高校名門でも…県予選敗退の屈辱「これが選手権」 “強豪復活”懸けて挑む「3年ぶりの決勝」

3年ぶりに千葉決勝進出を決めた流通経済大柏【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
3年ぶりに千葉決勝進出を決めた流通経済大柏【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

激戦区の千葉で全国から遠ざかる流経柏、あと一歩に迫った選手権

 高校選手権優勝1回、インターハイ優勝2回、高円宮杯プレミアリーグチャンピオンシップ優勝1回。現在もプレミアリーグEASTで一時期は首位をキープするなど、全国トップクラスの実力を誇る名門・流通経済大柏(流経柏)だが、2021年度の選手権出場を最後にインターハイ、選手権には出場できていない。

 もちろん、このことを「全国から遠ざかっている」とは表現したくはない。なぜなら、ユース年代において最高峰に位置する全国大会はあくまでもプレミアリーグであり、彼らは2011年のリーグ発足以来、2017年の1年間以外はすべてこの舞台で戦い続けている。

 だが、インターハイ予選は35分もしくは40分、選手権予選は40分ハーフで、一発勝負のトーナメント戦を勝ち抜くのはプレミア所属のチームでも非常に難しい。どのチームもチャレンジャー精神を持って戦い、極端な守備の戦術を敷かれることも多いからだ。

 さらに「勝って当たり前」、「負けたら終わり」というプレッシャーがのしかかる。先に失点して、無得点のまま試合終盤を迎えれば、その重圧はより大きなものとなっていく。実際、他県の予選を見ると番狂わせが起きており、昌平が準々決勝で、帝京長岡が準決勝で姿を消している。

 千葉県には流経柏のほかにも全国トップクラスの実力を持つチームがある。最大のライバルであり、昨年度の選手権で4強に進出した市立船橋は言わずもがなで、ライバル決戦を乗り越えなければ全国には行けない。市船以外にも日体大柏は近年目まぐるしい躍動を見せており、一昨年度の選手権では初出場でベスト8に輝いている。

 11月3日に行われた第103回全国高校サッカー選手権大会千葉県予選準決勝。第1試合で市立船橋が日体大柏に1-1からのPK戦の末に敗れた。その様子を見ていた流経柏の榎本雅大監督は「これが選手権だね」とつぶやいた。

 第1試合の熱量が残るなか、第2試合を戦う流経柏と八千代の選手たちがピッチに入っていった。八千代もまた選手権ベスト4が2回、インターハイ優勝1回、準優勝1回を誇る名門校だ。八千代の選手が下克上に燃えるなか、流経柏はカターレ富山入りが内定しているMF亀田歩夢のクロスからMF飯浜空風が幸先良く先制点を決めるが、ここから攻めの姿勢に転じた八千代の前に前半17分にはMF平川璃迅に強烈な同点ゴールを叩き込まれてしまった。

 ここから流経柏はリズムが掴めず、持ち前の前線からの激しいプレスでボールを奪いにいくが、セカンドボールを拾えずにいつもの波状攻撃を仕掛けられないでいた。

 だが前半38分、夏前まではBチームでプレーし、そこから這い上がってきた3年生センターバック(CB)佐藤夢真が、右コーナーキック(CK)を頭で合わせて、勝ち越しゴール。「夏以降かなり成長してきて、もう欠かせない存在になろうとしている」と榎本監督が目を細める努力家の一撃は、沈みかけていたチームのムードを一気に持ち返した。前線からのプレスとショートカウンターで何度も八千代ゴールに迫り、後半9分にはFW和田哲平がダメ押しのゴールを決め、3-1の勝利を収めた。

「3年ぶりの決勝です」と試合後に榎本監督が口にしたように、選手権予選では一昨年に準々決勝で中央学院に敗れ、昨年は準決勝で日体柏に敗れた。

 まずは決勝の舞台に立つ権利を掴んだ。対戦する日体大柏は昨年夢を阻まれた因縁の相手。ライバル市船がその相手に涙を飲んだ瞬間も目の当たりにした彼らは、プレミアチームの奢りは一切なく、本気のチャレンジャーになろうとしている。榎本監督は言う。

「インターハイ予選は終盤になると打つ手がなくなるという状況から、今日ゴールを決めた佐藤や飯浜のように個々が成長をしてきてくれて、プレミアリーグとプリンスリーグ(セカンドチーム)のチームが融合してくれたからこそ、誰が出ても戦えるチームになってきた手応えがあります。全国大会に対する想いは選手たちが強く持っていると思います」

 重かった選手権出場の扉を開くために。榎本監督と苦悩の時期をともにした選手たちの意地が今、1つになろうとしている。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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