大学3年で決心した「浦和入り」 プロ内定で目線ガラリ…181cm逸材が重圧かけて臨む覚悟の1年

桐蔭横浜大学で活躍する肥田野蓮治【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
桐蔭横浜大学で活躍する肥田野蓮治【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

プロ入り内定の桐蔭横浜大FW肥田野蓮治が目指すさらなるスケールアップ

 ようやく本来の馬力が戻ってきた。デンソーカップチャレンジ静岡大会で関東選抜Aのレフティーストライカーである肥田野蓮治(桐蔭横浜大)が、181センチのサイズと屈強なフィジカル、そして抜群のボディバランスを屈指した躍動感あふれるプレーを見せた。

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 今年1月に2026シーズンの浦和レッズ加入内定を発表した樋田野だが、昨年秋に肉離れの怪我を負い、以降はなかなかコンディションが上がらなかった。本調子ではない状態で臨んだインカレでは時折見せるターンからの仕掛けなど前への推進力を見せるが、その迫力は怪我前と比べると不足していた。

 準決勝の東洋大学戦、肥田野はスタメン出場を果たすがプレーに精彩を欠き、シュートを1本も打てぬまま前半で交代。チームも0-1で破れて大学日本一を逃した。

「思うように身体が動かないのが歯痒いです」

 試合後、悔しさをにじませながらこう口にした彼は、年明けに浦和のキャンプに参加。そこでも最初の1週間はリハビリに費やし、徐々にコンディションを上げていく期間を過ごした。

「キャンプを終えて大学に戻ってからも、なかなかコンディションが上がらなかったのですが、ここで焦っても仕方がないとじっくりと身体作りから取り組みました」

 浦和内定が発表され周囲の目も変わったが、そこに惑わされることなく自らの身体と真剣に向き合った。そして迎えたデンチャレ本戦。グループリーグ第2戦のU-20全日本学生選抜戦の最前線に君臨する背番号9は、一回り大きくなったように感じた。

 前半、後方からのロングボールに対し、相手DFに身体をグッと入れてから鋭くターン。完全に抜け出してGKと1対1の局面を作り出した。シュートは外れたが、明らかにこれまでと動きの質とパワーが違った。

 さらに0-1で迎えた前半29分には、MF中村優斗(立正大)からのスルーパスをペナルティーエリア内左で受けると、鋭くターンをして強烈な左足シュート。GKが弾いたこぼれ球をMF佐々木奈琉(早稲田大)が押し込んで、チームに同点弾をもたらした。

 後半37分に交代を告げられるまでに3本のシュートを放ち、何度も鋭い飛び出しとフィジカルを生かしたボールキープで攻撃の起点を生み出した。チームは2-1で勝利し、初戦で東海選抜に2-0から逆転負けを喫した悪夢を払拭。怪我前よりパワーアップした彼がチームに勝利の流れを引き込んだ。

「怪我前と同じくらいにはなっています。だんだん出力が出せるようになってきましたし、怖さも消えてきました。ただ、もっとできるようにならないといけない。ここからです」

 その言葉どおり、続く第3戦のプレーオフ選抜戦で0-0の後半16分に投入されると、攻撃のリズムを作り出して、同44分に生まれたDF宮﨑慎(立教大)の決勝弾で2連勝。首位通過を決めると、関西選抜との決勝戦では先制弾を叩き込んで、チームを優勝に導いた。

「浦和入りを早めに決めたかったのは、自分にプレッシャーをかけたかったからです。『内定選手』として厳しい目で見てもらう中で結果を出すことが、今年1年間の目標でもあるので、しっかりと自覚を持って過ごしていきたいです」

 もちろん在学中のJデビューも狙っている。浦和は昨シーズンを持ってエースストライカーの興梠慎三氏が現役引退。今季は貴重な得点源となる選手が抜けたことと、9番タイプのストライカーはチアゴ・サンタナ、高橋利樹しかいないことから、肥田野の存在は浦和にとっても重要なものになるかもしれない。

「今、DFとの駆け引きだったり、動き出しの質の向上を意識していて、興梠さんの動き出しを参考にしています」

 FC東京深川U-15で右サイドハーフ、関東第一高で3トップの右FWを担うなど、複数のポジションを経験してから、今のセンターフォワードとしての地位を築いてきた。これまで培ってきた戦術眼と驚異のフィジカルと左足に加え、リハビリ中に何度も見た興梠氏の動き出しを備えてプロの世界に挑む。トップコンディションに戻りつつある彼は、赤き血のイレブンの一員という自覚を持ってさらなるスケールアップに励んでいる。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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