日本代表、なぜ後半に大量得点? 「かなり珍しい」強豪国にもないアドバンテージ【コラム】
最終予選で2連勝の日本、後半に2戦合計9ゴールと攻撃力を発揮している訳
2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア3次(最終)予選、日本代表は連勝の好スタートを切った。グループCのライバルであるサウジアラビア、オーストラリアがもたついているのとは対照的に2試合で12得点と爆発的な攻撃力を見せている。
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前後半の日本の得点は中国戦が前半2点、後半5点。バーレーン戦は前半1点、後半4点。後半の得点が多いのは、相手の体力と集中力が落ちているのが大きな要因だが、それとは別に日本側の事情もある。
中国戦では4-0とリードしたあとの後半18分に2人を交代。三笘薫→前田大然、堂安律→伊東純也。すると、交代出場の伊東と前田が決めて6-0としている。
バーレーン戦も4-0としたあとの後半20分に3人交代。三笘→中村敬斗、上田綺世→小川航基、南野拓実→久保建英。そしてやはり交代出場の小川が得点。アシストは中村だった。得点にはならなかったが、終盤に久保、浅野拓磨(後半37に守田英正と交代)、小川に決定機があった。
2試合とも交代出場の選手が得点している。点差がついて体力と集中力が尽きてきた相手に対して容赦がなかった。4点差がついたら、もう残り時間はボールをキープして流しても良さそうなもので、実際そういう雰囲気もあったのだが、交代で出てきたアタッカーたちが、ある意味空気を読まずにゴールへ邁進した結果である。
それだけポジション争いが激しいのだ。
センターフォワード(CF)は上田と小川がライバル。2人とも奇しくもオランダでプレーしている同士だ。中国戦で得点のなかった上田がバーレーン戦で2得点すると、小川も負けじと1得点。2試合とも堂安に交代して入った伊東はギアを上げるプレーで存在感を示す。中村には珍しく得点がなかったが執拗にゴールを狙っていた。
2シャドーは久保、南野、鎌田によるハイレベルなポジション争い。2試合を通じて3バックを組んだ板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹も、負傷が癒えて冨安健洋、伊藤洋輝が戻ってきたらポジションを失うかもしれない。GK鈴木彩艶にはパリ五輪で大活躍した小久保玲央ブライアンが競争相手になりそう。こうして見ると、安泰なのは遠藤航と守田英正だけだ。
もちろん選手たちは対戦相手と戦っているのだが、同じポジションのチームメイトとの戦いがあることも否定できない。それが貪欲さと緊張感を生み、緩みのないプレーにつながっている。
森保一監督にとっては誰を起用するか頭を悩まされる一方で、チーム内競争が活力を生み出しているのは理想的な状態と言える。
コロナ禍以来、すっかり定着した5人交代制は日本代表にとって大きなアドバンテージになっている。欧州、南米の強豪でも選手交代をするとプレー水準を維持できなくなるケースが多く、日本のように交代してもレベルダウンが起きず、むしろ勢いが増すチームはかなり珍しいのだ。
課題だった相手に引かれた時の攻撃にもメドが立ち、選手層の厚さを活用できる流れにもなっていて、予選最初の2試合は大きな収穫があった。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。