日本代表に4選手が選出されるなど結果が出ています。
「元々、自分が選手の時からペルージャにはお世話になり、この16年間でさまざまなことが変わりました。例えば僕らがスクールを始めた時、ヨーロッパのプロサッカーチームが日本でオフィシャルのサッカースクールを開校しているところはなかったんです。僕たちが初めてヨーロッパのプロサッカーチームでオフィシャルの連携スクールを始めて、その先駆者としてのメリットもあり参加者が多く集まり、上手く軌道に乗って成長しました。ここ数年、世界のビッグクラブが日本市場に入って来たなか、真のクオリティーが求められている時代。僕たちも次の段階に入っていて、もっとペルージャジャパンを大きくしていくためには、常に新しいをやっていかなければいけない、常に変わっていかなければいけないなと思っています」
――今回、子供たちを連れてイタリア・ペルージャで合宿を実施しましたが、その意義や目的を教えてください。
「僕自身も子供の時、イタリアやブラジルに行かせてもらったりして、その時のことを今でも鮮明に覚えているし、行って良かったと思うことが多い。サッカーだけじゃなくて、文化や他の面でも刺激を受けました。子供の時にイタリアのサッカーを見て、いつかここでサッカーをしたいという思いを抱き、結局イタリアでプレーすることになり、今の仕事にもつながっている。あの時イタリアに行っていなかったら、ペルージャジャパンはなかったと思う。そう考えると子供の頃にいろいろ経験できて良かったという思いがあるので、こうして毎年、子供たちを連れて来て、サッカーはもちろん、文化や他のことも経験してもらって、彼らの将来に良い影響が与えられたらいいなと思っています」
――元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏と、日本代表のスタッフとして一緒に仕事していたジャンパオロ・コラウッティ氏が今日来ていました。河井さんが13歳の時、イタリアで彼の指導を受けたと聞いています。
「13歳の時、当時所属していたクラブの遠征でイタリアに来て、コラウッティコーチの指導を受けて、『あ~イタリアでプレーしたいな』って思ったのが始まりだったので、そういう恩人に再会できて、なんだか不思議な気持ちでした」

イタリアで実感した影響力「僕も『中田英寿の弟か?』と言われたりした」
――子供たちもイタリア合宿で楽しく練習している印象を受けました。
「日本の時と顔つきが違っているし、1つ1つのことがすごく新鮮に感じられるようですね。外国人選手と一緒にプレーするのもそうですし、ピッチ外でも日本のようにすべてが整った環境ではないので、例えば時間どおりにバスが来ないとか、思いどおりにいかないことがある意味で良い経験になっているようです。初めは不満の声も出ていましたけど、海外の文化を受け入れて順応していく。たった1週間でも子供たちの変化や成長が見ることできて、とても良かったと思います」
――サッカー面でイタリアと日本の子供たちにどんな違いがありますか?
「技術的には、日本人の子供たちのほうが上手い。ただ勝負に対する執着や執念のようなスピリットは全然違っていて、そこはイタリア人の子供のほうが強い。イタリアと日本の子供たちを比較すると、そこが一番違うんじゃないかなと思いますね、結局、1対1であれ、11対11の試合であれ、内容はともかく最終的に帳尻を合わせてくるのがイタリア人で、とにかく勝負強いというのが違いかもしれません」
――この16年間、育成に携わってきましたが、そのなかで感じる難しさはありますか?
「育成は、その時は『これがいい』というやり方があっても、時間が経てば状況が変わってくる。その時、その時で最適解が変わっていくので、ずっと改善、ずっと勉強の毎日ですし、本当に終わりはないです。常に変わっていかなければいけないのは大変ですが、それがまた面白いと思います」
――河井さんはペルージャユース(2002年~2004年)でプレーした経験を持っています。ペルージャの日本人といえば、トップチームで活躍した元日本代表の中田英寿氏が象徴的ですが、影響力を感じることはありましたか?
「イタリアに初めて来た時、どこ行っても、中田、中田って言われて、こんなに中田選手っていうのは影響力があるんだと実感しました。日本人と言ったら中田みたいな時代で、僕もペルージャに来た時に『中田の弟か?』と言われたりもしました。当時、すでに日本でも知名度抜群でしたけど、イタリアでも偉大さを感じましたし、今でも尊敬しています」
(倉石千種 / Chigusa Kuraishi)

倉石千種
くらいし・ちぐさ/1990年よりイタリア在住。1998年に中田英寿がペルージャに移籍した時からセリエAやイタリア代表、W杯、CLをはじめ、中村俊輔、本田圭佑、長友佑都、吉田麻也、冨安健洋など日本人選手も取材。バッジョ、デル・ピエロ、トッティ、インザーギ、カカ、シェフチェンコなどビッグプレーヤーのインタビューも数多く手掛ける。サッカーのほか、水泳、スケート、テニスなど幅広く取材し、俳優ジョルジョ・アルベルタッツィ、女優イザベル・ユペール、監督ジュゼッペ・トルナトーレのインタビューも行った。