中国記者が怒り「予定より30分も遅い」 アウェーで失態…日本戦で起きた“的外れ”【コラム】
W杯最終予選の初戦で中国が0-7で完敗
日本戦の前から、旧知の中国メディアの1人が怒っていた。もともと自国に対して厳しい人物なのだが、期待が高まるはずの試合前から怒っているのは珍しい。
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彼は「今、チームバスが到着した。予定よりも30分も遅い。これじゃ十分な準備ができない」と憤慨している。ブランコ・イバンコビッチ監督はミーティングが長い監督らしく、「1時間ぐらい話をすることもあるんだ」と怒りが収まらない。この日は交通渋滞もあったということだが、話が長いという過去の例もあるようだ。
彼が言うとおりならバスは18時30分過ぎに到着したことになる。すると、普通なら試合の1時間前には配られるはずのメンバーリストがこの日はなかなか出なかったことと状況は一致する。
遅れたことが事実だとして、単に話が長かったからと考えるのは早計だろう。百戦錬磨の策士のこと、必ず深い意図があるはずだ。
考えられることの1つに、先発メンバーを日本に知らせるのを遅らせたかったのではないかということがある。なぜなら、この試合で中国がこれまでの試合のように4バックを使うのか、あるいはこれまで緊急時のオプションとしてしか使わなかった3バックで来るのかというのが1つのポイントだったからだ。
そして中国が選んだのが4バック。これに対して日本は3バックでスタートした。この読み合いが試合の命運を決したとも言える。なぜならこれまでの日本は相手の様子を見る時、4バックでスタートしてギアアップ、あるいはギアダウンするために3バックを使っていたのだ。中国にとっては、日本の3バックが予想外だったに違いない。
そして前半2ゴール。後半、中国は3バック(あるいは5バック)に変更してそれ以上の失点を防ごうという策に出た。だが明らかに3バックの完成度は低く、しかも日本はその攻略方法を見つけていた。
2022年カタール・ワールドカップ(W杯)後、日本は大会時に4人いたテクニカルスタッフ(分析班)を2人に減らしていた。だがカタールで行われたアジアカップでは8人に増員し、W杯本大会に出た時のシミュレーションを行った。そして今回も4人のスタッフが対戦相手を調べ上げていた。
長身の選手が多い中国はセットプレーでもさまざまなトリックを持っているのも承知済み。そのため、後半の相手CK(コーナーキック)で多くの選手がGKの前に立つという変則的なポジショニングも、そのCKからどう展開されるのかまで予想していたように、キレイに弾き返した。
ピッチの上に立つ選手にスポットライトが当たるのは当然だ。だが大勝した裏側には、日本の分析力があったと言えるだろう。日本の総合力の勝利だったのである。
(森雅史 / Masafumi Mori)
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。