なでしこジャパンの人気を懸念 日本代表OBが米国戦の“堅い戦い”の影響を指摘【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】フィジカルの差は詰まった反面、戦術的なブラッシュアップは必須
なでしこジャパン(日本女子代表)は、現地時間8月3日に行われたパリ五輪の女子サッカー準々決勝アメリカ戦で、延長戦の末に0-1で敗れた。2大会連続でベスト8敗退となったなか、元日本代表DF栗原勇蔵氏は「こういう形で負けてしまうと人気の上積みはどうなのか」と危惧している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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5-2-3のブロックを組んで試合に入った日本は、前半でボール支配率22%とアメリカに主導権を握られたがなんとか無失点で切り抜ける。
ハーフタイムの交代でMF清家貴子に代えてFW浜野まいかを投入。池田太監督はさらに後半25分、前線でプレスの運動量も多かったFW田中美南に代えてFW植木理子を送り込み、ラスト10分ではFW藤野あおばに代えて昨年の女子ワールドカップ(W杯)で得点王になったMF宮澤ひなたを投入した。
お互いに集中を切らさず、簡単にゴール前まで入り込めない熱戦は0-0のまま90分間を終了。延長前半6分に最終ラインでボールを失う大きなピンチを迎えた日本だが、GK山下杏也加が距離を詰めて防ぎ事なきを得た。
しかし延長前半アディショナルタイム2分、サイドチェンジからFWトリニティ・ロッドマンに切り返しからの左足シュートを決められてしまう。その後、MF林穂之香とFW千葉玲海菜を送り込んで交代枠を使い切り、最後は逃げ切りを狙うアメリカに対してボールを持って攻める時間も作れたが、激闘の末に2大会連続でのベスト8敗退となった。
日本は2011年のドイツ女子ワールドカップ(W杯)で優勝を果たしたあと、12年のロンドン五輪と15年のカナダW杯で準優勝はあったが、それ以外はベスト8、ベスト16にとどまり、2016年のリオ五輪では予選敗退の憂き目に遭っている。
日本代表OB栗原氏は「勝ってくれたほうが絶対人気は出る。いいサッカーをすればなおさら。アメリカ戦は一発勝負なので堅く行った印象は拭えない。こういう形で負けてしまうと人気の上積みはどうなのか」と懸念を口にした。
「個人の能力は間違いなくついてきている。(アメリカと)スピードの差は多少ありましたけど、圧倒的なフィジカルの差は感じなかった。高さで負けることもなくなりつつある。戦術的についていければもっと強くなる」
池田監督の下、4試合を戦ったパリ五輪について、栗原氏は「いろんなメンバーを使って、層は間違いなく厚くなった。藤野あおば、植木理子はいい味を出していたので今後が楽しみな選手です。なでしこは(2011年に女子W杯で)世界一を経験しているので、今後どこを目指していくのかが大事になる」と、これからのチーム作りに注目していた。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。