勝率0%…鬼門ジッダで日本が持つ“好材料” 敵地ならドローも「問題なし」【前園真聖コラム】
日本代表はジッダで勝利を収めたことがない
10月の北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選、日本は中東の強豪で前回アウェー敗戦を喫しているサウジアラビアと戦う。サウジアラビアと言えば元日本代表の前園真聖氏にとっても思い出深い相手。U-23日本代表のキャプテンとして2ゴールを奪い、28年ぶりの五輪出場を決めたのだ。そのサウジアラビアの注目点と日本はどんな戦いをするべきなのか。前園氏は9月の躍進ぶりからは意外とも思える考えを語った。(取材・構成=森雅史)
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10月の日本代表戦は前回カタールW杯のアジア最終予選のときと同じく、最初にアウェーのサウジアラビア戦、続いてホームのオーストラリア戦という組み合わせになっています。
山本昌邦ナショナルダイレクターがメンバー発表記者会見で「今回の10月のシリーズ、ここからがいよいよ本番」と語っていたように、日本、サウジアラビア、オーストラリアが3次予選で昇格できるグループ2位以内を争っているのは間違いありません。
グループ3位になってしまうと、4次予選、アジアプレーオフ及び大陸間プレーオフと予選が続いてしまいます。それだけW杯本大会に向けた準備が遅れてしまうのです。幸いなことに、今回は日本がとても素晴らしいスタートを切りました。このままの勢いで10月も、まずは初戦のサウジアラビア戦を乗り切ってほしいものです。
サウジアラビアと言えば現役時代、1996年アトランタ五輪のアジア最終予選、準決勝で対戦した相手です。前半4分にパスワークを生かしてゴールを奪ったのですが、その後はサウジアラビアが反撃に転じて苦しい時間が続きました。
後半、ヒデ(中田英寿)が入って息を吹き返し、後半12分に相手の一瞬の隙を突いて2点目を奪いました。ただし日本の勢いはそこまででした。後半32分に1点を返され、その後もピンチが続きました。なんとか凌いで勝利を収めることができて、28年ぶりの五輪出場権を獲得したという試合です。結局、サウジアラビアも3位決定戦で勝利を収めて五輪に出場しています。そのことを考えても、日本とサウジアラビアの実力は紙一重でした。
あのころからサウジアラビアの強さは変わっていない気がします。中東の大国だけあって要所にいい選手が出てきます。最近はカタールやイラクのほうがアジアカップやガルフカップでいい成績を収めていますが、間違いなくアジアをリードする国の一つである事は間違いありません。
テクニックがあり、力強く、また高さもスピードもあります。今回のチームは右のウイングバック、サウード・アブドゥルハミド(ローマ/イタリア)を生かしたサイド攻撃も強烈でしょう。それでも今の日本の実力をそのまま発揮できれば9月のように大差をつけて勝ってもおかしくない実力差はあると思っています。
ただし、前回予選のアウェー・サウジアラビア戦は0-1と敗れてしまいました。試合開始こそ攻めたものの、次第に暑さで足が止まるようになり、バックパスのミスを相手選手にさらわれて決勝点を決められてしまったのです。
森保監督が実際に前回の敗戦を経験している、そのときの問題点を把握しているということは好材料です。また、幸いなことにヨーロッパ組が増えたことで時差ボケはあまり考えなくていいと思います。
それでもヨーロッパとサウジアラビアの20度近い温度差には苦労するでしょう。暑さ対策がどこまでできるかがキーであることは間違いありません。また、会場となるジッダで日本は勝っていないという過去の実績を考えても、中東特有のスタジアムの雰囲気なども十分注意すべきポイントです。
そして忘れてならないのは、これがW杯予選だということです。とにかく勝ち点を挙げればいいのです。理想はもちろん勝点3ですが、アウェーということを考えると引き分けでも問題ありません。9月の大勝はすっかり忘れて、しっかり勝ち点を持って帰国してほしいと思います。
前園真聖
まえぞの・まさきよ/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。